昔の車の操作の難しさ (2) - ブレーキ、ステアリング

2024年12月22日 16:27

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Photo:最近は軽自動車でもパワステは当たり前になった ©sawahajime

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 引き続き昔の車の、古かった装備や操作の難しさを、振り返って見たい。

【こちらも】昔の車の操作の難しさ (1) - エンジン始動と変速

●ブレーキ

 昔の車はドラムブレーキが主流であった。

 最近の車は、普通の乗用車はフロントがディスクブレーキ、リヤがドラムブレーキで、高性能車の場合は前輪・後輪共にディスクブレーキが多い。

 そして、より上位にはディスクの放熱性を重視した「ベンチレーティッド・ディスクブレーキ」が装備される。

 ディスクブレーキは、量産車では1962年にルノーで採用されたのが最初だと言われる。

 しかしディスクをブレーキパッドで鋏む構造から、当時としては踏力との関係で成功とは言えなかった。

 昔、主流であったドラムブレーキの欠点は、「フェード現象」が起こることだ。

 フェードとは、長い下り坂でエンジンブレーキを適切に使用せず、フットブレーキに頼ると言った様な連続使用すると、熱がブレーキドラムに溜まり、最悪の場合はブレーキフルードが沸騰して気泡が発生するので、スポンジブレーキと言われるブレーキを踏んでも効かなくなる事象だった。

●ABS

 ABSとは、アンチロック・ブレーキシステム(Anti-lock Brake System)の略称だ。

 急ブレーキを踏んだ際、ブレーキがタイヤをロックさせると、タイヤの一定の接地面だけが路面を滑る結果、制動距離が長くなる。

 それを防ぐには、断続的にロック直前までブレーキを効かすことを繰り返す「チョンチョンブレーキ」とか「ポンピングブレーキ」と言う、タイヤがロックする直前にブレーキを緩めて、路面をグリップする力を回復させ、再びブレーキを踏む操作が必要だった。

 タイヤがロックするのを防ぐことにより、車両の進行方向の安定性を保ち、また、ハンドル操作で障害物を回避できる可能性を高める訳だ。

 『続々と登場する車の新機構、普及するまでにある不都合にも注目を』(2023年1月20日)で「ABS装着車の被災事故」を紹介したが、昨今では「ABS装着車」が主流だから、安心して欲しい。

●サイドブレーキ

 「サイドブレーキ」と普通に呼んでいるが、これは和製英語。

 昔の車は、ドライバーの側面に設置されていたので、こう呼ばれているが、外国では通じず、一般的には「パーキングブレーキ(英: parking brake)」と呼称する。

 駐車した際に、車が動き出さないように使うのがサイドブレーキで、稀にこれを利用してターンしたりするが、本来これは目的外使用だ。

 当時の、フロントベンチシートの車は、ステッキ式であったり、フロントが2座席の車は中央の変速(ATのセレクターレバーやMTのシフトレバー)横にレバーが設けられたりする。

 また昔のいすゞがノックダウンしていた頃のヒルマンは、運転席右側のドアとの間に設置されていたし、AT車の場合はミッション車ならクラッチが生えていた部分のもう少し左寄りで、フットレスト近くに設けたペダルを左足で踏み込んで、ダッシュボード付近の解除レバーで戻す車種も存在した。

 最近はセンターコンソールのレバーで操作する電動パーキングブレーキが多くなっている。

●ステアリング

 タイヤは接地面の狭い方が摩擦抵抗は少なく、ハンドル操作は軽く行える。

 昔の車のタイヤは現在の車のタイヤの様な、扁平率が45%、50%といった極端に接地面が広いものは極めて稀で、せいぜい70%程度までであった。

 扁平率が大きい程、接地面との摩擦の関係でハンドルは重くなる。

 当然パワステなんぞと言う便利な装置は無いので、「か弱いお上品な女性」にはきついかも知れないが、普通の腕力のドライバーは、当然の様に「重たい」ハンドルを操作していた。

 パワステ導入初期には、上級機種にしか設定が無く、わざわざリヤウインドウに「パワーステアリング」とステッカーが貼られた車もあった。

 最近は扁平率が大きなタイヤが装着される様になり、パワーアシスト無しでは重すぎて扱いに困るようになり、当然、パワステが必需品となった。

 今や、軽自動車にも標準で装備される時代となり、ドライバーにとっては楽ちんこの上ない。

 車は、どんどん扱い易くなり、昔なら「乗りこなす」には習熟を要する部分まで、誰でも扱える様になった。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る

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