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相場展望10月9日号 米国株: 米株価は、長期金利がさらに上昇し割高感高まるリスク 日本株: 日本株の売買主体の構成が悪化しており、警戒したい
■I.米国株市場
●1.NYダウの推移
1)10・5、NYダウ▲9ドル安、33,119ドル(日経新聞より抜粋)
・9月の米雇用統計の発表を10月6日に控え、様子見姿勢が強かった。内容次第では米長期金利の上昇につながるとの警戒から、売りがやや優勢だった。NYダウは高く推移する場面もあったが、主力銘柄に積極的な買いを入れる動きは限られた。
・10月6日の雇用統計では非農業部門の雇用者数が前月比+17万人増と、8月の+18.7万人から伸びが鈍化する一方、失業率は8月の3.8%から3.7%に低下すると市場では予想されている。賃金は前月比で伸びが小幅に加速するとの見方が多く、内容次第で米連邦準備理事会(FRB)の利上げ観測が強まる可能性がある。
・半面、米長期金利は足元で急ピッチで上昇してきたため、市場予想から下振れすれば「大幅に低下する可能性もある」との見方もあった。発表後の株式と債券相場の反発が読みにくく、雇用統計を見極めたいという雰囲気が強かった。
・朝発表の週間の米新規失業保険申請件数は20.7万件と、前週の20.5万件から小幅に増えたものの、ダウジョーンズ通信がまとめた市場予想21万件を下回った。米長期金利は朝方に4.77%(前日終値は4.73%)に上昇する場面があったが、その後は4.7%台前半で推移した。米長期金利の上昇一服は投資家心理を支えた。
・個別銘柄では、飲料のコカコーラが▲5%弱下げ、化学のダウや建機のキャタピラーなど景気敏感株の売りが優勢だった。一方、映画・娯楽のディズニーやクレジットカードのビザなど消費関連株が買われた。製薬のメルクや医療保険のユナイテッドヘルスなどディフェンシブ株の一角も上昇した。アナリストが楽観的な需要見通しを示した画像処理半導体のエヌビディアも買われた。一方、ネット通販のアマゾンや電気自動車のテスラが下落した。
【前回は】相場展望10月5日号 米国株: 長期金利上昇は、株価の割高感意識を誘発し重荷へ 日本株: 10/5は自律的反発が期待できるが、「一時的」に注意
2)10・6、NYダウ+288ドル高、33,407ドル(日経新聞より抜粋)
・9月の米雇用統計の発表後に米長期金利が上昇したのを受け、売りが先行した。米長期金利が上げ幅を縮めたのに加え、週末を控えた持ち高調整や売り方の買い戻しで上げに転じた。
・雇用統計では非農業部門の雇用者数が前月比+33.6万人増と、ダウジョーンズ通信がまとめた市場予想の+17万人増を大幅に上回る伸びとなった。7・8月分も上方修正され、労働市場が想定以上の強さを維持していたことが分かった。
・米連邦準備理事会(FRB)の金融引締めが長期化するとの見方から米長期金利は一時、前日比+0.16%高い4.88%と、10月4日に付けた16年ぶりの高水準に並んだ。株式の相対的な割高感が強まった。
・売りの勢いは続かず、NYダウは上げに転じた。雇用統計では失業率が8月と同じ3.8%となり、市場予想の3.7%を上回った。平均時給の前月比伸び率が+0.2%と市場予想の+0.3%を下回ったことで、賃金インフレへの過度な警戒が和らいだとの見方もあった。
・雇用統計を受けて急上昇した米長期金利が4.7%台に水準を切り下げたことが株の買い戻しを促した。高金利が米景気を冷やすとの見方が強まっており、「FRBの追加引締めが必要なくなった可能性がある」との指摘があった。
・NYダウは約4ヵ月ぶりの安値圏にある。10月6日は多くの機関投資家は運用指標とするSP500が一時、心理的な節目とされる4,200に近づいた。雇用統計発表後の材料出尽くし感や自律反発期待から、売り持ちを解消して利益を確定する動きが広がったとの声があった。
・NYは午前に▲270ドルあまり下げた後、午後に+440ドル近く上げる場面があり、値幅は710ドルと3月22日以来の大きさだった。
・個別株では、顧客情報管理のセールスフォースやソフトウェアのマイクロソフトなどハイテク株の上げが目立った。映画・娯楽のディズニーなど消費関連株の一角も高い。建機のキャタピラーや機械のハネウェルなど景気敏感株も上昇した。交流サイトのメタ、動画配信のネットフリックスなどハイテク大手全般が高い。AMDなど半導体株の上げも目立った。
●2.米国株:米株価は、長期金利がさらに上昇するかどうかが焦点
1)10月6日の上昇は、下落基調のなかの「一時的な反発」の可能性
・10月6日は金利の上下で、NYダウはシーソーのように振り回された。
前日終値 4.719%
午前 4.89 :金利上昇でNYダウ▲270ドル下落
終盤 4.80 :金利低下でNYダウは一時+440ドル上昇
終値は+288ドルで着地
・金利上昇一服をきっかけに、週末を意識した「売り方の買い戻し」や持ち高調整の買いもあり、NYダウやナスダック総合指数は反発し上昇した。
・10月6日の問題点
・長期金利は前日終値4.719%よりも10月6日終値は4.795 %と上昇して株価の割高感が意識され売られやすいにもかかわらず、NYダウは前日よりも+288ドルと上昇したことにある。
・長期金利の推移
10年長期金利 10月2日 10月5日 10月6日
4.679% 4.719 4.88に急伸 ⇒終値4.795
・前日よりもNYダウは+288ドル高した要因は、
・週末を控え、売り方の持ち高調整の買い戻しが入ったこと。
・「売り方の買い戻し」が要因であるならば、今週も買い継続で上昇するとは思えない。したがって、相場は9月14日の34,907ドル高値から下落基調に転換しており、10月6日の上昇は一時的な反動高と位置付けられる可能性がある。
2)米長期金利は上昇の過程にある
・米経済指標は、経済鈍化と底堅さを示している。ただ、インフレ指標は昨年8月から鈍化しているが、FRBのインフレ目標+2%には程遠い。
・賃金の上昇ペースは鈍化してきたが、雇用指標は依然として力強い。
・米経済も一部で鈍化が見られるが、全体的には根強い強さがある。
・したがって、FRBはインフレ抑制の観点から、金融引締め策の継続は必至とみられる。FRBによる量的緩和策の収縮と、米財務省による財務省証券の発行もあって、市場から資金が引き上げられているが、これは金利上昇に直結する。以上のことから、金利は7~8%程度まで上昇する可能性があるとみている。現行の金利水準からさらに上昇すると見込んでいる。
3)懸念材料
・下院議長選出に時間を要し、さまざまな法案を巡る協議が停滞。
・予算案の合意が進まず、11月中旬には再び政府機関閉鎖リスクの高まり。
・全米自動車労組のストライキによる賃上げ波及と賃金インフレ加速の影響。
4)株価にとって「金利上昇は大きなリスク」要因となろう。
・米短期金利(2年)と米長期金利(10年)の差は、▲1.0%あったが現在では▲0.3%と縮小している。
・長短金利差 7月24 日 10月6日
▲1.046% ▲0.286
・これは、短期金利の上昇率が長期金利の上昇よりも高く推移してきたことにある。この長短金利差の縮小は、短期金利が長期金利の上昇を促しているともみえる。
・インフレ率は鈍化してきたが、ここにきて再加速する動きを示している。そのため、長期金利の上昇率が高まりそうな様相となり始めている。
・長期金利の上昇は、株価の割高感意識を高める方向に動く。注意したい。
5)来週の注目イベント
・10月11日 9月生産者物価指数(PPI)
9月連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨
共和党下院議長選挙
・10月12日 9月消費者物価指数(CPI)
・10月13日 10月ミシガン大消費者信頼感指数
●3.米8月雇用者数+33.6万人増、過去8ヵ月で最大の伸び、失業率3.8%(ロイターより抜粋)
1)市場予想は+17万人増を大幅に上回った。
2)労働市場と経済が十分な強さを維持していることを示し、金融引締めが当面継続する可能性が浮き彫りとなった。
3)失業率は3.8%で、前月から横ばい。予想は3.7%だった。
4)雇用の急増や極めて低水準の失業保険申請件数、求人の増加を背景に、FRBが年内に後1回の利上げに踏み切る可能性がある。
5)FRBが利下げを急いでおらず、高水準の金利が長期化する可能性がある。
●4.ボウフマンFRB理事、物価抑制で追加利上げが必要になるとの予想(ブルームバーグ)
●5.全米自動車労働組合、スト拡大の見送りも継続、長期化の影響懸念(NHKより抜粋)
1)組合側は4年間で40%の賃上げを求めたのに対し、
・フォードは4年間で23%の賃上げを回答、
・GMとステランティスは4年間で20%の賃上げ回答にとどまっている。
組合はストを継続するとしていて、長期化するストが自動車生産や経済に及ぼす影響が懸念される。
●6.力強い6月米雇用統計を受け、何かが壊れる可能性高い、アリアンツのエラリマン氏(ブルームバーグ)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)10月5日、祝日「国慶節」で休場
2)10月6日、同上
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)10・5、日経平均+548円高、31,075円(日経新聞より抜粋)
・前日までの5営業日で▲1,800円下落していた反動で、自律反発狙いの買いが入り、6営業日ぶりに反発した。10月4日の米債券市場で長期金利の上昇が一服したほか、日本時間10月5日の取引で長期金利がさらに低下したことも日本株の買いを後押しした。
・10月4日の米株式市場では主要な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が大幅に反発した。米ハイテク株の上昇が10月5日の東京市場にも波及し、アドテストや東エレクなど半導体関連株が買われ、日経平均を押し上げた。
・午後に入ると、日経平均は上げ幅を拡大した。日経平均は9月15日から10月4日までに▲3,000円ほど下落していた。短期筋のショートカバー(売り方の買い戻し)が午後も続いたとの見方もあり日本株の上昇に弾みがついた。市場では「売られ過ぎた銘柄を中心に買いが入った」ととの見方があった。
・個別銘柄では、あおぞら銀行・ヤマハ発・日本紙が上げた。一方、太陽誘電・日揮・JTは下落した。
2)10・6、日経平均▲80安、30,994円(日経新聞より抜粋)
・前日の米株式市場で主要な株価指数が下落した流れを受け、売りが優勢だった。一方、短期目標の投資家による株価指数先物への買い戻しが断続的に入り、日経平均はプラス圏で推移する場面が多かった。
・日経平均は今週半ばにかけて下落が続いた後、前日は+548円高と急反発していたため、前日の米株安をきっかけに31,000円を超える水準では戻り待ちの売りが出やすかった。日米の金利上昇への根強い警戒感から値がさの高PER(株価収益率)銘柄の一角が売られ、日経平均の下押し要因となった。
・一方、前日に続いて株価の短期的な戻りを見込んだ買いも目立った。市場では、地銀など国内機関投資家の一部が大型のバリュー(割安)株に打診買いを入れているとの観測が聞かれた。
・日本時間10月6日夜に米雇用統計が発表される。東京市場は3連休を控えた週末ということも模様眺めムードに拍車をかけた。
・個別銘柄では、東エレクが売られ、INPEX・太陽誘電の下げも目立った。三菱UFJも安かった。一方、川崎汽船が大幅上昇、味の素の上げも目立ち、鹿島が買われた。
●2.日本株:日本株の売買主体の構成が悪化しており、警戒
1)日経平均は10月5日に+548円と大幅上昇にもかかわらず、10月6日は小幅安
2)短期筋の外国人の株価先物は、10月6日まで14日間連続の売り越しを継続
3)海外投資家は年初来で9兆円を買い越してきたが、売り越しに転換
・海外投資家の買い残高推移 8月5週(~9月1日) +8兆8,144億円
9月4週(~9月29日 +5兆7,441億円
差引売り額 ▲3兆0,703億円
・海外投資家は8月5週末から9月4週末にかけて▲3兆0,703億円を売り越した。これは、明らかに海外投資家は利益確定売りに転換したことを示す。
4)証券会社自己部門は買い越し継続
・証券会社自己部門の買い残推移 6月3週(~6月23日) +2兆9,392億円
9月4週(~9月29日) +5兆0,272億円
差引 +2兆0,880億円
・海外投資家の売り越を、証券会社が買い支えした構図となっている。
5)海外投資家の売りを吸収した証券会社自己部門だが、買い支えに限界あり
・海外投資家の売り越は継続する傾向が強く、証券会社自己が売り転換すると買い支えがなくなり、日経平均は急落する可能性がある。
・日本株の売買構図が悪化しており、警戒したい。
●3.メガネスーパーが上場廃止へ、投資ファンドがTOBで完全子会社化(朝日新聞)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・3086 Jフロント 決算発表に期待(10月10日)。
・4004 レゾナック 構造改善に期待。
・6289 技研製 決算発表に期待(10月11日)。
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