モバイル4社の4-12月期、通期決算

2024年2月28日 18:23

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記事提供元:エコノミックニュース

ドコモもソフトバンクもKDDIも明るさが見える中で「楽天一人負け」

ドコモもソフトバンクもKDDIも明るさが見える中で「楽天一人負け」[写真拡大]

 2月14日、日本電信電話、ソフトバンク、KDDIの2023年4~12月期(第3四半期)決算、楽天グループの2023年12月期決算が出揃った。各社のモバイル通信は、ドコモは日本電信電話(NTT)の一部門、ソフトバンク、ワイモバイルは通信企業のソフトバンクの一部門でソフトバンクグループとは決算が別になり、au、UQ mobileなどはKDDIの一部門で、楽天モバイルは楽天グループの一部門である。

 モバイル通信は「5G」の普及が進み、そろそろ先行投資の回収スキームに入る時期。モバイル端末経由でのデータ流通量はこの先、大きな伸びをみせると予想されているので、その流れに乗れなければモバイルキャリアの経営は先細りになっていく運命になる。

 ドコモは5G契約数が約2割増と順調に伸びており、新料金プラン導入後のソフトバンクは業績に明るい兆しが見え、KDDIは「UQ mobile」を中心に新規契約が伸びているが、楽天モバイルは5Gへの莫大な先行投資が楽天グループ全体の赤字をもたらすという負の構造が、長いトンネルに入ったまま出口がいまだ見えない状況にある。

■ドコモは5Gサービス契約数が32.1%増加

 日本電信電話(NTT)の4~12月期決算(国際会計基準/IFRS)は、営業収益は1.5%増の9兆7168億円、営業利益は2.3%減の1兆4861億円、税引前四半期利益は1.8%増の1兆5568億円、四半期利益(最終利益)は2.1%減の1兆111億円で、売上高は微増、営業利益、最終利益は減益という決算だった。最終利益の通期見通しに対する進捗率は80.5%である。

 モバイルのドコモが属する「総合ICT事業」は営業収益945億円増、営業利益135億円増で、その業績は順調に伸びている。携帯電話サービスの契約数は4~12月で1.9%増。5Gサービスが32.1%増加しているがLTE(Xi)は5.9%減、FOMAサービスが16.6%減で、5Gへのシフトが大きく進んでいる。移動音声関連収入は6.1%減だが通信端末機器販売収入は19.1%増で、5Gスマホの普及が進んだことで、動画視聴などでデータ通信収入をよりいっそう稼げる基盤が築かれつつある。

 NTTの通期業績見通しに修正はない。営業収益は0.6%減の13兆600億円、営業利益は6.6%増の1兆9500億円、税引前当期利益は3.4%増の1兆8800億円、当期利益(最終利益)は3.5%増の1兆2550億円で、減収増益の見通し。予想期末配当は2.5円、予想年間配当は5円で、修正していない。2023年7月1日付で1株について25株の割合で株式分割を行っているので、それを考慮しない場合は予想期末配当は前期比2.5円増配の62.5円、予想年間配当は前期比5円増配の125円に相当し、実質的に増配になる見通し。

 12月にはNTTドコモ・ベンチャーズが生成AI技術を持つSakana AIに出資しており、通信の5G、6Gに続き、生成AIに対しても先行投資を進めている。

■ソフトバンクはモバイルの見通しが明るくなる

 ソフトバンク(通信企業)の4~12月期決算(国際会計基準/IFRS)は、売上高は3.8%増の4兆5115億円、営業利益は25.5%減の7319億円、税引前利益は16.2%減の6904億円、四半期利益は20.4%減の5026億円、四半期利益(最終利益)は20.2%減の4066億円という増収減益決算。前年同期の2ケタ増益の反動がきたかのように2ケタ減益になった。4~12月期四半期利益(最終利益)の通期見通しに対する進捗率は88.0%である。

 モバイルブランドのソフトバンク、ワイモバイルは2023年10月に新料金プランの提供を開始した。それも寄与したのかワイモバイルを中心にスマホの契約数が増加し、モバイルサービスの平均単価も改善している。5Gエリア展開のための設備投資も一段落し、それによりコスト負担も軽減している。個人向けの「コンシューマ事業」のモバイル売上は、スマホ契約数の純増、2021年春に実施した通信料値下げの影響の縮小で前年同期比の減少幅が前年同期の566億円減から38億円減へと改善しており、ソフトバンクのモバイル事業は業績の先行きに明るさが見えている。

 通期業績見通しは上方修正し、売上高は600億円引き上げて2.5%増の6兆600億円、営業利益は600億円引き上げて20.8%減の8400億円、当期利益(最終利益)は420億円引き上げて13.1%減の4620億円としている。予想期末配当は前期比据え置きの43円、予想年間配当は前期比据え置きの86円で、修正していない。

 通期では最終減益見通しではあるが、ARPU見通しが改善し「選択と集中」によるコスト構造の最適化も進んで最終利益見通しを10%も上方修正しているので、「2025年度の最終利益目標5350億円、過去最高益更新」という中期経営計画の目標達成に向け、視界は良好といえる。

■KDDIのモバイルはUQ mobile中心に新規契約増

 KDDIの4~12月期決算(国際会計基準/IFRS)は、売上高は2.0%増の4兆2655億円、営業利益は0.4%増の8478億円、税引前利益は3.1%増の8694億円、四半期利益は4.2%増の6019億円、四半期利益(最終利益)は2.3%増の5455億円で、増加幅は大きくないものの増収増益決算だった。4~12月期の四半期利益(最終利益)の通期見通しに対する進捗率は80.2%である。

 「au」「UQ mobile」「povo」の3ブランドを展開するモバイル部門が属する「パーソナルセグメント」の業績は、売上高0.7%減、営業利益1.2%減。ただし売上減は主として楽天モバイルに対するローミング収入の伸び悩みが響いたものである。

 第1四半期から第3四半期にかけて、3ブランドのマルチブランド通信ARPUは3930円から3990円へ、付加価値ARPUは1200円から1270円へ伸び、マルチブランドID数は2022年末の3071万件から2023年末の3106万件へ増加し、期末目標の3100万件を前倒し達成した。特にUQ mobileを中心に新規契約数が増加をみせている。5Gの普及が進む中、自社ブランドで通信料収入を稼げる基盤が着々と整っている。

 KDDIの通期業績見通しに修正はなく、売上高は2.3%増の5兆8000億円、営業利益は0.2%増の1兆800億円、当期利益(最終利益)は0.1%増の6800億円で、利益項目は微増だが増収増益の見通し。予想配当も修正はなく、期末配当は前期比据え置きの70円、年間配当は前期比5円増配の140円を見込んでいる。

 2024年度は5G新周波数の活用が本格化する。2024年1月にアメリカの「スペースX」が人工衛星6機を打ち上げて通信試験に成功し、「Starlink」の2024年内のサービス開始に向けて前進した。災害時の宇宙経由の通信手段確保が期待されている。

■楽天の赤字の元凶、モバイルは700MHz帯で黒字化できるか?

 楽天グループの2023年12月期の通期決算(国際会計基準/IFRS)は、売上収益は7.8%増の2兆713億円、営業損益は2128億円の赤字、税引前損益は2177億円の赤字、当期損益は3295億円の赤字、当期損益(最終損益)は3394億円の赤字で、今期も赤字決算となった。前期は4.5円だった期末配当は無配で、前期は4.5円だった年間配当も無配としている。

 楽天モバイルが属するモバイルセグメントの売上収益は契約回線数が596万回線に伸び、通信料金収入の増加で3.9%増となったが、セグメント損益は3375億円の赤字で、前期の4792億円から縮小しているとはいえ、楽天グループ全体の赤字の大半をモバイル部門がもたらす状況には変わりない。グループの有利子負債残高を膨張させた5Gへの先行投資の負担がなおも重くのしかかっている。

 通期業績見通しは非公表で「連結売上収益は前期比で2ケタの成長を目指す」というコメントを出すにとどまっている。配当予想も非公表で「配当再開時期は現時点では未定」「早期の連結業績黒字化及び有利子負債の削減を進める中で、適時適切に復配を行えるように努める」としている。

 そんな赤字の暗いトンネルを抜ける出口として楽天モバイルが期待するのが、2023年10月に総務大臣から特定基地局開設計画の認定を受けたばかりの「700MHz帯」だ。楽天ではこのバンドを個人ユーザーだけでなく、企業や自治体のユーザーを獲得するための武器にもしたい考え。700MHz帯のより高品質な通信環境を売り物にこの先、伝統的に法人需要に強みがあるドコモやKDDIを差し置いて、楽天が起死回生の逆転打を打てるかどうか、今のところ不透明である。(編集担当:寺尾淳)

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