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サウジアラムコが最高益、今後の方針は?
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●原油高背景にサウジアラムコが過去最高益
ロイター通信の報道によると、サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコが発表した2022年の通期純利益は、前年比46%増の1611億ドル(約22兆円)となり、過去最高水準だった。
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エネルギーの販売価格高騰などが追い風となり、利益が増加した。
世界景気が減速し、SVBの破綻やクレディ・スイス危機で先行きが不透明な中、世界一の時価総額を誇るサウジアラムコの強さが際立っている。
●改革半ばのサウジアラビアとサウジアラムコ
サウジアラビアは、事実上の最高権力者とも言われるムハンマド皇太子が掲げる“ビジョン2030”に向けて改革を続けている。
昨年10月には世界的なエネルギー移行を目的としたファンドを設立したり、低炭素化技術に投資したりと、脱石油依存も同時進行で進めている。
一方で、生産能力を上げるための設備投資も怠っておらず、脱石油依存を掲げつつも原油の生産を増やしている。
●先祖帰りするのか?
サウジアラビアは第二次世界大戦後、石油輸出によりオイルマネーを手に入れてきた歴史がある。そのオイルマネーの恩恵を国民が享受してきた。
石油依存から脱却し、産業を育成するという課題は何十年と言われてきたが、オイルマネーによる手厚い福利厚生や独特の政治体制などにより、国民の勤労意欲の低さが足かせになっていたという意見もある。
脱炭素の実現性が懐疑的になり始めた中で、ロシアのウクライナ侵攻による原油の高騰によって、過去最高の純利益を得ることになり、サウジアラビアもサウジアラムコも改革の後退が十分考えられる。
13日には中国の仲介によって、サウジがイランと外交正常化というニュースがあった。2019年にイランによってサウジの石油施設が攻撃されたにも関わらず、同盟国米国の反発も予想される中でのこの外交政策は世界を驚かせた。
米中の両大国をうまく利用し、存在感を示したいという戦略なのではと言う憶測もある。
オイルマネーを利用しつつ、他の分野に進出し、大国の一員になろうという野望は間違いなくあり、改革をあきらめることはないだろう。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)
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