レナード彗星、長い尾を引く雄姿がとらえられる その近況は

2021年12月29日 16:44

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 12月17日に宵の明星のすぐそばを通過したレナード彗星は、現在けんびきょう座にある。スペイン領カナリア諸島で26日に撮影された写真によれば、尾の長さが視角にして36度にも及んでいるという。だが残念ながら暗い(3.9等星)ため、肉眼ではその存在を確認することはできないかもしれない。

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 カナリア諸島では、口径50ミリ、倍率10倍の双眼鏡でも、6度の長さで尾を引く姿が確認できたという。双眼鏡さえあれば、日本からでも、年末年始の期間は観望に好適だろう。

 彗星は、明るさの表示上は恒星と同じ等級であっても、恒星並みにその存在を確認することは難しい。古い話で恐縮ながら、ハレー彗星は1910年の接近時には世界中の人間を恐怖にさらし、人類滅亡の危機とまで騒がれたが、1986年の接近時には4等星級の明るさにまでなったものの、当時の人々のほとんどは肉眼でその雄姿を見ることすらかなわなかった。

 いっぽうレナード彗星で尾が2つに切断されるというニュースが、Spaceweather.comで12月28日に報じられている。太陽風の影響でレナード彗星の尾が分断されたのではないかと、科学者たちは推定しており、少なくともこの数週間でこの彗星は太陽風の直撃を2度経験しているという。

 太陽風は、ウィキペディアによれば”太陽から吹き出す極めて高温で電離した粒子(プラズマ)のことである”とされている。実は太陽系内の宇宙空間は全くの真空ではなく、太陽風を起源とするプラズマ粒子が多数存在している。そして時々太陽で発生するプラズマ爆発現象によって、プラズマの突風が吹き抜けているのだ。レナード彗星はその突風に2度もさらされたというわけだ。

 観望の最適期はすでに過ぎたとはいえ、レナード彗星は2022年1月3日に0.61天文単位まで太陽に接近する。その後太陽系を去って行き、永遠に太陽系には戻ってこないため、2度と人類はその雄姿を見ることはできない。この一期一会の宇宙からの珍客から、我々人類はまだまだ目が離せそうにない。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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