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外国語のスピーキング力、「独り言学習法」で着実に伸ばす!
外国語習得には「聴く」、「読む」、「話す」、「書く」を順序正しくバランスよく鍛える必要がある。特にビジネスパーソンにとってスピーキング力は重要だ。メールやレターなら翻訳機能を活用できるが、打ち合わせやプレゼンでは相手の発言の要点を瞬時に理解し、これに対して適格な答えを返す瞬発力が必要になるからだ。
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日本人の外国語学習者は、「聴く、読む、書く」に比べると話す力が向上しないという人が圧倒的に多い。話す力をつけるには、母語話者と様々なジャンルの会話をできるだけたくさん継続的に楽しむのが1番の方法だ。しかし、仕事や人付き合いに忙殺されるビジネスパーソンにとって、語学学校に通う時間や費用はなかなか工面できないのが現状だ。
そこで今回は1人で場所を選ばず手軽に進められる独り言外国語学習法について紹介したい。
■独り言学習の原理と効果
独り言学習とは、日常の生活で見たこと考えたこと、時には願望や怒りなどを独り言のように外国語でつぶやく練習だ。1人でぶつぶつつぶやいて語学が習得できるなら、語学学校も留学も必用ないのでは?と訝る声が聞こえてきそうだが、独り言学習の効果は研究者によって検証されている。
植草学園大学の安藤則夫教授は、幼児が無意識に独り言を繰り返す行為に注目し、独り言が記憶の自動化を促進することを検証した研究を発表している(参考: 外国語学習における無意図的想起の活用 ― 記憶の自動化を促進するために)。記憶の自動化とは、考えなくても状況に合わせて即座に自動的に理解し、正しい文を形成・表現する力のことだ。
私たちは「子供は努力しなくても遊びの中で楽しみながら、あっという間に語学を習得する」と考えている。実際には、生活体験の少ない子供は成人に比べて語学習得も不得意だという。
だが子供は、他者とのコミュニケーション以外に、独り言によって創造的に言葉を反復しているので、早期に言語を習得することが分かってきた。知識は、始めは考えながら処理するが、繰り返し想起すると高速で処理できるようになる。繰り返し体験することで慣れ習熟し、容易に活用できる知識になるのだ。
この繰り返しの体験による記憶の自動化は、言語習得においては対人的交渉だけでなく、独り言でも効果があるということが判明し、外国語学習にも応用されるようになったのだ。
■独り言学習のメリット
独り言学習を行うと、単純な暗記や反復学習には期待できない下記のような効果が得られる。
・日常からフレーズを形成し行う独り言学習は、想定した状況に対処するために現れる実践的な学習なので記憶の定着が起きやすい。
・自分が考え創造した状況に応じて言葉を想定すると、知識の活用の幅が広がり使える語彙や文法が多様化する。
・状況に合わせて語彙やフレーズを発話する模擬使用となり、記憶の定着に必要な想起(テスト)を繰り返し行う状況が頭の中だけで完結する。
・自分の生活やビジネスシーンを想定した創造から出たフレーズのため、活用欲求に基づく学習の反復となり、実践に役立つ使える技能となる。
安藤教授は、学校で外国語を学ぶための独り言学習の活用法を紹介している。これによると、独り言学習を効果的に行うためには、「何としても言葉を習得して使いたい!」というモチベーションがキーとなるようだ。ビジネスで外国語を習得しようとする学習者は相対的にモチベーションが高く、独り言学習を効果的に進められるだろう。
子供も大人も言語習得に至る経緯は変わらない。繰り返し想起することで脳に習得言語の神経回路網を形成させることが大切だ。反復学習で脳の神経回路網を形成する学習法は、それなりに時間も手間もかかる。しかし、私たちが母語を容易に忘れないのと同じで、時間をかけて脳を変形させた記憶は堅固な技能となる。
次回は学習者の習得レベルに配慮した、具体的な学習の進め方について詳しく紹介したい。(記事:薄井由・記事一覧を見る)
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