2024年の展望 建設5社

2024年1月21日 17:55

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記事提供元:エコノミックニュース

大成建設は「オフィスビルと海外」に積極投資

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■大成建設は「オフィスビルと海外」に積極投資

 大成建設の2024年3月期の通期業績見通しは、売上高2.9%増、営業利益16.9%増、経常利益6.1%増、最終利益0.3%減で、増収、最終減益。受注高と売上高を下方修正、最終利益を上方修正している。

 建設業界は公共投資が、ケナンだれた「五輪後」の落ち込みも小さく堅調で、民間設備投資も持ち直し、受注環境は決して悪くない。しかし建設資材価格、労務費の高騰によるコスト高が、特に建築事業で利益を圧迫している。そんな経営環境は2024年も変わらないと予測されている。特に残業時間の上限規制、いわゆる「2024問題」は直近で解決すべき大きな課題になりそうだ。

 その中で、技術開発投資ではグループ次世代研究所でのZCB技術の導入、情報投資ではAI・IoTソリューションの開発、事業関連投資では都心大型オフィスビル・海外案件への継続投資に積極投資していく構え。特に事業関連投資は大幅な増額が予定されている。「オフィスビルと海外」が焦点になりそうだ。

■清水建設は「常盤橋プロジェクト」に未来をかける

 清水建設の2024年3月期の通期業績見通しは、売上高0.6%増、営業利益5.2%増、経常利益4.5%減、最終利益1.9%増。複数の開発物件の売却によって売上は微増で、経常減益でも最終増益を見込んでいる。業績予想に修正はなかった。

 減益の要因は資材、労務費の高騰分を発注者との交渉でカバーできないことによる国内建築の採算悪化だが、同社は決算説明会で「国内建築の利益率は2~3年のスパンで着実に回復していく」と述べている。その初年度となる2024年は東京駅に近い場所で受注した超大型案件「常盤橋プロジェクト・トーチタワー」がすでに着工しており、難工事が予想されるが、完成すれば同社の技術力の象徴のような存在になるだろう。

 他にも東京都心部で「日本橋一丁目中地区」「芝浦一丁目」「豊海地区」などの大型プロジェクトの完成が近づいているのも期待できそうだ。

 「2024年問題」については、「メタバース」や「AI」などITを駆使することで、設計や施工監理や建物検査での労働負担軽減で課題の解決を図ろうとしている。

■鹿島は九州で相次ぐ半導体工場の建設が追い風に

 鹿島建設の2024年3月期の通期業績見通しは、売上高9.1%増、営業利益16.6%増、経常利益2.4%減、最終利益4.3%減。通期の売上高、各利益項目の業績予想を上方修正したものの、経常減益、最終減益となる見込み。

 国内は土木も建築も開発事業も順調で、海外工事は円換算で為替の円安の好影響が出ているが、東南アジアやアメリカなど海外でのコスト増が利益の足を引っ張って減益になった。

 2024年、建設事業は重点分野である製造業案件では九州で相次ぐ半導体工場のプロジェクトを中心に高水準が続き、海外の太陽光発電施設など再生可能エネルギー分野も期待できる。国内開発事業では、オフィスビルは今後の収益源となる案件が複数竣工予定で、売却も順調に進みそうだ。とりわけ需要が高水準の「物流センター」の開発事業は収益源になりそうで、アメリカでの流通倉庫開発事業も堅調に推移している。

 ITの活用などで資材、労務費のコスト増をうまく克服できれば、次期に増益に転じられる可能性はある。

■大林組は受注採算の改善が利益回復につながるか?

 大林組の2024年3月期の通期業績見通しは、売上高14.9%増、営業利益21.1%減、経常利益21.6%減、最終利益24.0%減の増収、2ケタ減益を見込んでいる。政策保有株式の売却益が当初想定値を超えたことを理由に最終利益を上方修正した以外は、業績予想を修正していない。なお、東京駅前八重洲一丁目東B地区の事故の業績への影響は、まだ確定していない。

 大幅減益の主因はやはり資材価格と労務費の高騰で、大型案件での低採算が足を引っ張っている。それは2024年も大きく響きそうだ。それでも国内の建設需要は依然旺盛で、都心部再開発のオフィスビル、物流施設に加え、半導体、再生可能エネルギー、医薬品、データセンターなどの分野では建設プロジェクトの引き合いが目白押しで、それが受注採算の改善につながることが期待できる。

 なお、大林組は中期経営計画で政策保有株式1500億円分の縮減を進めている。前年以来の株価上昇が2024年も続けば、売却益が最終利益の上積み要因になる。

■竹中工務店はイノベーションへの挑戦に注目

 竹中工務店(非上場)の2023年12月期の通期業績見通しは、売上高8.3%増、営業利益4.7%減、経常利益13.7%減、最終利益17.4%減を見込んでいる。資材価格の高止まり、需給逼迫による労務費など建設コストの増加によって厳しい経営環境が続いている。国内開発事業はインバウンド需要の回復による宿泊需要の高まりがある一方で、オフィス空室率の上昇、賃料の下落が継続しているのがリスク要因。それは2024年も続くとみられる。

 竹中工務店はいわゆるスーパーゼネコンの中でも建築工事、民需に特化しているのが特徴。2023年1~6月期に営業赤字を計上するなど資材価格、労務費の高騰の影響が早く出たが、その分、2024年は採算改善の努力が早期に結果を出しやすいとも言える。

 東京・渋谷エリアの「代官山町プロジェクト」が竣工したばかりで、大宮駅東口の市街地再開発事業も計画決定した。2023年に「宇宙建築タスクフォース」を立ち上げ、1月には東京・日本橋で三井不動産から受注した国内最大・最高層の木造賃貸オフィスビルを着工するなど、常識を超えたイノベーションへの挑戦も注目されそうだ。(編集担当:寺尾淳)

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