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サンゴに有害な日焼け止め成分、サンゴの代謝により有害物質に変化
headless 曰く、 日焼け止め剤の有効成分として使われるオキシベンゾンは無害な物質であるが、サンゴが代謝することで有害物質に変わることを示す研究成果をスタンフォード大学の研究グループが発表していう(Stanford News の記事、Ars Technica の記事、論文アブストラクト)。
オキシベンゾンはサンゴ礁を破壊する有害物質として日焼け止め製品への使用を禁ずる国や地域も出てきているが、サンゴを死滅させる仕組みについてはわかっていない。研究グループは飼育の難しいサンゴの代わりにイソギンチャクや、サンゴの中では比較的飼育の容易なクサビライシを用い、人工海水中で飼育してオキシベンゾンと疑似太陽光の影響を調査。その結果、オキシベンゾン曝露のみ、または疑似太陽光照射のみの場合はイソギンチャクやクサビライシに問題はなかったが、両方を組み合わせると 17 日以内に全滅したという。
死んだ個体の細胞内を調べたところ、代謝によりオキシベンゾンがオキシベンゾン-グルコシドに変わっていることが判明。この物質は強い光酸化作用を持っており、紫外線が細胞の損傷を引き起こしたと考えられる。一方、サンゴやイソギンチャクの細胞内に共生する褐虫藻はこの有害物質を閉じ込めて細胞への影響を防いでおり、海水温上昇などのストレスにより褐虫藻を放出した白化サンゴはオキシベンゾンによる死滅リスクが高まることも判明した。
日焼け止め製品ではオキシベンゾンと似た構造の化学物質が他にも使われており、同様の光毒性を持つ代謝物が生成される可能性もある。今回の研究成果はサンゴに安全な日焼け止め有効成分を選ぶ際の目安となるだろう。また、サンゴに安全として市販されている日焼け止め製品ではオキシベンゾンのような有機化合物ではなく、酸化亜鉛や酸化チタンなどが有効成分として用いられている。ただし、これらの物質のサンゴに対する安全性も明確ではないため、研究グループでは今後の研究を計画しているとのことだ。
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※この記事はスラドから提供を受けて配信しています。
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