AI活用自動翻訳機:メタリアルの創業者CEOは法学部出身の「語学オタク」

2023年5月23日 08:40

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 メタリアル(東証グロース市場)。AI活用の機械翻訳・ソフト提供(MT)事業と人間翻訳(HT)事業が目下の2本柱。ここにきて新たな展開に備えた先行投資の負担減もあり、再度右肩上がりの収益動向を示している。

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 2023年2月期の「3.2%増収、460.6%営業増益」に続き今24年2月期も、「6.9%の増収(45億8900万円)、18.6%の営業増益(6億1100万円)」計画。

 「AI活用機械翻訳」と耳にし、「こういう新しい企業が株式市場にも次々と上場してくるのだろうな」と受け止めた。が、四季報で<会社設立:2004年><上場:2015年>を知らされ、誰がどんな経緯で業を興したのかにまず興味を惹かれた。

 創業者は、現CEOの五石順一氏。創業の経緯・契機を調べた。京大法学部の出身。学生時代に外国人向けの観光ガイドをしたのが「そもそも」の入り口。自ら「起きている時間の3分の1を語学に割くほどの“語学オタク”になっていた」としている。

 学卒後の就職先:NOVA(英会話学校)でも「様々な言語を収録したCDを聞きながら寝ていた」というから、中途半端な「オタク」ではない。それだからこそNOVAに通い英会話を学ぶ真面目な社会人を目にするにつけて、「社会人としては優秀だけど、語学が苦手な人は大きなハンディを背負っている」という思いを募らせていった。出口が「自動翻訳機を作ろう」と意を固めての、創業だったのである。

 プロの翻訳家も翻訳の是非を判断する時に参考にしていた、グーグルの検索エンジンを入り口に事業化を図った。だが当初の10年は開発の翻訳機が実用レベルに達せず四苦八苦。脱するキッカケは2017年にAIの深層学習の採用だった。「専門文書の翻訳が、プロの翻訳家と同等になった」と振り返っている。

 メタリアルのAI翻訳機は官公庁や企業:8000社の取引実績を積み重ねているが具体的には、医薬・法務・財務・化学・機械・電気電子・特許等の専門的な分野で活用されている。

 前期決算で収益を確認すると、こんな状況。

★MT事業: 売り上げは前年度比ほぼ横ばい(29億1178万円、総売上高比約68%)も、セグメント利益65.8%増(6億3094万円)。

★HT事業: 前年度比12.3%増(13億7000万円)、セグメント利益46.7%増(2億6723万円)。

 そして注力中の事業として・・・

★メタバース事業: 居ながらにして言語の壁を乗り越え、世界を旅することができる。126.8%増収(1026万円)、セグメント利益(4億2562万円損失/5200万円余減少)がある。

 フッと脳裏をかすめた。「大学は出たけれど・・・」英会話は勿論、第2外国語として選択したドイツ語も喋れない。「もうその歳はとうに過ぎたけど、メタリアルに就職は200%無理だな」と。

 だが21年3月、五石CEOは「英語禁止令(社内で日本人社員が英語を話すことを禁止する)」を発令したという。そのこころは「中途半端な英語を話すくらいなら、自動翻訳機を使った方が仕事にも好都合」と、社内では受け止められているという。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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