関連記事
早くも「トランプ・ラリー」【フィスコ・コラム】
*09:00JST 早くも「トランプ・ラリー」【フィスコ・コラム】
11月の米大統領選に向け、トランプ前大統領の再登板を見込んだ相場展開がみられます。経済政策の柱である減税や関税引上げは企業収益を改善させるとの見方から、株式市場は最高値を更新。当面はバイデン大統領の撤退が注目され、相場は過熱する可能性もあります。
NY株式市場はナスダックとS&Pが上昇基調を強め過去最高値を更新中で、7月第3週はハイテク関連から幅広い銘柄に買いが波及。ダウも最高値を更新し、史上初の41000ドル台に一時乗せました。2016年の米大統領選でトランプ氏の勝利が確実になると、政策期待から株高・金利高・ドル高に振れました。その「トランプ・ラリー」が、今年11月の本選を待たずして始まったかのようです。
発端となったのは、トランプ氏がペンシルベニア州での演説中に銃撃された事件です。弾丸があと数センチずれていたら致命的でしたが、幸いケガで済みました。その直後の気丈な振る舞いが支持者を結束させ、その2日後の共和党大会では指名候補となりました。支持率調査では、先の討論会で再選を狙うバイデンが精彩を欠いたこともあり、トランプ氏リードに傾きつつあるようです。
もっとも、トランプ氏再登板の際の政策内容は、現時点ではちぐはぐです。同氏は直近のインタビューで連邦準備制度理事会(FRB)の選挙前の利下げについて、強くけん制。現行の引き締め的な金融政策を長期化させればドル高要因になります。また、財政投入はインフレを招き、やはりドル高要因ですが、ドル高によりアメリカは「大きな問題を抱えている」とも指摘しています。
FRB議長人事にも言及し、パウエル議長が「正しいことをするならば」2026年5月までの任期を全うさせる考えです。ただ、トランプ氏は過去にパウエル氏に対して利下げ圧力を強め、FRBはそれを拒否した経緯があるため、その後の再指名はしない意向を先に述べています。トランプ氏は選挙前の利下げには否定的でも、自身が返り咲いた場合には利下げ圧力をかけ続けるとみられ、ドル安要因となります。
民主党にもまだ巻き返しのチャンスはあります。バイデン氏を撤退させ、トランプ氏とは異なるタイプの候補者を擁立することです。そうすれば話題性をトランプ氏から一気に奪い取り、勢いで本選を勝ち抜くかもしれません。ただ、民主党大会までに、間に合うかは不透明。「他に候補者がいない」状況でバイデン氏が指名候補に決まるという、民主党にとって最悪の事態なら「トランプ・ラリー」は過熱しそうです。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。《ST》
スポンサードリンク