ゼリア新薬工業は年初来高値更新の展開、25年3月期増収増益予想で上振れ余地

2024年10月15日 09:20

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 ゼリア新薬工業<4559>(東証プライム)は消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。第11次中期経営計画では、好調な欧州事業に加えてアジア地域での事業展開も推進する方針としている。国内では医療用医薬品市場におけるプレゼンスの確保や、コンシューマーヘルスケア事業の拡大を推進している。なお24年9月には高カリウム血症治療薬ZG-801が国内製造販売承認を取得した。25年3月期は医療用医薬品事業、コンシューマーヘルスケア事業とも伸長して増収増益・連続増配予想としている。第1四半期の進捗率は為替差益計上の影響を除いても高水準であり、通期予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は年初来高値更新の展開だ。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■医療用医薬品事業とコンシューマーヘルスケア事業を展開

 消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。収益面では薬価改定、ライセンス収入・ロイヤリティ収入、研究開発費、広告宣伝費などの影響を受けやすい。

 24年3月期のセグメント別業績は、医療用医薬品事業の売上高が495億71百万円で営業利益(全社費用等調整前)が92億46百万円、コンシューマーヘルスケア事業の売上高が259億98百万円で営業利益が52億60百万円、その他(保険代理業・不動産賃貸収入)の売上高が1億54百万円で営業利益が2億51百万円、全社費用等調整額が▲51億36百万円だった。地域別売上高は日本が367億52百万円、イギリスが95億39百万円、欧州が244億07百万円、その他が50億25百万円だった。

■医療用医薬品事業は潰瘍性大腸炎治療剤アサコールなどが主力

 医療用医薬品事業は、潰瘍性大腸炎治療剤アサコールを主力として、炎症性腸疾患治療剤Entocort(エントコート、国内販売名ゼンタコート)や、機能性ディスペプシア治療剤(FD)アコファイドなども拡大している。20年9月に国内で販売開始した鉄欠乏性貧血治療剤フェインジェクトについては、消化器科・産婦人科を中心に市場構築を推進している。23年4月には、アステラス製薬が日本において製造販売しているクロストリジウム・ディフィシルによる感染性腸炎治療剤「ダフクリア錠200mg」(一般名:フィダキソマイシン、以下:ダフクリア)について製造販売承認を継承した。

 24年3月期の主要製品の売上高はアサコールが209億18百万円、ディフィクリアが135億08百万円、エントコートが54億16百万円、アコファイドが30億67百万円、その他が66億61百万円だった。

 海外展開は、アサコールについては欧州を中心に高用量製剤の販売国数を拡大中である。競合する高用量製剤の処方獲得を目指してプロモーションを展開している。アコファイドについては、Meiji Seika ファルマとタイにおける独占的開発・販売ライセンス契約、スペインのFAES社とラテンアメリカにおける独占的開発・販売ライセンス契約を締結している。また24年6月にはベルギーのAgastra社と、欧州・米国・カナダ地域における機能性ディスペプシア治療剤としての独占的開発および販売に関する契約を締結した。

 子会社のTillotts Pharma(ティロッツ社、スイス)は、アストラゼネカ社からエントコートの米国を除く全世界における権利を取得(国内ではゼンタコートカプセルとして販売)し、アサコールとともに海外での拡販を推進している。また20年11月に、アステラス製薬の英国子会社からクロストリジウム・ディフィシル感染症治療剤ディフィクリア錠(英名DIFICLIR)の欧州、中東、アフリカおよび独立国家共同体(CIS)における製造販売承認を承継し、販売を拡大している。

■コンシューマーヘルスケア事業はヘパリーゼ群などが主力

 コンシューマーヘルスケア事業はヘパリーゼ群、コンドロイチン群、ウィズワン群を主力として、日本で初めて月経前症候群の効能を取得した西洋ハーブ・ダイレクトOTC医薬品プレフェミン、連結子会社イオナ インターナショナルの「イオナ」ブランド化粧品なども全国の薬局・薬店・ドラッグストアなどに販売している。

 24年3月期の主要製品の売上高は、ヘパリーゼ群が109億68百万円、コンドロイチン群が57億52百万円、ウィズワン群が12億92百万円、その他が79億85百万円だった。

 事業拡大に向けて、西洋ハーブ群の開発・育成、ヘパリーゼ群およびコンドロイチン群に続く新規主力製品の開発・育成、既存製品(OTC医薬品プレバリン群、オーラルケアのマスデント群やイオナ化粧品など)の育成を推進している。20年4月にはヘパリーゼ群の主原料である肝臓加水分解物の安定調達とコンシューマーヘルスケア事業拡大を目的として、日水製薬<4550>から日水製薬医薬品販売の全株式を譲り受けて子会社化(現社名:健創製薬)した。なお、生産拠点の集約や最適化を目的として、25年4月1日付(予定)で健創製薬を吸収合併する。

 24年3月には、デンマークの子会社ZPD A/Sが、デンマークの栄養補助食品の原料メーカーであるEHP ApSと共同で、栄養補助食品の企画・販売会社JoinHealth ApSを設立し、デンマークにおいてコンドロイチン硫酸を配合した栄養補助食品「Movagain Pro」を発売した。デンマークにおいて唯一のコンドロイチン硫酸を配合した栄養補助食品である。

 24年10月には、ヘパリーゼWシリーズの新製品ヘパリーゼWシャイン(清涼飲料水)を、全国のコンビニエンスストアで販売開始した。

■消化器分野を最重点領域として新薬開発を推進

 消化器分野を最重点領域と位置付けて新薬開発を推進している。新薬パイプラインの状況(24年8月1日現在)は以下の通りである。

 高カリウム血症治療薬ZG-801(ビフォーファーマ社から導入、ビルタサ)については、日本において23年9月に承認申請を行い、24年9月に国内製造販売承認を取得した。なお海外では米国、カナダ、欧州諸国など世界41カ国(24年9月時点)で承認されている。

 Z-338(自社品、一般名アコチアミド)は、日本では小児機能性ディスペプシアを適応症として第3相段階、食道胃接合部通過障害を適応症として第2相(九州大学で医師主導治験)段階である。なお九州大学における医師主導治験は日本医療研究開発機構(AMED)の助成事業に採択されている。ZG-802(自社品、一般名アコチアミド)は低活動膀胱を適応症として第2相段階である。

 またZ-338の海外導出では、Faes Farmaが機能性ディスペプシアを適応症としてメキシコで23年10月に発売開始、ホンジュラス、ドミニカ共和国、エクアドル、チリ、エルサルバドル、ペルーで承認取得、コロンビア、コスタリカ、グアテマラ、パナマ、ニカラグアにおいて承認申請中である。また、Meiji Seikaファルマが機能性ディスペプシアを適応症としてタイで承認取得、Pharmaceutical Joint Stock Company of February 3rdが機能性ディスペプシアを適応症としてベトナムにおいて承認申請中、United Italian Trading Borporationがシンガポールで承認申請中、Agastra―Labが機能性ディスペプシアを適応症として欧州・米国・カナダで第3相段階である。

 なお23年7月には、子会社のTillotts Pharmaが世界的ベンチャーキャピタル大手TVMと共同で、潰瘍性大腸炎に対する経口抗体療法開発を目的として、米国のバイオベンチャーMage Bioに対して最大28百万USドル出資した。

■好調な欧州事業に加えてアジア地域での事業展開も推進

 第11次中期経営計画(24年3月期~26年3月期)では経営目標値に、最終年度26年3月期連結売上高900億円、海外売上比率50%以上を掲げている。

 重点戦略としては、欧州地域における継続的な市場形成(アサコール、ディフィクリア)に加えて、アジア地域への展開(ゼリア新薬工業の製品輸出拡大、ベトナムFTファーマの新工場建設や東南アジア近隣諸国への製品輸出拡大)を推進する。また国内の医療用医薬品事業では、自社創薬品であるアコファイドをはじめ、フェインジェクト、ダフクリアの拡販に加えて、第11次中期経営計画中に上市が見込まれる高カリウム血症治療剤ZG-801の投入などにより、国内医療用医薬品市場におけるプレゼンスを確保する。コンシューマーヘルスケア事業では、コンドロイチン群やヘパリーゼ群などの主力製品群に加えて、ローヤルゼリー群、西洋ハーブ群、化粧品群など多くの製品群において市場拡大を図る。

■25年3月期増収増益予想で上振れ余地

 25年3月期の連結業績予想は売上高が24年3月期比9.6%増の830億円、営業利益が3.9%増の100億円、経常利益が17.5%増の100億円、親会社株主帰属当期純利益が0.9%増の78億円としている。配当予想は24年3月期比2円増配の46円(第2四半期末23円、期末23円)としている。連続増配で予想配当性向は26.0%となる。

 医療用医薬品事業はアサコールやディフィクリアの海外市場における売上伸長などで増収、コンシューマーヘルスケア事業はヘパリーゼ群やコンドロイチンの売上増加に加え、ウィズワン群やマスデント群なども寄与して増収を見込んでいる。利益面では研究開発費やマイルストン支払などの増加が見込まれるが、増収効果で吸収して増益予想としている。

 第1四半期は、売上高が前年同期比17.2%増の214億55百万円、営業利益が32.6%増の39億39百万円、経常利益が62.7%増の54億59百万円、親会社株主帰属四半期純利益が44.5%増の42億12百万円だった。

 医療用医薬品事業、コンシューマーヘルスケア事業とも伸長した。経常利益および四半期純利益については、欧州通貨に対するスイスフラン安に伴って営業外で為替差益が大幅に増加(前期1億64百万円計上、当期12億96百万円計上)したことも寄与した。

 医療用医薬品事業は売上高(外部顧客への売上高)が22.6%増の146億50百万円、営業利益(全社費用等調整前)が30.1%増の37億40百万円だった。主要製品の売上高はアサコールが5.9%増の54億95百万円、ディフィクリアが59.3%増の51億57百万円、エントコートが43.8%増の15億70百万円、アコファイドが0.6%減の7億65百万円、その他が0.3%増の16億61百万円だった。潰瘍性大腸炎治療剤アサコールは国内が薬価改定の影響で苦戦したが、海外が好調に推移した。クロストリジウム・ディフィシル感染症治療剤ディフィクリア(国内販売名ダフクリア)はフランス、スペイン、ドイツなどで売上が拡大した。炎症性腸疾患(IBD)治療剤エントコート(国内販売名ゼンタコート)は、カナダでの売上が好調だった。

 コンシューマーヘルスケア事業は、売上高が7.1%増の67億68百万円で、営業利益が7.8%増の14億73百万円だった。主要製品の売上高はヘパリーゼ群が9.5%増の28億円、コンドロイチン群が2.9%増の14億48百万円、ウィズワン群が13.6%増の3億33百万円、その他が6.1%増の21億85百万円だった。ヘパリーゼ群は医薬品ヘパリーゼ群を中心に伸長した。コンドロイチン群および植物性便秘薬もウィズワン群も堅調だった。さらに皮膚疾患治療剤プレバリン群も伸長した。

 その他(保険代理業・不動産賃貸収入等)は売上高が4.4%減の36百万円、営業利益が2.3%減の64百万円だった。

 通期の連結業績予想は据え置いている。第1四半期の進捗率は売上高26%、営業利益39%、経常利益55%、親会社株主帰属当期純利益54%である。為替差益計上の影響を除いても高水準であり、通期予想に上振れ余地がありそうだ。なおコンシューマーヘルスケア事業の一部製品について、9月2日出荷分より価格改定を実施した。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待は年2回、9月末と3月末の株主対象

 株主優待制度は毎年9月末および3月末現在の株主を対象として、保有株式数に応じて自社グループ商品を贈呈(詳細は会社HP参照)している。なお23年9月末対象より株主優待品コース内容を変更した。

■株価は年初来高値更新の展開

 株価は年初来高値更新の展開だ。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。10月9日の終値は2337円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS176円95銭で算出)は約13倍、今期予想配当利回り(会社予想の46円で算出)は約2.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1806円33銭で算出)は約1.3倍、そして時価総額は約1241億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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