相場展望6月26日 米国: 楽観的な米相場も、ついに景気後退を意識し始めるか? 日本: 買い筋は減少し、外国人の現物株買い筋の「1人旅」 6月末~7月上旬は、要注意の季節

2023年6月26日 10:01

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)6/22、NYダウ▲4ドル安、33,946ドル(日経新聞より抜粋
  ・米連邦準備理事会(FRB)による金融引締めが長期化し、景気が悪化することへの懸念が重荷となった。半面、ディフェンシブ株やハイテク株に買いが入り、下値は限られた。
  ・FRBのパウエル議長が6/22の米上院銀行委員会で、米連邦公開市場委員会(FOMC)の委員らが「年内に1回、もしくはあと2回の利上げが適切になる」との認識を示した。ボウマン理事も同日の講演で、「インフレ率を目標の2%まで低下させるための追加の利上げが必要になる」と述べた。
  ・欧州では、英イングランド銀行が6/22、市場予想を上回る0.5%の利上げを決定。スイスとノルウェーの中央銀行も政策金利を引き上げた。世界的に金融引締めが続く中で、「米国も再利上げは避けられないだろう」との声が聞かれた。市場の一部に残るFRBの利上げ打ち止め観測が後退し、米株の売りにつながった面がある。IT(情報技術)のIBM、石油のシェブロン、部品会社のストライキで生産への懸念が出た航空機のボーイングが下げた。一方、前日に下げが目立ったハイテク株は全般に買い直された。ソフトウェアのマイクロソフト、顧客情報管理のセールスフォースが買われた。ディフェンシブ株の一角にも買いが入り、製薬のメルク、医薬・日用品のJ&J、ネット通販のアマゾンが+4%高、電気自動車のテスラも上げた。

【前回は】相場展望6月22日 米国: 米国株は「息切れか?」 日本: 日本株買い主力筋に変化、証券自己が売り転換

 2)6/23、NYダウ▲218ドル安、33,728ドル(日経新聞より抜粋
  ・朝方発表の6月米製造業購買担当者景気指数(PMI)が米景気悪化を意識させた。
  ・欧州主要国でもPMIの下振れが目立ち、世界的な景気悪化への懸念が高まっていることも投資家心理の重荷となった。前日に上昇したハイテク株への利益確定売りもみられた。
  ・S&Pグローバルが朝方発表した6月の米製造業PMIは46.3と、ダウジョーンズ通信がまとめた市場予想49.0を下回り、前月の48.4からも悪化した。高インフレによるコスト圧力などが影響し、景況感の悪化につながった。
  ・同日に発表された欧州主要国の6月PMIも、市場予想を下回る内容が目立ち、企業心理の悪化を示した。一方、各国中央銀行はインフレ抑制にため、一段の金融引締めを進める構えをみせている。
  ・米国でも米連邦準備制度理事会(FRB)高官から年内の1、2回の利上げに前向きな発言が相次いだ。一段の金融引締めが景気の冷え込みにつながるとの警戒から株売りが広がった。
  ・個別では、建機のキャタピラーや航空機のボーイング、スポーツ用品のナイキ、ソフトウェアのマイクロソフト、スマホのアップル、ハイテク株が売られた。一方、クレジットカードのビザ、半導体のインテル、製薬のメルクが上昇した。

●2.米国株:「楽観的」な米株式市場も、景気後退を意識し始めるか? 注目

 1)NYダウ・日経平均ともに「上昇⇒下落」に転換
  ・NYダウは、6/16~23で5日間連続の下落
   6/15の34,408ドル高値⇒6/23の33,727ドルと、▲681ドル・▲1.98%下落。
  ・日経平均も共に下落に転換
   6/16の33,706円高値⇒6/23の32,781円と、▲925円・▲2.74%下落。

 2)米債券市場で、10年債利回りが2年物との差はついに「▲1%」超
  ・6/23の金利差は▲1.013%に拡大。
   10年債利回り  3.737%
   2年債利回り   4.750%
  ・10年ー2年の利回り「逆回転」の状況。
   5/4 ▲0.411% ⇒ 6/23 ▲1.013%
  ・債券市場では、今後の景気後退(リセッション)を強く意識している表れ。
  ・株式市場は「楽観」的だが、債券市場の見方に傾くと、相場が「弱気」に転換しかねない。すでに、株式市場から資金が流出し、債券市場に流れ始めたとの声を聞く。利回りの「逆転」動向について、注意したい。

 3)米FRBのタカ派的スタンスが、「金利上昇」を意識させ、ドル高・円安の進行を促す
  ・6/23 143.737円/ドルまで円安が急伸。

 4)米国株の物色の流れは、金利上昇の流れからハイテク株から転換しつつある
  ・米国株の買いに、「気迷い」が感じられるため、要注目したい。

●3.パウエルFRB議長の上院議会証言、注意深いペースでの利上げが妥当(フィスコ)

●4.先週分新規失業保険申請件数は前週比+26.4万件、予想25.9万件を上回る(フィスコ)

 1)米労働市場のひっ迫緩和の思惑に、追加利上げ観測が後退し、金利が低下。

●5.英国中央銀行、+0.50%の大幅利上げ発表、インフレ抑え込む姿勢鮮明(NHK)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)6/22、端午節の祝日で休場

 2)6/23、端午節の祝日で休場

■III.日本株式式市場

●1.日経平均の推移

 1)6/22、日経平均▲310円安、33,264円(日経新聞より抜粋
  ・米利上げ継続観測の高まりで前日の米株式相場がハイテク株中心に下落し、東京市場では値がさの半導体関連株などへの利益確定売りを誘った。
  ・半導体関連ではアドテストと東エレクが大幅安となり、2銘柄で日経平均を▲188円押し下げた。ソフトバンクGやファストリなど値がさ株も下げた。
  ・半導体関連株はこのところの日本株上昇を牽引してきた。市場では「6月末にかけて、年金基金のリバランス(資産の再配分)に伴う売りが出て、7月上旬には日本株の上場投資信託(ETF)の分配金捻出に伴う売り圧力がかかる。半導体株はこれまで堅調だった分、利益確定売りの対象になりやすい」との声があった。
  ・日経平均は朝方に上昇する場面もあった。日本株の根強い先高観から、下落局面では押し目買いが入った。米著名投資家のバフェット氏による商社株投資が引き続き好感され、伊藤忠・三菱商・三井物・住友商・丸紅の5大商社株は揃って上場来高値を更新した。
  ・資生堂・ルネサス・スクリーン・エムスリーが下落した。半面、三菱UFJ・みずほ・関西電・東電が上昇した。

 2)6/23、日経平均▲483円安、32,781円(日経新聞より抜粋
  ・月末にかけて年金基金のリバランス(資産の再配分)に伴う売りなどで需給悪化が警戒される中、株価指数先物に手仕舞い売りが広がり、終値で33,000円を下回るのは6/12以来。日経平均への寄与度が大きい主力株や、このところ上昇が目立っていた商社株をはじめ幅広い銘柄が下落した。
  ・外国為替市場での円安・ドル高や半導体関連株への買い戻しを支えに日経平均は朝方+200円超上げたが、勢いが続かなかった。下落に転じると先物主導で下げ幅を拡大する展開となり、午後には▲689円ほど下落する場面もあった。日中の値幅(高値と安値の差)は957円と今年最大となり、2022年1月27日の1,149円以来の大きさだ。
  ・この時期特有の需給要因で月末にかけての調整局面入りを予想する声がある中、相場のボラティリティ(変動率)も上昇しているとあって、押し目待ち買いも積極的には入りにくかった。東エレクなど一部を除けば、買いの対象は医薬品や内需株などディフェンシブ銘柄が中心だった。
  ・ファストリ・ソフトバンクG・ダイキン・三菱商事が下落した。一方、エーザイ・セブン&アイ・明治・ヤマトが上昇した。

●2.日本株:

 ・買い筋は減少し、外国人の現物株筋のみの「1人旅」になる
 ・6月末~7月初旬は要注意の季節

  1)日経平均は、大幅下落
   ・日経平均は、6/19に▲335円安、6/22に▲310円安、6/23に▲483円安。この3日間だけで合計▲1,129円下落した。

  2)なお、日経平均は1/4安値25,716円⇒6/16高値33,706円まで、+7,990円高、+31.1%高と急騰していた。

  3)1/4⇒6/16までの上昇幅+7,990円高に対して、直近3日間の下落▲1,129円は▲14.1%安であり、(1)下落に転換したのか、(2)一時的な反落なのか、評価が分かれる。チャートでみると、短期上昇ラインを割り込んだ模様であり、しばらくは「下落」が続くと示唆している。

  4)日本株の買い筋は、外国人の現物株買い筋の「1人旅」となり当面は「軟調が続く」
   ・海外投資家は先物・現物株ともに4月初めの週から「買い越し」を続け、6月1週には年初来での買い越し額合計は+7兆8,949億円と膨れ上がった。
   ・しかし、6月2週(6/12~16)の投資主体者別売買動向をみると、日本株の買い主体は「外国人の現物株筋」のみとなった。
   ・外国人の筋には、(1)先物買いと(2)現物株買いに区分できるが、6月1週までは同じように買い進んできた。ところが、6月2週は(1)の先物買い筋が▲6,606億円と売り越しに転じた。(2)の現物株買い筋は+6,414億円と買い越しを継続したが、外国人合計で▲192億円の売り越しとなった。つまり、外国人の先物買い筋が離脱し、外人現物株買い筋の「1人旅」となった。
   ・売り筋としては、年金基金・個人(現金)が一貫して売り主体となっていたが、これに証券会社自己部門が6月1週から加わる構えであり、外国人先物筋も6月2週に売り方に参加したことになる。
   ・つまり、今後、日経平均を押し上げるパワーが減り、売り方の勢いが増す流れが形成されようとしている。

  5)運用は「慎重な姿勢」が求められる季節が到来
   ・6月末は四半期ごとに運用資産の再配分がされる時期で「売られやすい」。
   ・ETFの配当金捻出売りが7月上旬まで出る。
   ・6月末は、3月決算企業の株主総会が開催されるため、株価操作と疑われないため買いが引っ込む。つまり、企業の自己株式買いの自粛、証券会社自己部門の買いが弱まる傾向にある。
   ・4~6月期の決算発表を控え、材料が乏しくなり、様子見姿勢が強くなる。
   ・4月~6月までの株価上昇局面での買い疲れが出やすく、7月以降の相場に対する資金捻出で売られやすい。
   ・「1人旅」となった外国人現物株買い筋が、いつ「売り転換」するか注目したい。
   ・以上の観点から、7月上旬までは「軟調」な地合いが続くと予想する。

●3.海外投資家が日本株を買った額は12週連続で買い越し(NHK)

●4.産業革新投資機構(TIC)は、半導体素材大手JSRを1兆円で買収へ=報道(ブルームバーグ)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4442 バルデス      業績好調。
 ・4461 第一工業製薬    業績復調。
 ・6768 タムラ製作所    業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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