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持久運動能力を高める腸内細菌を発見 慶応大ら
アスリート群と一般男性群の腸内B. uniformis菌数(左グラフ)と、アスリート群の腸内 B. uniformis 菌数と3,000m走行タイムの相関(右グラフ)(画像: 慶應義塾大学の発表資料より)[写真拡大]
慶応義塾大学、アサヒクオリティーアンドイノベーシ
ョンズ、青山学院大学などの研究グループは26日、腸内細菌の1種「B. uniformis(Bacteroides uniformis)」が、人間の持久運動能力を向上させることを明らかにしたと発表した。将来的にスポーツ分野や飲食料品分野への応用が期待できるという。
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■腸内フローラと運動能力の関係
人間の腸内にはさまざまな種類の細菌が約40兆個も棲みついているといわれている。このような細菌からつくられる細菌集団は、腸内フローラと呼ばれ、我々の健康や病気に大きな影響を与えている。
これまでトップアスリートの腸内フローラは、我々のそれに比べて、多様性に富んだ腸内細菌によってつくられていることは明らかになっていた。
だが個々の腸内細菌が、我々の運動能力にどのような影響をどのようなメカニズムで与えるのか、についてはよく解っていなかった。
■B. uniformisが人間の持久運動能力を向上
研究グループは、青山学院大学陸上競技部(長距離ブロック)に所属する男子学生48名と、同世代の一般男性10名の腸内フローラを比較。すると、アスリート群には、B. uniformisと呼ばれる腸内細菌が一般男性に比べて多く棲息していることが解った。なおB. uniformisは、我々の腸内フローラに一般的にみられる細菌だ。
またアスリート群25名について、B. uniformisの菌数が多いほど、3,000mの走行タイムが速いことも解った。
そこで研究グループは、運動習慣がある20~40代の一般男性10名にα-シクロデキストリンを8週間摂取してもらった後、持久運動能力を測定。するとB. uniformisの菌数が増えると共に、エクササイズバイクで10kmを漕ぐタイムが、摂取前と比較して、約10%短縮した。
これはプラセボ群(11名)と比較しても、速いタイムだった。なお、α-シクロデキストリンは、環状オリゴ糖の1種で、B. uniformisのエサになる。
さらに50分間エクササイズバイクを漕いでもらった直後の疲労感が、摂取前に比べて軽減することも確認されたという。
研究グループによれば、B. uniformisが腸内で酢酸などの短鎖脂肪酸を産生。これが肝臓でブドウ糖の産生を促すことで、持久運動能力の向上につながるとみられるという。
研究グループでは、今回の研究成果は、将来的にスポーツ分野や飲食料品分野での応用が期待できるとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)
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