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【QAあり】モリト、グローバルニッチトップとして幅広い業界に向け世界各地に製造・調達・販売網を展開
【QAあり】モリト、グローバルニッチトップとして幅広い業界に向け世界各地に製造・調達・販売網を展開[写真拡大]
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一坪隆紀氏(以下、一坪):みなさま、本日はモリト株式会社の説明会にご参加いただきまして、誠にありがとうございます。代表取締役社長の一坪です。
本日は、モリトの会社概要、事業内容、今後成長を期待している事業などを中心にご説明しますので、どうぞよろしくお願いします。
会社概要
一坪:まずは会社概要です。会社名はモリト株式会社で、1908年に大阪で創業しました。創業当時から、日常生活に欠かせない身の回りにある小さなパーツを扱っており、生産・販売拠点をグローバルに展開しています。
これまで、オイルショック、リーマン・ショック、コロナ禍などの経済的ショックの際も赤字にならず、安定した業績を出し続けています。
アパレル・スポーツ・自動車など、さまざまな業界向けに販売網を持っており、ハトメ・ホック、マジックテープなど、国内・世界でもトップシェアを誇る商品が多数あります。
モリトの役割
一坪:モリトの役割についてです。モリトは製造機能も併せ持つメーカー的商社です。スライドの画像にあるような、靴ひもを通す穴に付けられているハトメ、靴ひも、ホック、マジックテープなど「繋ぐ・留める・飾る」をコンセプトとした、身の回りにあるパーツを主に扱っています。
事業は主にアパレル、プロダクト、輸送の3つに分けられますが、関わっている業界はかなり幅広く、当社で取り扱う商品は50万点以上を超えています。そのようなさまざまなパーツの企画開発から製造、調達、販売、さらにお客さまの生産フォローまでを一貫して行っています。
パーツの生産メーカーは国内外にたくさんありますが、製造機能を持ち、グローバル規模で企画提案や品質のサポートなど、川上から川下まで一貫してサポートを行う会社はモリト以外あまり見られないと思います。
数字でみるモリト
一坪:当社の数字について簡単にお伝えします。2023年11月期の業績は、売上高485億円、営業利益24億円、純利益22億円です。売上高、営業利益に関しては過去最高を更新しています。事業別・地域別の売上構成は、スライドの円グラフのとおりです。
また、2024年11月期の予想年間配当に対する配当利回りは、2024年4月の終値で算出すると3.8パーセントとなっています。
アパレル関連事業
一坪:続いて、事業と商品の一部をご紹介します。まずはアパレル関連事業です。ジャンルは、ベビー・カジュアル・フォーマル・アウトドア系などがあり、すべてのアパレル分野にモリトの商品が使われています。
例えば、スライド左下の黒色のズボンには、業界用語で「前カン」と呼ばれる金具が付いています。これは、ズボンやスカートなどのファスナーの上部に付いている留め具のことで、当社の国内シェアは約90パーセントです。
右隣にあるジーンズのボタンや、ポケットの両サイドに付いているリベット、さらにこれは金属や樹脂になりますが、その隣にあるアウターウェアのホックに関しては、世界でもトップクラスのシェアを誇っています。
これらはほんの一例になりますが、某国内有名アパレルブランドさまでは、金属ホックはほぼ100パーセント、モリトの商品を採用いただいています。
アパレル関連事業 ワーキング・スポーツ
一坪:モリトは機能性や安全性に優れた高付加価値な商品に強みを持っています。例えば、スポーツウェアに使われるような、伸縮性あるいは速乾性のあるパーツ、また建築現場や雪山などの厳しい環境下で使われるワーキングウェアやアウトドアウェア向けの耐久性のあるパーツなど、用途に合わせたパーツを提供することができます。
ファッションというものは流行り・廃りがありますが、これらの商品は流行に左右されにくく、安定した需要があります。
輸送関連事業
一坪:輸送関連事業です。「アパレルの話から突然、自動車の話?」と思われるかもしれません。実は自動車の足元にあるカーマットのズレ防止のためのマジックテープや大きなハトメが採用されたことが、輸送関連事業への参入のきっかけでした。現在では、スライド右上にあるような、社名やメーカー名を示す「マットエンブレム」が、国内シェアの約8割を占めています。
そのほかにも多くの内装部品を手がけており、日系自動車メーカー向けを中心に、製造、調達、販売をグローバルに展開しています。エンジンやエンジン周りなどではなく、内装部品を手がけていますので、電気自動車への移行による買い替えに関しても、当社にとっては追い風になっています。
輸送関連事業 新幹線
一坪:新幹線にもモリトの商品が使われています。こちらのスライドは、みなさまもよくご覧になっていると思いますが、新幹線の座席の写真です。こちらの座席に付いている、物を入れるネット状のポケットも当社が取り扱っている商品になります。
このネットは特殊な製法で作られており、結び目がなく伸縮性があるため、物の出し入れがストレスなく行えます。この機能性が評価され、形状は異なりますが、全国の新幹線あるいは私鉄等に採用されています。
プロダクト関連事業
一坪:プロダクト関連事業です。さまざまな分野の製品や日用品を取り扱っています。
例えば、ランドセルメーカー向けのパーツの販売です。ランドセルに関しては、子どもたちが6年間毎日使い続けるということで、高い耐久性や機能性が求められます。モリトのパーツは厳しいテストをクリアしているため、多くのランドセルに使われています。
また、設計、調達、販売の知見を活かした企画力が評価されており、数々のOEM・ODM製品も手がけています。均一価格小売店でも、雑貨やインソール(靴の中敷き)などを販売しています。
さらに、自社ブランド商品の販売も行っています。インソール、防水スプレーなどのシューケア商品を中心としたブランドの「is-fit(イズフィット)」や、水で丸洗いできる防水素材のバッグ「ZAT」があり、人気の商品となっています。
他にも、今年開催予定のパリ五輪で注目されているサーフィンやスケートボード関連商品の輸入販売も行っています。
以上が、事業と一部商品のご紹介になります。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):先ほどのご説明から、御社は非常にシェアの高い製品をさまざま扱っていらっしゃるということですが、製品の強さの秘訣について教えてください。
また、ほとんどの大手アパレルメーカーが御社の製品を取り扱っているといったお話もありましたが、取引先からの評価なども教えていただければと思います。
一坪:当社の強みについては後ほどご説明しますが、グローバル対応できる品質や、定番商品であっても時代の変化に合わせてアップデートを行っているというところが挙げられると思います。
また、企画・開発の段階から、お客さまの縫製工場から出荷されるまでの一連のバックアップ等も行っていますので、商品自体もそうですが、やはり会社の対応などでも強みを発揮しています。
坂本:輸送用関連事業についてもおうかがいします。先ほど自動車のお話がありましたが、国内外の自動車メーカーは何社ぐらいと取引があるのでしょうか? 大まかな数字でかまいませんので教えてください。
一坪:大体10社ぐらいの自動車メーカーさまに対応しています。
坂本:今後も取引先を増やして拡販していくようなお考えでしょうか?
一坪:はい。特にメキシコも含めた北米市場に対しては、より強化していきたいと思っています。
モリトの強み
一坪:モリトの強みについてです。一言で言いますと、「グローバルニッチトップ」であるという点です。一つひとつの商品が小さく、単価もそこまで高くありませんが、さまざまなニッチな業界でグローバルに展開しており、トップの地位を築いていると考えています。
流行に左右されない、生活必需品向けのビジネスが多数
一坪:強みの1つ目として、流行に左右されにくいビジネスが多数あるということが挙げられます。スライドの画像にもあるとおり、ベビー服・ワーキングウェア・ランドセル・インソールなどが挙げられます。
他にも、病院で使われるメディカルウェアや食品工場で使われる衛生帽など、日常生活に欠かせないパーツを取り扱っています。これらの商品は景気に左右されにくく、毎年継続的に販売を行うことができています。
ポートフォリオが分散して安定した業績
一坪:強みの2つ目は、ポートフォリオが分散しており、安定した業績であるということです。先ほどの説明にもありましたが、モリトの事業は、アパレル、プロダクト、輸送関連事業の3つに分かれており、それぞれの事業の中でも販売する業界が多岐にわたっています。
そのため、どこかの業界、商品、地域の売上が不振であっても、別の売上でカバーすることができますので、特定の事業や商品の実績に業績が左右されにくくなっています。
製造・調達・販売をグローバルに展開
一坪:強みの3つ目は、製造と調達、販売をグローバルに展開していることです。
スライドにあるとおり、自社拠点以外にも協力工場や代理店が世界各地にあり、あらゆる顧客ニーズに対して、できるだけ近くで対応させていただいています。そのため、お客さまには安心してモリトの製品をご使用いただいています。
ポートフォリオが分散して安定した業績
一坪:地域別売上高はスライドのグラフのとおりです。日本の売上高の中には海外との直接取引分も含まれていますので、市場別的には日本市場が約50パーセント、アジアが約30パーセント、欧米が20パーセントとご理解いただければ幸いです。
また、輸出入の割合は輸入が6割、輸出が4割ぐらいのバランスでビジネスを行っています。これにより、為替や地政学リスクについても、ある程度のヘッジができるようになっています。
ニッチ分野をターゲットに、多彩なアイテムで高シェアをマーク
一坪:先ほどのご質問にもありましたが、各業界・分野においてシェアの高い商品が多いという点についてご説明します。
当社の調べでは、金属ホックは日本で1位、世界でも1位、2位を争っています。前カンは断トツの世界1位ですし、インソール、自動車のマットエンブレム、サーフボードなどは国内1位のシェアを有しています。多くの特許、意匠、実用新案なども保有しています。
なぜ高シェアなの?
一坪:「なぜ、モリトが高シェアを獲得しているの?」とよく聞かれるのですが、その理由についてご説明します。
まず1つ目は、グローバル規模で常に安定した品質管理を徹底しているということが挙げられます。お客さまのニーズに合わせたオリジナルのパーツを開発しています。
加えて、通常ホックは服の生地に機械で打ちつけるのですが、お客さまの縫製工場などで使う打ち付けるための機械の供給やメンテナンス、操作指導などをすることで、商品の不良を防ぐためのサポートも行っています。
さらに、万が一トラブルが起こった際は、国内外の拠点スタッフが直接お客さまの工場に訪問し、問題解決のサポートをしています。そのようなことから、安心、信頼を得ることでシェアを獲得しているというのが大きなポイントです。
なぜ高シェアなの?
一坪:高シェアを獲得している理由の2つ目は、世界各国の品質基準をクリアしており、安全な商品を提供していることです。
アジアや欧米などでは、地域によって品質基準が異なるところがありますが、モリトの商品は世界各国の異なる品質基準をすべてクリアできるようにしています。そのため、特に高い品質を求められるベビー服やワーキングウェア、メディカルウェアなどの業界でも高いシェアを獲得しています。
このような理由から、さまざまな商品のシェアを獲得してグローバルニッチトップになっている点がモリトの強みだと思っています。
荒井沙織氏(以下、荒井):御社はハトメ、ホック、マジックテープなど、国内・世界でシェアトップを誇る商品が多数あるとのことですが、販売数はどのくらいでしょうか?
一坪:例えば、ホックは通常4つで1組なのですが、1組ずつで計算すると年間10億個以上は販売していると思います。ハトメはおそらく3億個は販売していると思います。
マジックテープに関しては、だいたい地球2周ぐらい、距離にして9万キロメートルぐらいは提供しています。
荒井:ものすごい数字ですね。
坂本:そうですね。非常にたくさん販売されているというイメージが湧きました。
続いておうかがいします。御社の商品は流行に左右されず、かつビジネスが分散しているためリセッションに強いとのお話でした。反対に、ヒット商品のようなものが収益を押し上げることはあるのでしょうか? 昔のマジックテープが発売された頃にはあったかもしれませんが、最近はいかがでしょうか?
一坪:ファッション・アパレルでは、トレンドの波に乗った商品が流行りのものとされますので、そのようなものはあります。例えば世界の中で環境が急変したとき、直近ではコロナ禍におけるマスクやアクリルボード、お店の中でお客さま同士の距離をしっかり保つために床の上に置くマークといったものもあります。
また、オリンピックのような大きなイベントがあると関連する商品が出るのですが、1つの商品だけで全体の売上や利益が大きく左右されることはあまりありません。
坂本:足元でアパレルが伸びているというお話でしたが、この理由を教えていただけたらと思います。
一坪:ファッションアパレルは流行り廃りがありますが、今の流行りの主なものとしては、ジョギングやスポーツシューズです。サッカー用シューズや、高価格帯のスポーツシューズの底以外のアッパー部分の注文が増えています。
坂本:アパレルの服や靴が高価格ですと、御社の製品でも高価格帯のものが採用されやすくなるのでしょうか?
一坪:そのとおりです。
坂本:御社の高価格帯の製品のほうが利益率は高いのでしょうか?
一坪:日本は良いものをより安くご提供することが美徳という考えがあります。しかし、付加価値があるものに関しては、それなりの価格になることをご納得いただいた上でご提供しています。したがって、付加価値のあるものはそれなりに高利益率です。
坂本:よくわかりました。最後に、グループで世界に拠点をたくさんお持ちですが、そのうちどのくらいが製造拠点なのでしょうか?
一坪:拠点は3ヶ所あります。アメリカはジョージア州アトランタから北へ車で2時間ほど行ったところです。中国は広東省深圳に、ベトナムはちょうど国の中心にあるダナンというところに拠点を設けています。この3拠点における製造とトレーディングについては、自社製造が25パーセントから30パーセントで、残りがトレーディングというかたちです。
売上高と営業利益の10年の推移(連結)
一坪:業績について簡単にご説明します。こちらのスライドは、直近10年の売上高と営業利益をグラフでお示ししています。
2020年11月期は新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きくありました。2023年11月期は売上高、営業利益、経常利益において過去最高を達成しています。2024年11月期は売上高510億円、営業利益26億円の予想で、ともに過去最高を目指しているところです。
2023年11月期 連結貸借対照表
一坪:貸借対照表です。当社の自己資本比率は70パーセントを超えていますので、非常に健全な財務状況です。
坂本:よく聞かれると思いますが、最近は円安がけっこう進んでいます。円安による業績への影響はどのようになっているのか、大まかに教えていただければと思います。
一坪:輸入が6割、輸出が4割という比率ですので、ある程度ヘッジされています。これだけの円安ですので、輸入についてはかなりのコストアップになります。反対に、輸出は自然と粗利率が高くなります。
海外拠点については経費が外貨のため当然高くなります。加えて、円換算するとさらに膨らんでくるような状況です。
特に商売において頭が痛いのは、日本は資源国ではないため、ホックなどを作る真鍮材の価格が最近高いことです。真鍮は銅と亜鉛の合金ですが、銅材が泥棒に盗られるといった事件も起こっています。これはやはり、もの作りにおける金属のコストアップにつながっていると思います。
ただし、状況が状況ですので、その点は合理化しつつ、お客さまへの価格交渉は当然させていただいている状況です。
坂本:御社は非常に高い自己資本比率を保たれています。この水準をしばらく維持するような財務戦略を立てられているのでしょうか?
一坪:そうではありません。116年の歴史の中で、先人の方々がしっかりと事業を行って利益を残してくれました。それにより純資産が大きいというところがありますが、キャッシュで見るとだいたい100億円です。
現在のキャッシュにプラスして毎年キャッシュフローが出てきますが、それをベースにして、例えばM&Aや工場を新しく作るために土地や建物を買うといったことになると、その半分の50億円程度では足りません。
そのため、有利子負債も活用しながら回していきたいと思っています。何もしなければ今の状況のまま進んでいきますが、それでは成長性がないため、しっかりと投資をしていきたいと思っています。
中長期方針 モリトが目指す姿
一坪:今後のモリトの成長性についてご説明します。まず、モリトの中長期方針は「小さなパーツで世界を変え続けるグローバルニッチトップ企業」で、これが私たちの目指すべき姿です。
過去5年間の取り組み(2019年度〜2023年度)
一坪:中長期方針に掲げた姿を目指した過去5年間の取り組みを、スライドのグラフに記載しています。黄色の吹き出し部分にご注目ください。
2019年に持株会社体制へ移行しました。2022年には、モリトグループ最大の事業会社であったモリトジャパンをアパレル、輸送、プロダクトの事業ごとに会社分割しました。これにより事業部が1つの会社になり、在庫や取引条件などの課題が見える化され、不採算事業の見直しや営業の粘り強い交渉などによって、利益率の改善が進んでいます。
その他にも、筋肉質な利益体制を整えるための取り組みを多数実施し、営業利益は2期連続で過去最高を更新しています。さらに、株主還元策の刷新や、株価・資本効率改善に向けた取り組みも積極的に行ってきました。
第8次中期経営計画 財務数値目標のアップデート
一坪:このような取り組みの成果もあり、当社の第8次中期経営計画で2026年11月期における財務数値目標を上方修正し、売上高600億円、営業利益30億円を目指すこととしました。
第8次中期経営計画アップデートにあたっての基本的な考え方
一坪:現在、実施している第8次中期経営計画において、目標を達成すべく、未来に向けた積極的な投資も行っていきます。
当社は2030年のありたい姿として、売上高800億円、営業利益50億円、ROE8パーセントという数字を掲げています。さらに、未来のさらなる成長により、売上高1,000億円の企業を目指して邁進していきたいと思っています。
第8次中期経営計画 成長戦略【環境への取り組み Rideeco(リデコ)】
一坪:第8次中期経営計画で、特に注力している成長戦略についてご説明します。
まずは環境配慮の取り組み「Rideeco(リデコ)」についてです。こちらは、業種や業界の垣根を越えてさまざまな企業、団体と協力し、サステナブルな商品を作る取り組みです。不要とされていたものからリサイクルやアップサイクルによって新たな商品を生み出し、サステナブルな社会へと貢献していきます。
第8次中期経営計画 成長戦略【環境への取り組み Rideeco(リデコ)】
一坪:「Rideeco」の具体的な取り組みです。1つ目は、処分される漁業用の網、廃漁網の活用です。廃漁網は、日本に漂着する海洋プラスチックごみの重量の40パーセントを占めていると言われています。
当社は、廃漁網からリサイクルされた素材を使ったパーツや生地を展開しています。例えば、子ども向けのスクールリュックや、コクヨ株式会社で限定販売されたペンケース、さらに「ドクターエア」のマッサージ機にも、廃漁網を活用した生地が採用されました。
第8次中期経営計画 成長戦略【環境への取り組み Rideeco(リデコ)】
一坪:「Rideeco」の2つ目は、混抄紙の「ASUKAMI」です。アパレル関係の取引先において、縫製の際に大量に出る端切れを回収し、紙の原材料に混ぜることで、服についている下げ札や紙袋などに活用しています。食品や植物などの天然素材を使った混抄紙はたくさんあるのですが、「ASUKAMI」は化学繊維を活用できることが強みになっています。
このように、化学繊維を活用した紙を実用化したのは、おそらく日本で初めてだと思いますが、大手アパレルメーカーのワールドさんに下げ札などを全面的に採用いただいています。
第8次中期経営計画 成長戦略【プロダクト関連事業 厨房機器関連サービス】
一坪:2番目の成長戦略として、厨房機器関連サービスがあります。これは、当社のグループ会社で、エース工機という会社が行っているビジネスなのですが、厨房の換気扇の換気ダクトに取り付ける、グリスフィルターという油とりフィルターの交換・配送・洗浄などのサービスを行っています。
飲食店などでは、フィルターの汚れを放置すると火災リスクがあるため定期的な交換が必要なのですが、非常に手間がかかる作業です。したがって、エース工機のサービスが好評を得ており、プロダクト関連事業の柱の1つとなっています。
今後は、成長のための設備投資やサービス地域の拡大を、積極的に進めていきたいと思っています。
第8次中期経営計画 成長戦略【BtoC事業への注力】
一坪:成長戦略の3番目は、BtoCビジネスです。去年からスタートしたダウンウェアのブランドで「YOSOOU」、アウトドアブランドで「POLeR」というものがあります。
また、イッセイミヤケさんの「BAO BAO」というバッグをご存じだと思いますが、このデザインに携わった松村光氏と共同で行っている「52 BY HIKARUMATSUMURA」というブランドがあります。
これらは、グローバルブランドを目指して、機能・パーツ・デザインにもこだわったもの作りに取り組んでおり、販売をモリトグループで行っています。このようなBtoCで得たノウハウが、BtoBビジネスにも活かされるように努めています。
第8次中期経営計画 投資戦略
一坪:第8次中期経営計画以降のさらなる成長のためにも、外部調達を活用しながら、スライドに記載しているような投資を実行していきます。
アパレル業界では、地産地消の動きが加速しています。これに対応すべく、ベトナムを中心としたASEANでのものづくりや、販売・ロジスティックの部分にも今後投資を実施していきたいと考えています。
第8次中期経営計画 投資戦略【M&A】
一坪:投資の中でも、特にM&Aは実行すべきマスト事項であると考えています。今までは「ニッチトップであること」「グループシナジーがあること」「収益基盤が安定していること」を中心にM&Aを行ってきましたが、これらに加えて、「グローバルシェア向上」「メーカー機能拡大」「BtoC事業の強化」「新規事業への参入」をターゲットに、積極的に取り組んでいきます。
利益配分に関する基本方針
一坪:株主のみなさまへの還元についてです。当社の株主還元策は3つあります。「安定的かつ継続的配当の実現」「50パーセント以上を基準にした配当性向」「DOE4.0パーセント基準」の3点です。
配当金・配当性向・DOEの推移
一坪:スライドのグラフは、配当金の推移を表したものです。昨年実績は年間配当55円でしたが、今期は年間で1株あたり58円を予定しています。
坂本:非常に高い配当水準ですが、自社株買いなどを行う場合については別枠で考えているということでしょうか?
一坪:おっしゃるとおりです。
坂本:御社の場合は期初に配当予想を出されると思いますが、足元の業績推移で配当が出るとお考えになる個人投資家の方もいらっしゃると思います。
今後急速に業績が伸びた場合は変わってくるかもしれませんが、DOEのほうがおそらく高くなると思いますので、今はDOEに基づいた安定配当というイメージで見ておけばよいでしょうか?
一坪:そうですね。株主資本を基にしたDOEと、純利益を基にした配当性向の、いずれか高いほうということになります。現在は、やはりDOEを基に計算した配当金が高くなるため、そのようなイメージでお考えいただければと思います。
理想的にはDOE4パーセント・配当性向50パーセント、つまりROEが8パーセントということになり、今はその途上にいるところです。
まとめ
一坪:当社はホックなどの生活に欠かせないパーツを取り扱っている、グローバルニッチトップです。環境配慮の取り組みに注力しており、健全な財務状況で長年安定した業績を出しています。また、株主還元を重要視している、というところがまとめになります。
ぜひ本日のご縁をきっかけに、「モリト」という名前を覚えていただければと思います。
ご説明は以上です。ありがとうございました。
質疑応答:漁網リサイクルのライセンスおよび製造工場について
坂本:漁網リサイクルのライセンスは取得されているのでしょうか? また、漁網のリサイクル製造は自社工場でされているのでしょうか?
一坪:この事業については、当社は基本的にファブレスで行っています。したがって、リサイクルについては、そのライセンスを持つ協力工場で実施させてもらっています。商品開発などは当社のノウハウを活用します。
質疑応答:オリンピックとの関連について
坂本:「御社はオリンピック関連銘柄だと聞いたことがあるのですが、どのような点においてオリンピック関連銘柄なのか教えてください」というご質問がきています。
一坪:当社はスポーツ関連でかなり参入しているため、オリンピック関係では、野球・サッカー・ホッケー・サーフィン・スケートボード、このようなところが関連してくると思います。
坂本:オリンピックの後もそのユニフォームが売れたり、ユニフォームを新しく変えたりすることがあるということですね。
一坪:そのとおりです。
質疑応答:中計における成長分野について
坂本:中期経営計画の成長戦略についてうかがいたいと思います。スライド29ページに、2026年と2030年の売上・利益のイメージが記されていましたが、どの分野が伸びる見通しなのか教えてください。2030年の目標に関してはトピックに関するお話になるかと思いますが、そのあたりを含めて教えていただけると、イメージが膨らむと思います。
一坪:事業別、地域別ではアパレル関連が約50パーセント、プロダクト関連が30パーセントから35パーセント、輸送関連が約15パーセントという見通しです。特に、当社ではアパレルが一番大きな事業ですので、成長戦略としてはやはりアパレルが主になっていくと思います。
また、プロダクト関連については不採算事業の見直しなども現在進めていますので、高付加価値のモリトの存在価値のある商材のご提供に注力していきたいと考えています。冒頭にお話しした輸送関連については、北米を中心により強化を図っていきたいと思っています。
質疑応答:不採算事業の見直しについて
坂本:不採算事業の見直しというお話がありましたが、どのようなものがあったのか教えてください。
一坪:薄利多売と言いますか、売上も粗利額もしっかりあるのですが、関連経費などを差し引くと、「利益が出てない」とか、「とんとんやね」となった事業です。これをずっと追いかけていくと、「今年は売上を上げたから、来年ももっと売上を上げないといけない」ということで、さらに薄利なものを売りに行くかもしれないということにもなり、これはやはりつらい話です。したがって、そのような事業はしっかりと見直しを図ります。
あるいはお客さまに対して、状況をご理解いただいた上で、価格交渉や、販売条件などの交渉も行っています。
坂本:闇雲に撤退するわけではなく、ケース・バイ・ケースで考えながら対応されたということですね。
一坪:おっしゃるとおりです。
質疑応答:BtoC分野での既存取引先とのバッティング対策について
坂本:御社がBtoCに進出していくというお話がありました。今でもBtoBのボリュームが多いと思いますが、既存の取引先とバッティングする可能性が少なからずあるのではないかと思います。こちらについては、良好な関係を維持していけるのでしょうか?
一坪:各ブランドの顧客層が、当社の取引先と異なるというところが大きなポイントになります。闇雲にバッティングして取引先との関係を悪くするようなことはしたくないですし、そのようなBtoCビジネスはしないように、当社独自の顧客層を目指していきたいと思っています。
質疑応答:インドでの戦略について
坂本:「インドへの進出は考えておられるのでしょうか?」というご質問がきていますが、販売はもうされているのでしょうか? 今後のインド戦略についても教えていただければと思います。
一坪:すでに販売は行っています。
インドは人口があれだけ増えており、なおかつ資本主義国家です。私はすでに20回ほど訪れていますが、インドという国は丘陵地帯です。そのため平野部分に大きな都市ができていますが、平野にある都市と都市を結ぶ交通インフラは、飛行機、列車、国道のいずれかなのです。エリアごとに独特の文化がありますし、なおかつカースト制もまだ残っていますので、そのあたりもすべて理解した上での対応が必要になります。
今はインドにある問屋や代理店と取引していますし、販売も行っていますが、今後やはり考えるのは、インド市場でなんらかのかたちでもの作りができるかどうかということであり、加工も含めて、いろいろと考えていきたいと思っています。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:製造機能をお持ちとの説明ですが、仕入れ商品と自社生産をしている割合を教えてください。
回答:調達7割、自社生産3割くらいの割合です。ただ、この調達をしている商品も100年以上関係のある工場でファブレス生産をしているものが多いです。そのため、当社が企画開発、設計、品質管理等も実施しております。
<質問2>
質問:オンライン以外での会社説明会予定はあるのでしょうか。
回答:今後、さまざまな形態の説明会や発信の仕方を検討して実施してまいります。
<質問3>
質問:今後の販売網の戦略についてどう考えておられるのでしょうか。
回答:より世界全体を網羅すべく販売網を構築してまいります。特に現在は、アジアではアセアン、北米ではメキシコなどの生産が活発になってきているので、当社機能も強化していく計画です。
<質問4>
質問:中長期的に日本は経済成長ができるとお考えですか、それとも海外展開を主にしないと日本企業は生き残れないとお考えですか。
回答:業界にもよりますので一概には言えませんが、当社の市場では海外展開はマストだと考えています。日本市場でも国内需要向けとインバウンドのバランスを上手く取りながらさまざまな事業を展開することが重要と考えています。
<質問5>
質問:年2回の配当を1回にして、浮いた事務費用を配当にという構想はないでしょうか。
回答:当社は株主還元を経営上の重要課題であると認識しています。どのような方法での実施が適切か、今後も検討してまいりたいと考えております。
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