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銀河系中心で銀河系外起源の星を発見 国立天文台ら
超大質量ブラックホールいて座A*と銀河系外からやってきたと判断されたS0-6 (c) 宮城教育大学/国立天文台[写真拡大]
すばる望遠鏡は3日、銀河系中心にある超大質量ブラックホール(いて座A*)の近くで、銀河系外で誕生した星が存在すること発見したと発表した。今回の研究は、宮城教育大学、大同大学、愛知教育大学、コートダジュール天文台、国立天文台等の科学者によるもので、このような発見は世界初という。
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超大質量ブラックホールの近くでは、潮汐力が巨大なため恒星の誕生は不可能で、そこに存在している星はすべてよそのどこかで誕生し、超大質量ブラックホールに引き寄せられたものと考えられる。
潮汐力とは、重力源からの距離の違いによって生ずる重力の差に起因する力だ。超大質量ブラックホールのような強大な重力源のそばでは、ほんのわずかな距離の違いでも、巨大な潮汐力が働き、誕生しかけた恒星の卵は瞬時に粉々になってしまう。しかしながら、いて座A*付近には多くの恒星が存在しており、それらの起源については謎が多い。
今回の研究では、いて座A*に最も近い(距離にして0.04光年)S0-6ならびにS10と呼ばれる2つの恒星に対し、すばる望遠鏡による分光分析を実施した。分析を実施した2つの恒星のうち、S0-6が今から100億年前に誕生し、小マゼラン雲やいて座矮小銀河など天の川銀河の外側にある小さな銀河に存在する星と、同様の化学組成を持っているとの判断が下された。
この判断が正しいならば、S0-6は100億年近い歳月をかけて5万光年以上の距離を移動してきたことになる。いて座A*は、太陽の400万倍もの質量を持つ非常に強力な重力源であることに違いない。S0-6が徐々に吸い寄せられていったのと同じように、銀河系内の星々が今後吸い寄せられていく運命にあるのか、それともS0-6がたまたまいて座A*に吸い寄せられる条件下にあったのかは不明だ。
太陽は銀河系の中心から2.7万光年しか離れておらず、S0-6の生まれ故郷よりもはるかに銀河中心に近い。太陽誕生からまだ50億年しか経過していないものの、なぜいて座A*のそばまで太陽が吸い寄せられなかったのか不思議でならないが、この幸運には感謝しかない。
なお今回の研究の詳細は、「日本学士院紀要」の欧文報告「Proceedings of the Japan Academy, Ser. B, Physical and Biological Sciences」オンライン版に、12月1日付掲載されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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