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日本の電力事情とEV車押しの是非
●7年ぶりに「全国規模での節電要請」
「電気不足、冬に110万世帯分」これは、日本経済新聞6月6日付1面トップ記事のタイトルである。
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6月7日には、足元の電力需給について政府が「極めて厳しい状況」であるとの見解を示し、7年ぶりに「全国規模での節電」を要請した。
電力会社には休止中の火力発電所の再稼働を求め、原子力発電所は「最大限活用する」との方針を打ち出している。そして当面は、7月1日から9月30日までの期間、「冷房温度設定は28度」とか、「使わない部屋の照明は消す」といった具合だ。
以前から電力不足の際、各家庭での対応策は、「空調(冷房や暖房)機器は、各部屋別で行わず、家族全員が1部屋に集まって過ごす」とか、「使わない部屋の照明をまめに消す」、「昼休みの事務所は一斉消灯」、各種機器の「待機電力をセーブする為に、機器のコンセントは抜く」といった涙ぐましい節約方法が推奨されている。
●EV車に使う程電力が有り余っているか
この様な状況下、「一戸建ての一家3人が、4日間暮らせる」電力で300~400km程度しか走れないというのが現状のEV車を無駄とは思わないのか。
加えて、1台のEV車の完成検査には、必ず充放電テストが必要だ。
たった1台のEV車を生産するだけで、普通の内燃機関の自動車を組み立てるのに使う電力に加えて、「一戸建ての一家3人が、4日間暮らせる」電力を無駄に使って充放電テストをさせるのだ。
小さな家電製品の待機電力まで「止めろ、コンセントを抜け」と言いながらの大きな浪費だ。
●「Zero Emission」ってホント?
N社のEV車には「Zero Emission」とのオーナメントが貼付されている。
「車載蓄電池でモーターを回して」走っている限りは、その時点では排気ガスは出さないが、電力が有り余っていても、発電所がガソリン車の燃料に相当する「充電する電気」の発電時には、しっかりCO2排出には関与しているのに。
●電力逼迫「注意報」新設と2023年1月電力需給見通し
この「電気不足、冬に110万世帯分」記事に先立ち、経済産業省は5月17日、電力需給の逼迫が予想される前日に家庭や企業に節電を促す「注意報」や、前々日時点でその可能性を伝える「準備情報」を今夏までに新設する方針を固めたとしている。
3月の地震で停止した火力発電所の復旧が遅れ、原子力発電所の再稼働が進んでいない為だ。
逼迫に備え、注意報の新設の他、事前に対象企業や電力の消費抑制量、日時を指定する「使用制限令」の準備を急ぎ、計画停電に踏み切る可能性もある。
現状は電力供給の余裕を示す予備率が翌日に3%を下回ると見込まれた場合に「電力需給逼迫警報」を出すが、今後は5%を下回りそうな場合、新たに「注意報」を出す。
●各地で予備率3%を下回る
5月26日の日経には、「冬の電力さらに逼迫 予備率 西日本、原発再開遅れ悪化」「東電管内なおマイナス」と報道されている。
安定して電力供給するために最低限必要な予備率は3%である。
2023年1月時点では、寒さが厳しい場合の予備率は、沖縄の39.1%と北海道の6.0%を除けば、東北の3.2%が辛うじてクリアしているのみだ。
中部、北陸、関西、中国、四国、九州が1.3%で、東京に至っては▲0.6%である。
しかもこの東京も、当初の▲1.7%だったものが、Jパワーが磯子火力発電所(横浜市)の補修開始時期を変更して冬場に稼動出来る様にした結果なのだ。
●EV車に補助金を出すのなら
見て来た様な電力事情の我が国において、大義名分とした「CO2排出」問題でも、製造段階でのCO2排出量から、「燃料を燃やすことによるCO2」とに代替えされる「電気」の「発電段階での総合的な排出CO2」を勘案しても、総合的に見て「EV車が必ずしも環境に優しい」とはいえず、むしろ環境に悪いとする見解も存在する。
この様な状況下にも拘わらず、「飴」として1台当たり55万円とか85万円とかの、高額な「補助金」まで支給してEV車を推進するのであれば、「鞭」として「電力逼迫時」にはEV車の使用禁止と、車載電池から家屋に供給する義務を負わせる位の方策も検討すべきだ。
日本にEV車は不向きなのは明白である。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る)
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