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ダスキン、「ONE DUSKIN」最終フェーズに向けて新中期経営方針を発表 持続的成長により売上高1,830億円を目指す
連結業績ハイライト
山村輝治氏(以下、山村):みなさま、こんにちは。社長の山村でございます。本来、第3四半期は決算説明会を行っておりませんが、2月9日に新「中期経営方針2022」を開示したため、その内容について本日ご説明いたします。2022年3月期第3四半期決算について簡単にお伝えした後、中期経営方針についてご説明いたします。
連結業績ハイライトについてです。2022年3月期第3四半期の連結売上高は、前年同期比75億5,800万円、6.5パーセント増加し、1,232億9,400万円となりました。前々期と比較しても、16億2,600万円、1.3パーセント増加しています。すべてのセグメントで増収となりました。
連結営業利益は、前年同期比42億2,500万円、69.4パーセント増加し、103億1,000万円となりました。経費の増加はあったものの、売上増による粗利の増加に加え、原価率が大幅に改善したことにより増益となりました。こちらも前々期と比較して、39億2,000万円、61.4パーセント増加しています。
連結経常利益は44億1,900万円、57.2パーセント増加し、121億4,400万円となりました。
親会社株主に帰属する四半期純利益は44億7,800万円、115.8パーセント増加し、83億4,300万円となりました。前期は、加盟店やその従業員に対し、新型コロナウイルス感染症に係る見舞金を支払いましたが、当期はその費用がないため、大きく増益となったものです。こちらも同様、前々期と比較しても、28億500万円、50.7パーセント増加しています。
売上高の状況
セグメントごとの売上高です。訪販グループは15億5,400万円、1.9パーセント増加し、820億8,600万円となりました。主力のクリーンサービス事業は、コロナ禍の影響で減収となりましたが、注力しているケアサービス事業やレントオール事業、ヘルスレント事業が増収となったため、全体では増収となりました。
フードグループについては、57億8,100万円、21.9パーセント増加し、321億5,900万円となりました。「ミスタードーナツ」は、テイクアウト需要の拡大や「misdo meets」の好調等で売上高が前年同期を大きく上回り、さらに稼働店舗数も増加に転じ、増収となりました。
その他については、1億6,600万円、1.5パーセント増加し、114億800万円となりました。ダスキン香港が、前期のマスク調達の影響で減収となりましたが、国内の連結子会社であるダスキンヘルスケア、ダスキン共益が増収となった結果、全体では増収となりました。
営業利益の状況
セグメントごとの営業利益です。訪販グループは、11億6,700万円、13.2パーセント増加し、99億8,500万円となりました。人件費やシステム費用などの経費の増加はあったものの、売上増加に伴う粗利の増加や原価率の改善により、増益となりました。
フードグループについては、26億8,500万円、491.9パーセント増加し、32億3,100万円となりました。こちらも経費の増加はありましたが、大きく増収となったこと、さらに原価率が改善したことにより粗利が増加したため、増益となりました。
その他については、2億7,000万円、64.9パーセント増加し、6億8,500万円となりました。ダスキン香港のマスク調達等が減少したため、原価率が改善し増益となりました。
業績予想
業績予想についてです。通期では売上高1,605億円、営業利益84億円を見込んでおり、昨年の10月28日の開示からは変更していません。
第4四半期は、フードグループは前期並みである一方、訪販グループが前期をやや下回る見込みであり、全体でも減収と予測しています。
営業利益については、訪販グループ・フードグループともに昨年並みの販売促進を行う計画で、加えて、社内システムにおいてIE(インターネットエクスプローラー)のサポート切れに対応するための経費を使用することで、前年同期を下回ると予想しています。以上が第3四半期決算のご説明になります。
経営理念と長期戦略
ここからは、先日開示した当社の「新中期経営方針」についてご説明します。本来は、2021年からスタートする予定でしたが、この2年間、現在に至るまで新型コロナウイルスの感染拡大がなかなか収まらないということで、昨年1年間は少し「踊り場」とし、来期の2022年度から最終の中期に取り組むかたちにしました。
当社ダスキンにおいては、「祈りの経営」という土台となる経営理念がありますが、これは創業者の鈴木清一の思いです。変えてはいけない経営理念の上に「世界一ひとにやさしいダスキン」という経営ビジョンを掲げ、経営ビジョンを実現するために、長期戦略「ONE DUSKIN」という具体的な道しるべを掲げて事業活動を行っています。
ダスキンの目指す姿
スライドはダスキンの目指す姿を記載しています。「世界一ひとにやさしいダスキン」を目指して掲げた長期戦略の「ONE DUSKIN」は、スタートしてから7年が経過し、今も着実に歩みを進めています。
すべての事業が1つになって、ホスピタリティあふれる対応ができる企業へ進化するため、創業者が残した理念を共有するフランチャイズチェーンを続けていきます。そして、地域で信頼を積み重ねた地域No.1のフランチャイズ加盟店であり続けていきたいと考えています。
そして、「ALL FOR ONE」は「すべての事業・サービスが一つとなってご要望にお応えする」ということで、ダスキングループが一丸となって「世界一ひとにやさしいひとの集団であるダスキン」を目指していかなければならないと思っています。
ONE DUSKINの最終(第3)フェーズに向けて
新たな「中期経営方針2022」は、期間を2023年3月期から2025年3月期までの3年間と設定しました。この3年間を長期戦略「ONE DUSKIN」の第3フェーズと定め、第1フェーズ、第2フェーズで作り上げた基盤をさらに発展させ、「ONE DUSKIN」実現の総仕上げとして取り組んでいきたいと思っています。
外部環境認識
スライドは「外部環境認識」について図を記載しています。「中期経営方針2022」の策定にあたり、社会動向、技術動向、地球環境への意識など、事業環境は今までの延長線上にはない、非連続で激しい変化にさらされています。
当社を取り巻く外部環境
その中でも、当社の事業運営に影響を及ぼす主要な外部環境についてお伝えします。新型コロナウイルス感染拡大により、社会環境は大きく変化しました。特に、消費者や生活者において、抗菌・抗ウイルスなど衛生意識は格段に高まりました。
加えて、リモートワーク・在宅勤務が普及し、低下傾向にあった日中の在宅率が上昇し、さらにはフードデリバリー需要が急速に高まり、定着しました。デリバリーから始まったデジタル化の動きは、店舗にも広がりを見せています。
また、近年、テクノロジーは急速に進化しており、カメラ、センサー技術の向上に加え、外食店舗や小売店舗における「混雑状況の見える化」への取り組みが加速しています。5Gの普及による自動運転の技術も向上し、工場内の搬送において自動運転技術の適用も進んでいます。
SDGsの取り組みは世界的に加速し、2050年のカーボンニュートラルに向けて、脱炭素や循環型社会の実現への動きが加速し、気候変動への対応が企業の責任であるとの認識が進んでいます。環境保全のみならず、気候変動リスクへの対応力も必要となっていきます。
中期経営方針策定にあたって
このような外部環境の中、前中期経営方針において築き上げてきたお客さまとの信頼関係や衛生管理ノウハウの提供、高まる役務提供ニーズに応えるべく、加盟店数の増加、ブランドスローガンである「いいことあるぞ Mister Donut」の実現などをさらに推進していきます。
それに加え、これまでにない事業環境の変化に対応するため、既存事業ではデジタル化の推進をより一層高め、「情報と流通の改革」と、訪販グループでは「衛生」、フードグループでは「多様なニーズへの対応」をキーワードとして事業を強化していきます。
さらに、新しい成長機会への投資を積極的に行い、事業ポートフォリオを変革することによって、事業環境変化に対応できる企業体質へと進化していきます。
基本方針
「中期経営方針2022」の基本方針で掲げているとおり、事業環境の変化に対応し、社会課題の解決に向けて、事業ポートフォリオを変革することで、「道と経済の合一」を目指していきます。
当社は創業以来、「道と経済の合一」を経営の根幹として企業活動を行っています。「道」とは「社会価値向上」、つまり企業として社会から求められる期待に喜びをもって応えることであり、「経済」とは「経済価値向上」、つまり社会のお役に立ちながら、持続的な成長を実現させることを意味します。
言い換えると、「道と経済の合一」は「社会価値向上」と「経済価値向上」の双方の実現を目指すことであり、すなわち「企業価値向上」を目指すことだと考えています。
連結数値予測と目標
「中期経営方針2022」の最終年度である2025年3月期の連結目標数値です。クリーンサービス事業の再成長、ミスタードーナツ事業の持続的成長により、売上高は1,830億円、営業利益は120億円、当期純利益は100億円、ROEは6パーセント以上を目指します。
基本方針に基づく3つのテーマ①
先ほどの目標数値を達成するために、基本方針に基づいた3つのテーマ「事業ポートフォリオの変革」「経営基盤の構築」「社会との共生」を設定して実行します。
基本方針に基づく3つのテーマ②
テーマ1の「事業ポートフォリオの変革」では、事業環境の変化に対応し、社会課題解決に向けた事業ポートフォリオへの変革を行います。そのために既存事業の変革・発展を目指し、新商品・サービスにより事業領域の拡大とバリューチェーン強化を図るとともに、新しい成長機会への投資を進め、今後、取り組むべき社会課題の解決への貢献により社会的価値創造を実現します。
テーマ2の「経営基盤の構築」では、人材・技術などの経営資本、組織・事業などの管理体制の強化を進めることで、企業価値向上のための経営基盤の強化を行います。
テーマ3の「社会との共生」では、サステナブルな社会と経営の実現に向けた取り組みを行います。持続可能な社会づくりへの貢献と、社会に応える企業統治体制の構築を目指します。
テーマ1 |事業ポートフォリオの変革①
各テーマについてご説明します。テーマ1の「事業ポートフォリオの変革」について、既存事業はフランチャイズチェーン加盟店と共に発展していくことを基本としています。その中で既存事業の変革と発展のための取り組みを行います。しっかりとした信頼関係で本部と加盟店が結ばれていることを基本と考え、商品・サービス開発、人材開発、各種政策推進を当社と加盟店が共に、より一層強化します。
そして、事業拡大では新商品・サービスにより、既存のサービスや技術などの強みを活かせる既存周辺の事業領域の拡大を目指します。さらに、各事業が収益性を向上するためにM&Aなどにより必要な部分を補い、バリューチェーンの強化を目指します。これらの事業拡大に加え、事業ポートフォリオ分析・検討により選択と集中を進め、成長事業への投資を振り向けて成長スピードを加速させます。
訪販グループでは「衛生」「ワークライフマネジメント」「高齢者サポート」の3つの領域に注力し、お客さまの暮らしや働き方に寄り添い、暮らしの快適さを追求します。フードグループでは、おいしさの追求、衛生管理を意識した店舗づくりや利用しやすい仕組みでお客さま満足度の向上を図ります。
テーマ1 |事業ポートフォリオの変革②
各グループの詳細をご説明します。暮らしや事業環境における「調律業」を目指す訪販グループは、「衛生領域」を最重要領域として展開します。そして、「衛生領域」に加え、働く女性とその家族の暮らしをサポートすることで時間の創出と充実を図る「ワークライフマネジメント領域」と、前期高齢者へのアプローチや介護保険対象外市場のサービスメニューを拡大し「高齢者サポート領域」にも注力します。
最重要領域として展開している「衛生領域」では、「お掃除のダスキン」から「衛生のダスキン」へ進化することを目指し、クリーンサービス事業のタグラインを「喜びのタネをまこう」から「衛生環境を整える」へ変更し認知度向上を図りました。
今後は市場ニーズの高い衛生機能を強化した高付加価値商品の開発と、情報と流通の改革による、お客さまへの接点の強化を目指します。
スライドの巻末にある参考資料のように、訪販グループの2025年3月期は当期と比べて12パーセントの成長を目指しています。目標とする売上成長の内訳として、約4割を家庭市場における衛生商品の拡大、CX戦略におけるWeb受注の増加、家庭用営業専任組織の構築としました。
家庭市場の営業専任組織の構築では、直営店・関係会社から展開して加盟店へ拡大することで、Web受注の増加と合わせて約1.5倍の新規のお客さまづくりが可能な営業体制を目指します。また、目標とする売上成長の3割ほどを事業所市場における衛生商品の拡大などで目指し、さらに2割ほどを、拠点戦略を含めたケアサービスおよびシニア事業で実現を目指します。
テーマ1 |事業ポートフォリオの変革③
フードグループでは、誰もがいつでも「しあわせな時間」を過ごせるようなショップを目指し、楽しさ・おいしさの提供を追求します。中心事業であるミスタードーナツは、「いいことあるぞミスタードーナツ」をより多くのお客さまに届けるため、新しいマーケットの獲得、定番商品などの基礎売上高の向上に取り組みます。
「新業態開発」では、既存のブランドと異なる新たなブランド構築を目指し、さまざまな立地・客層・利用動機にお応えする新たな業種・業態の開発を目指します。また、市場における競争優位性を図るために、既存事業の主要原材料等では加工・流通の内製化を図り、「既存バリューチェーンの強化」を目指します。
そして、「マーチャンダイジング」においては、ブランドを活用した新商品・販売機会を創出します。ミスタードーナツ事業で減少傾向にあった店舗数も増加に転じており、今後3年間でさらに155店舗の出店を計画し、既存店の1割増加にあたる1,080店まで拡大することを目指します。
開発戦略においては、「misdo meets」と期間限定商品のメニュー開発と販売を拡大します。このジャンルでは、お客さま売上を現状の156億円から3年後には193億円とし、フードグループ全体の売上は当期と比べて20パーセントの成長を目指します。また、デリバリーサービス導入店舗を増やし、ピックアップロッカーの導入、ネットオーダーへの対応を進め、販売機会の拡大を図ります。
テーマ1 |事業ポートフォリオの変革④
ここからはテーマ1の「事業ポートフォリオの変革」における、新しい成長機会への投資をご説明します。新しい成長の機会として、M&Aを中心に200億円規模の投資を行います。ただし、投資案件によってはそれ以上の金額も検討します。目指す領域としては、既存事業と将来的にシナジーが発揮できるところで、例えば、地球環境の保全や少子高齢化対応、地方創生などの社会課題に対応した領域で、新たな価値創造を目指します。
また、お客さまのライフステージにあわせて、生涯にわたり当社との関係性を維持するための事業領域も拡大します。そのための手法として、M&Aだけでなく、ベンチャー出資、R&D投資、産学連携などを活用して積極的な投資を行います。
海外戦略については現在の展開国の成長はもちろんのこと、市場環境を含めた各国の情勢を見極めた上でアジアの未展開国などへの進出を検討・実行します。
テーマ2 |経営基盤の構築①
2つ目のテーマである「経営基盤の構築」では、事業ポートフォリオ変革に必要な人材の育成・確保し、ダイバーシティマネジメント、インクルージョンの推進などの人的資本経営に取り組みます。
また、衛生に関する自社技術力強化、オープンイノベーション推進のためのR&D強化、そして、シェアードサービスセンターの運用・効率化により、顧客接点部門や事業開発部門への人材活用を加速させ、全社・事業戦略の実現に最適な組織と業務体制の構築を図ります。加えて、改訂コーポレートガバナンス・コードの趣旨に鑑み、プライム市場に相応しいガバナンス体制構築に資する取り組みも実施します。
テーマ2 |経営基盤の構築②
特にデジタル化が加速している現状を踏まえ、当社におけるDXは顧客体験をデジタルの力でよりよいものにすることであり、お客さまとの直接対面によるホスピタリティを持った流通機能と融合することで、さらに有益な取り組みと定義し、より一層、情報と流通の改革を強化します。
「中期経営方針2022」においては、特にデジタル技術を活用した効率化によるサステナブルなサプライチェーン構築を目指し、レンタル商品へのRFID(電子タグ)導入と連動した洗浄工場のスマートファクトリー化を進めます。また、クラウドシフト専任組織の設置によるDX推進基盤づくりで、デジタル最適化からデジタル変革への進化を目指します。
テーマ3 |社会との共生
3つ目のテーマである「社会との共生」についてですが、加盟店を含むダスキングループ全体で、サステナブルな社会の実現を目指します。社会における持続可能性への貢献として、地域との共存共栄を図り、地域社会への参画と貢献を行いながら、安全・安心な商品・サービスを提供します。
また、地球環境保全への取り組みとしては、循環型レンタルシステムの追求・3Rに加え、リニューアブル推進・CO2排出削減・再エネルギー利用の拡大・TCFD対応などを進めていきます。
サステナブルな経営の実践のための取り組みについてですが、環境負荷を低減するための投資や、国内外からの原材料及び資材の安定調達への取り組みを行うとともに、大規模災害発生時における事業継続のための対策を強化していきます。
財務方針・資本政策①
最後に財務方針についてです。事業ポートフォリオの再構築に向け、「新しい成長機会」に490億円を投資します。前中期経営計画では、効率化を含む成長投資は結果として約90億円に終わりました。しかし、次期3ヶ年においてはそのことも踏まえ、約5倍の490億円規模の投資を考えています。
営業キャッシュフローを創出し、金融資産の圧縮と必要に応じた借入などもあわせて、さらなる成長投資へ振り向けます。
売上拡大投資としては、M&Aや他企業への出資において200億円規模の投資枠を設定し、成長のための積極的な投資を行います。
また、スマートファクトリー化やRFIDの導入など、効率化のための投資も積極的に取り組んでいきます。また、戦略の成果と財務健全性とのバランスをとりながら、自社株買いも機動的に実施し、状況に合わせて総還元性向の向上を図っていきます。
財務方針・資本政策②
株主価値向上に向けて、この中期で「資本構成」を見直し、成長の原資となる事業資産の拡大を行っています。
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