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相場展望7月4日 米国株のセリングクライマックスは、これから 日本株は7月上旬、ETF分配金確保の売りに注意
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)6/30、NYダウ▲253ドル安、30,775ドル(日経新聞より抜粋)
・米5月個人消費支出(PCE)で消費の伸び鈍化が示され、景気の減速懸念が強まった。
・反面、四半期末の機関投資家の資産配分見直しに伴う資金流入期待が相場を下支えした。
・上半期(1~6月期)のNYダウの下落率▲15.3%安と、60年ぶりの大きさだった。
・個人消費支出は前月比+0.2%増と、4月の+0.6%増から減速し、市場予想+0.4%増を下回った。一方、米連邦制度理事会(FRB)が物価指標として重視するPCE物価指数は前年同月比+6.3%と、4月からは横ばいだった。「物価が高止まりし、消費の勢いは想定より弱い」との声があった。
・FRBは当面、積極的な利上げ継続する見通しで、一段と景気が減速する懸念が強い。
・キャタピラー・ボーイング・ゴールドマンSなど景気敏感の下落が目立った。
・ハイテクの多いナスダック総合は4日続落、エヌビディア・テスラなど軒並み下げた。上半期の下落率は▲29.5%安となり、過去最大となった。
・多くの機関投資家が運用目標にするSP500の上半期は▲20.6%安、1970年以来大きさ。
【前回は】相場展望6月30日 「速く乗り・速く逃げる」相場局面に注意 7月の4~6月決算発表で業績悪化懸念を注視
2)7/01、NYダウ+321ドル高、31,097ドル(日経新聞・読売新聞)
・米長期金利が約1カ月ぶりとなる2.8%弱まで大幅に低下し、金利下落時に買われやすいIT株に買い優勢となり、NYダウは反発した。
・もっとも、NYダウは下げに転じる場面もあり、不安定な展開だった。
・米経済を支えてきた個人消費が減速し、リセッション(景気後退)入りが現実味を帯びてきた。6/30に発表された5月の米個人消費支出は、実質で前月比▲0.4%減と5カ月ぶりに減った。
・飲料のコカコーラ、外食のマクドナルド、航空機のボーイングなども上昇した。
●2.米国株式:1~6月期は「さんざん」、FRBのオーバーキルで「7~12月期」もリスク
1)米国株の主要株価指数の上半期は「さんざん」
(1) NYダウ:12/31終値36,638⇒6/30終値30,775 ▲5,563安・▲15.3% (単位:ドル)
(2) SP500 :12/31終値 4,766⇒6/30終値 3,785 ▲ 981安・▲20.6%
・運用目標となるSP500の年初来下落率は▲20%を超えたため「弱気相場」入り。
(3) ナスダック:12/31終値15,644⇒6/30終値11,028 ▲4,616安・▲29.5%
・上半期の下落率としては過去最大。
(4) 半導体株:12/31終値3,946⇒6/30終値2,556 ▲1,390安・▲35.2%
・フィラデルフィア半導体株(SOX)の下落率が最も高くなっている点に今回の上昇相場の反落の中味をよく現わしている。成長への期待感で高PER(株価収益率)まで買われ過ぎた見直しがよく出ている。
・なお、SOX指数の12/27高値4,039⇒7/1時点2,458、下落率▲39.1%。
2)株価下落の要因
・物価が高止まりし、FRBは積極的な利上げ継続で、一段と景気減速の見通し。
・ロシアのウクライナ侵攻、中国のゼロコロナ対策による都市封鎖による負の影響。
・投資家がリスク資産の持ち高を減らす動きが加速した。
3)7月相場は、弱気材料に注目
・6月終盤に、機関投資家の資産配分見直し期待による資金流入で株式相場を支えたが、7月はその期待要因がない。むしろ、期待感で流入した資金の流出が株式相場に負となる可能性がある。
・4~6月の企業決算発表が7月中旬から始まるが、業績悪化懸念がある。
4)FRBによる金融引締め効果が徐々に出始めてきた。
・米国では高インフレ加速で、消費者が生活苦から支出を控える兆しが出てきた。
・そのタイミングで、FRBはインフレ退治として(1)利上げを今年3月から実施、(2)市場から過剰資金の回収を6月から始めた。そのため、米国のインフレは高止まりながらも横ばいの指標が見受けられるようになり始めている。
・結果、『金融引締め⇒消費の減退⇒景気減速⇒需要の低下⇒景気後退⇒インフレ下落』というシナリオが想定できる。
・このシナリオは始まったばかりであり、FRBの金融政策転換の鈍さという性質上、オーバーキルは避けられないだろう。 政策金利が4%超まで、FRBは利上げを継続すると予測する。また、4兆ドルから膨張したFRBの資産は9兆ドル⇒少なくとも6兆ドルまでは縮小を継続すると予想する。場合によっては、4兆ドルまでの減額もあり得る。FRBの強い引締めは始まったばかりであり、『景気後退⇒企業業績の悪化』はこれからである。
・『株価は6カ月先を見て動く』という格言があるが、7月の決算発表の業績悪化を見込み、1月初めから株価下落してきたと見る。
・市場では、1970年代のスタグフレーション時での株価反騰を想像して、今夏を大底にして下期は上昇すると指摘する向きもある。
・ただ、景気後退は始まったばかりで、インフレ加速が鈍ってきたとはいえ、スタート地点にたったばかりである。
・7~12月期企業業績は、さらに悪化すると思われる。株価がそれを織込むのはこれからではないか。大底前にセリングクライマックスが出現すると見ているが、チャート的にもまだ表れていない。
・株式市場は2020年3月を大底にした大急騰で、1~6月に大幅下落したとは言え2020年3/23から見ると全体的に「含み益」をまだ抱えている。市場はまだまだ余裕があると思われる。
・コロナ渦の大混乱のなかから超金融緩和で株価上昇し、NYダウは+18,208ドル増・+97.9増%。対して1~6月の下落は上昇幅に対して▲5,563ドル減・▲15.3%減である。つまり、上昇幅に比べて、わずか▲30.5%しか下落していない。なお、コロナ禍局面での下落率は▲37%であるのに対して、1~6月下落はまだ▲15.3%である。
・株価は、「景気減速」は織込み始めたが、『景気後退』を織込むのはこれからである。FRBの積極的な利上げは3月からであり、QT(資産縮小)は6月からと初期の段階である。
・要するに、『過剰マネー相場』の収束局面入りである。セリングクライマックスはこれから迎えることになろう。
●3.アトランタ連銀の米4~6月期の見通し▲2%減、1~3月期からさらに悪化(フィスコ)
●4.ウォール街のベテラン、今の相場動向は40年のキャリアで「最も困難」(ブルームバーグ)
1)JPモルガン・アセット・マネジメントのマイケル最高投資責任者(CIO)は、「ソフトランディング(軟着陸)よりもリセッション(景気後退)の可能性が大きいと1980年始めのスタグフレーション当時よりもさらに悪い」のではないかと話す。
2)極端な金融緩和を巻き戻す各国中央銀行の取り組みはまだ先が長く、その間にインフレ心理が一段と定着しつつあると、同氏は受け止めている。
●5.米企業業績
1)マイクロン 6~8月期見通しは消費者の支出抑制で市場予想を下回る(ブルームバーグ)
●6.ユーロ圏物価、6月は史上最大+8.6%上昇、インフレ加速で欧州中銀は利上げへ(読売新聞)
●7.ロシア関連
1)米商務長官、世界のロシア向け半導体輸出は同盟国との規制で9割減(ロイター)
・ロシアの民間航空機は今後4年間で半分から3分の2が運航停止を余儀なくされる。
2)サハリン2の事業主体を新設ロシア企業に移管、現出資者に移行求める(ブルームバーグより抜粋)
・現出資者:ガスプロム50%、シェル27.5%、三井物産12.5%、三菱商事10%
・シェルは既に撤退を発表し、中国の国営会社に譲渡協議中。
・サハリン2は、日本の液化天然ガス(LNG)需要の約9%を供給。
3)米シティ、ロシア事業売却で現地企業と協議(ロイター)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)6/30、上海総合+37高、3,398(亜州リサーチより抜粋)
・中国景気の持ち直しが意識される流れとなった。
・6月中国製造業PMIは50.2で、景況判断の分かれ目となる50を4カ月ぶりに上回る。また、非製造業PMIは54.7となり、前月の47.8から大幅改善した。
・中国の景気テコ入れ策や、経済の早期正常化に対する期待感が続いていることもプラスだ。
・業種別では、消費関連の上げが目立ち、旅行関連・金融も物色、反面、自動車が安い。
2)7/01、上海総合▲10安、3,387(亜州リサーチより抜粋)
・利益確定の売りに押される流れとなり、心理的節目の3,400付近でもみ合う展開だった。
・経済指標の改善や、新型コロナ感染収束に伴う景気回復への期待感が続いている。6月財新中国製造購買担当者(PMI)は51.7、予想50.1を上回り、4カ月ぶり50を回復。
・業種別では、ホテル・観光が下げ、交通・メディア・娯楽が安い、農薬・非鉄は上げた。
●2.中国6月財新製造業PMIは51.7で、市場予想50.2を上回る(フィスコ)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)6/30、日経平均▲411円安、26,393円(日経新聞より抜粋)
・インフレ抑制を重視する米国の積極的な金融引締めが世界景気減速の懸念につながり、日中を通して軟調に推移した。半導体関連の売りが目立ち、日経平均を押し下げた。
・パウエルFRB議長は、『より大きなリスクは、物価安定の回復に失敗することだ』と述べ、大幅な利上げが世界景気の減速を招くとの警戒感が広がった。
・5月鉱工業生産指数は前月比▲7.2%低下し、自動車・電気・情報通信・機械が下落。
・トヨタの5月世界生産台数が2カ月連続で前年を下回り、回復が見えなくなり売られた。
・ネクソン・いすゞ・IHIの下落が目立ち、大成建・鹿島・東レが上昇した。
2)7/01、日経平均▲457円安、25,935円(日経新聞より抜粋)
・前日の米個人消費支出(PCE)はインフレの高止まりと消費の伸び悩みを示す内容で、世界景気の減速懸念が高まり、自動車や半導体関連など景気敏感銘柄を中心に幅広い銘柄が売られ、下げ幅は一時▲500円を超えた。
・日銀6月全国企業短期経済観測調査(短観)は大企業・製造業の業況判断指数(DI)が対する景況感が強まった。
・米6月ISM製造業景況感指数の発表を控え、持ち高調整の売りも出やすかった。
・新四半期入りで機関投資家が運用戦略見直しのため持ち高を落としたのも下落の一因、との見方もあった。
・三井物産・三菱商事・ファストリ・東エレク・TDKが売られ、コナミ・高島屋が上げた。
●2.日本株:リズム的に今週前半は反騰が期待できるが、ETFの分配金の捻出売りに注意
1)日経平均の上半期は▲8.3%下落で、米国株に比べて堅調
・米国株:NYダウ▲15.3%安、SP500▲20.6%、ナスダック総合▲29.5%
・兜町では、米国株比でデカップリング論を指摘する声があるが、無理筋と思われる。
・日本株の堅調さは、(1)日銀の超金融緩和策の継続で低金利が続く
(2)円安の効果を享受する輸出銘柄が、日経平均の大きな構成を占めることにあると見ている。日本株は、世界の景気敏感株と言われるように、米国・世界の景気動向とリンクして動くため、デカップリングだと言い切れないのではないか。
2)直近の日経平均は、前3営業日で▲1,114円安と急落⇒今週は反騰シナリオを描く
特に、反騰期間は今週前半までか。その判断材料は、ETF分配金の捻出のための売りを7月上旬に想定するため。
3)外資系の仕掛けは、短期筋が主力のため腰が据わった攻防ではない点にも注視したい
・6月下旬の日経平均上昇の牽引役は、短期筋の外資系による先物買い仕掛けと、現物株の先導銘柄は、日経平均寄与の高い高値嵩ハイテク・円安効果が期待される輸出株であった。
・短期筋の戦術が奏功して、日経平均は+1,278円上昇。その後、短期筋の利益確定売りで日経平均は▲1,114円安。
・日経平均の6月下旬の特徴:1,000円強のアップ・ダウンで推移
上昇:6/21~28 +1,278円高 6日間
下落:6/29~7/1 ▲1,114円安 3日間
・今週は、先週末の米国株上昇を受けて、6月下旬の繰り返しで上昇から始まりそう。ただ、季節要因としてのETF分配金を確保するための売りが想定できるため注意が必要と思われる。
●3.6月日銀短観、大企業・製造業の景況感は2期連続悪化、非製造業は改善(朝日新聞より抜粋)
1)大企業・製造業:(1)資源価格高騰 (2)中国・上海などの都市封鎖の影響で悪化。
2)非製造業 :国内コロナ感染の落ち着きでサービス業を中心に回復。
3)大企業全産業設備投資:前年度比+18.6%増で、市場予想を上回る。
●4.年金運用、1~3月は▲2.2兆円の赤字、2021年は+10兆925億円の黒字(共同通信)
1)ロシア関連資産は、3月末時点で約2,200億円保有していたが、評価額をゼロにした。
●5.東京都6月コアCPIは2015年3月来の+2%台、エネルギー・食料高で(ブルームバーグより抜粋)
1)6月の東京都の生鮮食品を除くコア消費者物価指数(CPI)は前年同月比+2.1%の上昇。伸び率は5月の+1.9%から加速した。
●6.企業動向
1)キリン ミャンマーのビール会社の全株譲渡、現地会社に約224億円で(朝日新聞)
2)キューピー マヨネーズなど3~20%、10/1から値上げ。昨年以降で3回目(NHK)
3)キッコーマン みりん・たれ、4~11%、10/1から値上げ(NHK)
4)ダイドードリンコ コーヒーなど68品目、10月から最大25%値上げ(NHK)
5)国内新車販売 上半期で200万台余、過去10年で最小、半導体不足などで(NHK)
6)大手デパート5社 6月売上高、前年同月を上回る
■IV.注目銘柄(投資はご自身の責任でお願いします)
・1942 関電工 業績堅調
・3141 ウエルシア 業績堅調
・9602 東宝 業績堅調、上方修正期待
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