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日総工産、総合人材サービス事業等を展開 コロナ影響を受けるも回復基調にあり、さらなる成長のステージへ
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日総グループについて
清水竜一氏(以下、清水):みなさま、こんにちは。今日は寒いですが、ネット上で説明を聞いているみなさまは室内の方が多いと思いますので、気にはならないでしょう。しばらくお付き合いいただければと思います。よろしくお願いします。
それではただ今から、当社グループの概要、成長戦略についてご説明します。まず、日総グループの概要についてです。当社グループは、総合人材サービス事業とその他の事業の2つのセグメントに分かれて仕事をしています。
その他の事業は、介護施設6施設に加えて、在宅介護やデイサービスなどを行っている介護事業になります。また、総合人材サービス事業の中でも特に中核になるのは、日総工産という製造系の人材サービスをメインにしている会社で、全体の売上の約90パーセントを構成しています。
プロフィール
清水:プロフィールです。特にこの中計で、我々が掲げているミッションが「働く機会と希望を創出する」です。人材会社ですので、働く機会を創出するのは当然なのですが、やはり働く方々が将来に向けて夢や希望を持てるような会社を目指していこうということです。そして、その事業を通して「高い成長力の企業グループに変革する」という考え方を持っています。
当社は2018年3月に東京証券取引所第一部市場に上場し、4年目です。今までは、上場企業にふさわしい、いろいろな基準を満たす力を持つということで必死に走ってきたのですが、ここからは上場のメリットを最大限に活かしていきたいと考えています。来年はプライム市場に上場する予定であることも、併せてお伝えしたいと思います。
事業概要
清水:先ほどお話しした、日総工産という中核の会社が行っている事業について、概要をご説明します。メインは大手自動車メーカーや電子部品メーカーを中心とした製造派遣事業で、こちらが全体の売上の約80パーセントです。
残りの20パーセント弱が、製造工程や検査工程を一括で請け負う製造請負事業で、その他にも職業紹介事業やコンサルティング事業などを展開しています。
連結業績推移
清水:連結業績推移です。昨年度はコロナ禍の影響を大きく受け、減収減益となったのですが、今期は増収減益となりました。なぜこの増収減益という状況になったかについては、後ほど詳しくご説明します。今、期末の着地についてはこのようなかたちで開示しているということです。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):1つおうかがいしたいのですが、御社の主力事業である製造派遣事業と製造請負事業の売上の割合と、利益率はどちらが高いのかを教えてください。
清水:日総工産でご説明すると、全体の46パーセントが自動車関連の仕事になります。自動車のボディメーカー、あるいは周辺のサプライヤー、部品メーカー含めて46パーセントです。3分の1強、すなわち36パーセント程度が半導体を含めた電子部品の売上になっています。全体の取引先が620社を超えていますので、利益率や利益額については、「自動車だから」「電子部品だから」ということが一概に言えるわけではないとお伝えしたいと考えています。
坂本:中身で違うということですね。
単体業績推移
清水:スライドは日総工産の売上高・営業利益推移です。昨年はコロナ禍の影響で、日総工産を中心に売上が非常に下がり、利益も下がったという状態でした。
在籍(実際に働いている人数)推移(単体)
清水:四半期ごとの在籍数、すなわち働いている方々の人数の推移になります。ご覧のとおり、昨年度はコロナ禍の影響で工場の操業が停止しました。特に自動車においては、海外でのロックダウンの影響で個人の購買、つまりモノを買う行動が大きく制限を受けました。その影響から工場の操業も低水準で推移したことによって、結果として1,600人を超える仲間が1年間で離職していきました。
そこから今年度に入って第1四半期でプラス710名、第2四半期でプラス369名と順調に推移し、足元を見ると、すでに上場後のピークを超える数の方々が仲間として働いている状況になっています。
基本戦略
清水:従来の既存事業の基本戦略になります。2つのキーワードの中で、1つは人事戦略における技能社員です。これはどのような方を指しているかというと、当社の事業領域で働いている方々は、半数以上が契約社員です。その中で、スキルの高い方々、あるいは長期的にこの分野で自分のスキルを上げ、生活を立てていこうという方々を技能社員というかたちで社員登用しています。
後ほどご説明しますが、アカウント企業という国際競争力の非常に高い4グループがあります。そちらで質の高い技能社員の方々が高スキルを提供しながら取引シェアを拡大し、それぞれの受注単価を上げることによって、お客さまにも満足していただき、働く方にも満足していただくというのが従来の基本戦略です。
取引先について
清水:先ほどお話しした取引先の状況になります。取引先は大手メーカーを中心に632社で、主な業種は自動車関連と電子デバイスです。アカウント企業というのが非常に大きなポイントになるのですが、日本の最大手の自動車メーカーのグループやコンデンサの世界1位のシェアを持っている会社、複合機を作っている精密機器メーカー、総合電機メーカーなどの世界的なグループです。4グループで50社と取引があります。
その売上構造比率は、スライドにお示しするとおり46.8パーセント、すなわち半数弱というレベルになっています。なぜこのアカウント企業と取引をしているかというと、1つは国際競争力のある、これからまだまだ伸び盛りの会社だということがあります。
そして、50年の歴史の中での長いお付き合いによる非常に強固な人的なパイプの中から、そのメーカーが中長期的に人事戦略をどのようにしたいのか、どのような人材が必要なのかを踏まえ、我々が育成しながら派遣したり、配属したりという位置付けになっているのが、アカウント企業になります。
この632社の中には、過去に一度はアカウント企業だったものの、成長が少し鈍化している会社や、これからアカウント企業というかたちで我々とタッグをしっかり組んで生産を伸ばし、成長していく会社も含まれているということをお伝えしたいと思います。
坂本:アカウント企業は伸び盛りで長い付き合いもあり、人事戦略まで把握した上で人材を派遣、登用されているというお話でした。自動車と電子デバイスという2つのセグメントに強いということですが、なぜでしょうか?
清水:「結果としてそうなった」ということではなく、日本の製造業の中でもとりわけ自動車と電子部品は、国際的にも非常に強い業種です。そこで働く方々に求められるスキルとしては、非常に高いレベルが要求されます。
反面、受注できる単価も高いですし、成長の余地が大きいということです。この2つの領域に対して必要な人材をどうすれば育成できるのか、どうすればその方々が現場で有効に働けるのかということを長年積み上げてきて、今この2つの分野が主力になっているとご理解いただきたいと思います。
技能社員・エンジニアについて
清水:技能社員は人事戦略上の1つの考え方なのですが、スライドのグラフのとおり、昨年度は成長が少し鈍化したものの、今年になってまた増えています。
もう1つ、今当社が抱えている中期経営計画の中で、技能社員よりもさらにスキルの高いエンジニアの方々をしっかり育成していこう、そしてエンジニアと技能社員をもって、お客さまのニーズあるいは満足度にしっかり応えていこうということで、今年度からエンジニアと技能社員を明確に分解しました。
エンジニアはさらに初級からハイエンドに向けた育成、技能社員は技能をさらに磨いていくというように、役割分担を少し変えてきています。このことは、中期経営計画の中で、従来の既存事業に加えて、新たな成長エンジンとしてエンジニアをどう育成し、どう増やしていくのかという、この後の説明とつながっています。
坂本:スライドのグラフで緑の部分が「エンジニア」となっています。2021年3月期末までは、これが一緒だったということですか?
清水:おっしゃるとおりです。
坂本:それが切り出されて、エンジニアとなるということですか?
清水:そのとおりです。
坂本:もう1点、技能社員とエンジニアの勤続年数の平均を教えてください。この勤続年数は最近伸びているのかも含めて教えていただきたいと思います。
清水:基本的には、技能社員の勤続年数の平均は約4年、エンジニアは3.6年です。この方々が定着し、1年経てば1年ずつ勤続年数が長くなるのですが、それでは成長していないという証になります。
新しく、契約社員の中から技能社員やエンジニアに登用する方々は増えていきます。つまり、今いる方々が勤続年数を1年ずつ積み上げていきながら、新たな方々が増えてくる中で、そのバランスで勤続年数は計算されます。これからスピードを上げてこの2つの領域の方々を育成するため、おそらく伸びるというよりはむしろ少し短くなるかもしれません。
坂本:短くなるほうが、実はビジネスとして成功しているかもしれないということですね。
一人当たり売上高(単体)
清水:働いている方々の1ヶ月当たりの売上高の推移を表したグラフになります。このグラフをご覧いただくと非常によくわかるのですが、今年度に入り、昨年度の下期と比べ全体的に少し鈍化していることが見受けられると思います。
これはみなさまもご承知のとおり、半導体は今や自動車にとって非常に重要な部品で、半導体の供給不足の問題によって、結果的にフル生産に入れず、休日出勤や残業が減っています。
あるいは、この第2四半期には東南アジアのロックダウンがありました。特に大きいのは、ベトナムから来るはずだったワイヤーハーネスという、いろいろな電装品をつないだりする電線の塊のようなものですが、これの供給がストップしました。
結果的に代替生産ができずに、大きく生産が低下したと言いますか、工場によっては月の半分しか稼働しなかったという自動車メーカーが出てきたりしたということで、下がっています。
しかしながら、全体として受注している単価は、作るに合わせて少しずつ上昇しています。そのため、下がっている要因としては、稼働時間がフルにならず短くなったことが大きいということで、ご覧いただければと思います。
人材育成(テクニカル強化)
清水:スライドは、先ほどの技能社員とエンジニアをどう育成するかというカリキュラムについてご説明した内容になります。技能社員は「製造現場で働くスキルの高い方々」とお伝えしたとおり、入り口からしっかりと技能を磨きながら現場に行き、さらにその技能をOJTで育成して伸ばしていきます。
さらに次のステップに行くためには、もう一度オフライン、つまりラインから外れていただいて、当社のトレーニングセンターで技能を磨いて高めていくというのが技能社員の考え方です。
一方、エンジニアはスライドにある写真のとおりです。実は、これは今、半導体の製造で使われている製造装置になります。そのような製造装置を分解したり組み立てたりしながら、当社では「装置エンジニア」呼んでいるのですが、設備の保全ができるような方々を育成している風景です。
一般的には座学が多いのですが、我々の特色として、このような実際に今稼働している機械を使いながら、実機を通して基礎的なトレーニングをして、エンジニアとして配属し育成していくというのが強みになっています。
坂本:このトレーニングセンターとテクニカルセンターで、派遣される方に作業を教えているということでしょうか? どこに配属されてもよいように汎用的な知識を学ぶのか、あるいは「ここに派遣しますので、そのための技術をここで学んでください」というものなのかを教えていただけたらと思います。
清水:スライドのトレーニングセンターの写真はたまたま、自動車の組み付けラインに配属される、インパクトレンチという自動のネジ回しのようなものです。
トレーニングセンターというのは、ある自動車メーカー、ある電子部品のメーカーに配属することを目処に、そこでスムーズに作業ができるような、少し「狙い撃ち」のトレーニングをするものです。そのため、工場のすぐ側に比較的小規模で展開しています。
一方、テクニカルセンターというのは、この後に写真を少しお見せしますが、非常に規模の大きいところです。メインは自動車系と電子部品系の教育ですが、そのような少し汎用性の高い方々を育成するのがテクニカルセンターです。
坂本:これが全国にあるわけですね。
研修施設
清水:テクニカルセンターとトレーニングセンターですが、例えば宮城にある日総テクニカルセンター東日本の写真を見ると「どこかで見たことのある懐かしい写真だな」と思うと思います。
飯村美樹氏(以下、飯村):学校ですか?
清水:そのとおりです。実は、平成に新しく作った中学校だったのですが、市町村合併などで廃校になったところをお借りしました。そこを改造してクリーンルームやトレーニングセンターを作っています。
コストを抑えながら、できるだけ上手に人を育成する仕組みとして、このような廃校を活かしたり、あるいはもともと工場として使っていて廃工場となっているところを改修して使ったりという工夫を、当社として行っているのがテクニカルセンターです。
飯村:「学校をテクニカルセンターに」だなんて、うってつけですね。
坂本:勉強するところですものね。
清水:まさに若い方々が勉強していたところに対して、ここからは社会人になって自分が新しいことに挑戦するための学びの場ということで、非常に親和性が高いのではないかと思っています。
坂本:これは通うかたちですか? 宿泊施設のようなものが付いているのですか?
清水:基本的には宿泊施設を併設しているケースもありますし、周辺にそのような宿舎を借りて教育するケースもあります。
坂本:ある程度の期間を学ばれるのですか?
清水:一番短い研修でも、通常5営業日です。
坂本:1週間ですね。それでは、長いものはけっこう長いのですね。
清水:長い方々は、ここにずっといるわけではありませんが、最大で6ヶ月のカリキュラムがあります。
坂本:そこまで長いとかなり大変ですね。
清水:廃校になっているくらいですので少し地方が多く、住宅を手当しなければ長期的な研修はうまくできないと言えると思います。
離職率(全体・技能社員・エンジニア)
清水:人材会社の特色ですが、離職率という考え方があります。この離職率をいかに低減させるかが、せっかく縁があって入ってきていただいた働く方にとっても、非常に意味のあることです。
お客さまにとっても、せっかく仕事を教えて、これから戦力になってもらおうという前に辞めてしまうことは、大変な機会損失、あるいは労力の無駄になります。そのため、これは人材サービスの非常に重要な指標になっています。
スライドに「5.5」から始まっている折れ線グラフがあります。これはいったいどんな単位かというと、実際に現場で就業している数の5.5パーセントの方は、1ヶ月で辞めるということです。
「離職率が大事だと言っていて、こんなに高いのか」と、少しびっくりすると思うのですが、この製造分野では流動性の比較的高い方々が働いているため、人材サービスの中では離職率が非常に高い傾向があると思います。一般的な同業他社では、1ヶ月に8パーセントから10パーセントが離職すると言われています。
当社の離職率はもともと、この業界の中では非常に低くなっています。そのためのいろいろなポイントをスライドに書いており、ご覧のような手を打っています。そうは言っても、5パーセントも辞めてしまえば、1万人いれば500人単位が1ヶ月で辞めてしまうということです。これは非常にロスが多いため、いろいろな手を打ちながら、これを下げていこうと考えています。
今年度の目標としては「4」を切っていこうという計画を立てており、第1四半期、第2四半期の推移は計画を下回っている状況ではありました。しかし、やはりまだまだ改善の余地があるのではないかということで、いろいろな手を打って、短期離職を防止し、長く働くことのインセンティブを得られるようにすることが非常に大事です。
これは何を言っているかというと、長く働いて、自分のスキルを上げることによって、処遇が改善されていく、給料が上がっていくという仕組みを作るのが重要だということです。今までは、派遣で長く働いても給料は変わらないだろうという印象があったと思います。
飯村:そうですよね。
清水:我々としてはそこに真正面から向き合っていこうということで、先ほどのような育成の仕組みを作りや投資をします。立場のより安定した技能社員やエンジニアというかたちに、本人たちに転用していただいて、どんどん育成しながら伸ばしていくことに挑戦中だとご理解いただければと思います。
採用活動
清水:採用活動の件ですが、ここで映像が入ります。
清水:この10月から、当社の自社サイト「工場求人ナビ」のプロモーションとして、黒島結菜さんが出演するCMを打ち始めました。このCMを打つ目的なのですが、実は当社はこの業界の中でも、自社サイトからの流入量が非常に大きいという特色を持っています。
毎月800名から900名くらいを採用しているのですが、そのうちの約60パーセントが「工場求人ナビ」から流入してきます。今、経済がコロナ禍から少しずつ回復していく中で、需給のバランスがだんだんと変わってきますし、製造向けの人材は慢性的に不足しています。そのため、この自社サイトの効率をもう一段上げていこうということで、この10月から3月まで、黒島結菜さまを登用したCMを打っているということです。
この効果としては、実は自社サイトに流入する方々のボリュームが、すでに30パーセント増え始めているということです。CMにけっこうな金額を使っているのですが、非常に効果が出始めているということがあります。
黒島結菜さんは、実は来年の春から『ちむどんどん』という朝ドラでヒロインになることが決まっています。ますます有名になっていきますので、我々の「工場求人ナビ」のプロモーション力がもう一段アップするのではないかと期待しています。
坂本:もともと御社のサイトは流入率が高かったということですが、こだわりなどがありましたら教えてください。
清水:まず1つ目に仕事を探し、就職することはお見合いのようなものです。事業と個人が一緒になることから、どのような仕事か、その地区はどのようなロケーションかといった、たくさんの情報が必要になります。しかし、通常の求人媒体は紙面に制限があり、丁寧に詳しくお伝えすることができません。
一方、自社サイトは仕事内容のような、今まで入職された方々が聞いておきたかったこと、確認しておきたかったことも含め、きめ細かく情報をお伝えできることが非常に大きいと思います。また、将来的に流入された方々のビッグデータを活用しつつマッチング精度を上げていくことや、「このような特性の方はこのような仕事に就いたら非常にうまくいく」ということへうまく結びつけられるのではないかと期待しています。
(連結) 売上高と営業利益の推移
清水:中期経営計画についてです。今年度から来年度へ向けた売上と利益に関する中計の推移になります。3年目にジャンプアップしているように映ると思いますが、何にも取り組まず突然3年目に売上と利益がこれほど急に伸びるのではありません。2つ目のエンジンとして、今年度、来年度にかけてエンジニアの育成を進め、事業領域を拡大していきます。これからの時代に必要なビジネスモデルをしっかり育てていくことにより、3年目はこのような事業規模へ拡大していくことになります。
事業環境認識
清水:そして事業環境の認識ですが、従来当社が得意としていた製造派遣・請負領域は、先ほどお話しした慢性的な人手不足感により自動化、省人化が進むと予測され、単純なオペレーターの規模は全体的に減ってくると考えられます。これは矢野経済研究所によるデータですが、非常に同意できる意見です。
一方、エンジニアを含めた専門職、いわゆる新しい製造現場のオペレーションに必要な装置エンジニアやIoT、あるいはAIという、新しいテクノロジーが製造業に入っていく領域の方々は拡大していくだろうという考えも私の見解とまったく同じです。
以上を総合的に考え、会社によって「雨」といえるかもしれません。また、変化にうまく対応できた会社は「晴れ」といってよいのではないかという意味合いのものになっています。
個別戦略:既存領域の拡大
清水:続いて、本ページの左側が各事業領域の既存事業拡大がどうなるかというグラフになっています。今年度、既存事業は先ほどのサプライチェーンなどにより若干停滞しましたが、今もトップラインは3ヶ月程度前倒しに増やし続けていることから、引き続き順調に売上が拡大していく見通しです。
さらに、右下にある入口の採用に関する積極的なプロモーション投資として自社サイトのプロモーションがあります。いろいろな新しい打ち手を実施しつつ、既存事業の拡大もさらにドライブをかけていこうと考えています。加えて、さまざまなテクノロジーを使い、育成あるいは定着率の向上をさらに図っていきます。また、業界再編といわれて久しいですが、既存事業においても当社とシナジーが生まれやすい領域事業はM&Aなどを積極的に行っていこうという考えです。
個別戦略:エンジニア領域の拡大
清水:エンジニア領域になります。こちらも3年目にジャンプアップしているようにみえますが、3年目の売上や利益の蓋然性を上げるため、前倒しにエンジニアの拡大を図っていこうと考えています。
ちなみに今期のエンジニア人数は当初、平均在籍680名を見越していましたが、先ほどお伝えしたとおり、半期に900名を超えている状態です。2年目、3年目が無理なカーブにならないよう拡大していこうと前倒しに進めています。従来は装置エンジニアを中心とした領域、あるいは設計開発が得意でしたが、これからお客さまのニーズが非常に高くなるITエンジニア、AIエンジニアを拡大していくため、布石を着々と打っています。
個別戦略:新規事業の創出
清水:こちらは新規事業の部分ですが、すでにIRにおいて発表したジョイントベンチャーの話もありつつ、今もいろいろな会社とJVやコンソーシアムを構成しています。注目していただくと、これから1年半くらいの間にIRにてどんどん発表していきますので、「なるほど、日総はこういった方法で新しい事業を作っていくんだな」と見ていただけます。ぜひご期待ください。
ターゲット別売上高目標 進捗
清水:各進捗はこちらにあるとおりです。後ほどご覧いただければと思いますが、総じて順調に推移していると考えています。
2022年3月期 通期連結業績予想の修正
清水:そして今後の見通しです。冒頭に多少触れた部分ですが、売上は当初760億円だったものが780億円となり、増収となっています。一方、利益に関しては大幅に減益となっています。
まずこちらについてご説明しますが、計画より前倒しに働いている人の数を増やせていることが増収の原因です。それにも関わらず減益となっている理由は、社名はお伝えできませんが、当社アカウントの最大手である自動車メーカーの企業グループにおいて、9月、10月に生産調整を実施し、その後、挽回生産を行うために生産調節している中、協力の一環として我々が人を配属してきました。
挽回生産時に働いている方々がいなくなっては意味がないため、お客さまにも内々から力を借りましたが、当社がその方々へ給与補償しつつ9月、10月をつなぎました。そして11月にやや正常に戻り、12月から本格的に挽回生産に入りました。
通常、このようなことは行いませんが、我々の最重要顧客ということもあり、投資する覚悟でこの費用をもって推移しました。残念ながら収益の取り戻しが来期にまたがることが、約6億円分の利益が減益要因となった大きな理由となります。
坂本:挽回生産は12月から始まったということですが、今期の3ヶ月で終わるのではなく、来期もあるだろうと見越すこともできます。
清水:いろいろなことによりサプライチェーンが苦戦しているようですが、今のところ夏頃まで間違いなく挽回生産が続くだろうということですので、来期にまたがると思っていただいてよろしいかと思います。
坂本:御社にさらなる人員の要請がくるかもしれないですね。
清水:そのためにも、先んじてトップラインを上げておく必要性があったとご理解いただければ大変うれしいです。
株主還元方針
清水:そして、株主還元方針についてご説明します。当社はもともと、当初計画していた30億円の配当性向30パーセントとして、1株当たり18円の配当を計画していました。今回これを据え置きとする結果、配当性向は34.9パーセントとなります。足元の収益が若干犠牲となっているものの、当初の計画に対して遅れている認識はまったくなく、むしろいろいろなことが前倒しで実現できているため、配当金額を18円に据え置いています。
この考え方について、よく「今後どうするのか」とご質問を受けますが、基本的に最低ラインを30パーセントとし、当面は新しく事業を成長させる投資を積極的に行います。私は決して高いと認識していませんので、ここが落ち着けば、将来は配当性向そのものを見直すタイミングがくると考えています。
坂本:配当、株主還元は配当と自社株買いの両方がありますが、自社株買いはお考えでしょうか? また、仮に自社株買いを実施する場合、配当性向は総還元性向とし、自社株買い分と配当分を合わせた30パーセントというかたちか、それとも別枠と考えればよいのでしょうか?
清水:今のところ、すぐ自社株買いすることは計画していませんが、これは当然別枠です。まだまだ上場したてですから、自社株買いがあり得るとすれば、株を償却するためより、将来のいわゆる大型買収をにらみ、株を交換するような武器として使うかたちがおそらくメインになると予測しています。そのタイミングがきましたら、またご説明します。
そしてもう1つ、先週木曜日に機関決定したホットな話題があります。実は株主のみなさまから、「株主優待のない会社はそもそも買わないんだ」というお声をかなりいただいていましたが、こちらについてようやく機関決定できました。
BtoBのため、株主のみなさまにご優待できるビジネスモデルがないのですが、この年度末に向けて制度を整備し、ポイントをためて欲しいものと交換できる、いわゆる優待の仕組みを導入することが決定しました。ぜひこれを機にこの会社の伸長を眺め、場合によっては、この会社を株のかたちで応援してみようと思っていただければたいへんうれしく思いますので、よろしくお願いします。
用語解説①
清水:ここからは補足資料になります。特にご覧いただきたいのは、この業種の独特な用語の解説部分です。「製造派遣」「製造請負」「労働者派遣法」とはどのようなものかといったことを含め、補足資料として入っています。
用語解説②
清水:特に当社特有の「アカウント企業」「技能社員」「エンジニア」についても、定義をお示ししています。後ほど「これなんだったかな」ということがありましたら、ぜひご覧ください。
以上をもちまして、当社概要ならびに成長戦略の説明とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:SDGsの取り組みについて
飯村:SDGsの取り組みなどがありましたら教えていただきたいです。
清水:実は、私どものビジネスモデルはSDGsと非常に密接に結びついているのではないかと思っています。人が働くのには、当然、生活するためもありますが、豊かな人生設計もあります。そういったことを叶えるため、男性・女性だけでなく海外の人も含め、しっかりと戦力になって働いてもらえるよう育成する仕組みを提供します。
また、地域や国に分け隔てなく、その人の持っている能力を適正に評価して処遇を与えていくこと、あるいは「就業弱者」という言葉が正しいかどうか分かりませんが、子育てなどでなかなかフルで働けない、いろいろな事情を抱えている方々が自分たちの働けるタイミングだけ働けるような職場環境を整備します。
我々が取り組んでいることは、SDGsの17項目に整理されているうちのどれに該当するかや、今まで取り組んできたことをさらに高めることにより、SDGsにしっかり向き合っている会社になるかを整理しながら進めています。
質疑応答:介護事業を展開している背景について
坂本:介護事業についてご質問がきています。「介護事業を展開されているのはどのような背景があるのでしょうか?」
清水:日総工産は全国をターゲットに展開していますが、最初のきっかけは、横浜に本社がある人材サービス会社の地域貢献として、お年寄りの方々が安心して終の住処ができるのではないかというところからスタートしました。そもそも介護事業そのものの箱を作ることはそれほど大層ではありませんが、そこで働く方々をいかに育成するか、そしてその育成された方々がいかに有機的、組織的、機能的に動くかは、人材サービスのノウハウと非常に直結しています。
投資家のみなさまからもこの質問をよく受けることがあります。「どうしてこの仕事をやっているんですか?」とお聞きになるケースがありますが、そのような意味により、ここまでこの事業を進めています。
質疑応答:技能社員、エンジニアとなるまでの期間について
坂本:用語解説に「アカウント企業」「技能社員」「エンジニア」とあります。こちらは後からみなさまに読んでいただければと思いますが、「技能社員とエンジニアというのは、何年くらいでなれるのですか?」という質問がきています。
突き詰めれば、やる気ともともと持っていたスキルにより異なり、すぐエンジニアになれるスキルがある人もいると思いますが、そのあたりを含め、普通のパスならばどのくらいになるかを教えていただくと、将来的にどのくらい増えるのかイメージできると思います。
清水:基本的に技能社員やエンジニアに対する考え方は育成型モデルを想定しています。この15,000人近くいる方々のうち、そこを目指したい方々へ訓練します。例えば、エンジニアや技能社員であっても、まず初級からトライしていただく考えであり、実は80パーセントはこの15,000人のベースから雇用しています。残りの2割は、新卒も含めて新しく採用した方々です。
こちらはある程度素養があるため、目指すスキルの高さにより少し違いはありますが、技能社員は最大2週間、エンジニアの場合ですと3ヶ月あるいは6ヶ月というかたちになります。
現場から登用される方は、かなり大きな差があります。技能社員は現場で契約社員として仕事をしており、もともと技能のある方々がたくさんいます。そのため、非常に勘のよい方ですと2週間ですぐに転用できます。
しかし、エンジニアの場合は、目指しても途中でリタイアしてしまう方もいます。ですので、比較的この装置を数年触っていた方々は1ヶ月半の研修を受け、一応設備保全ができる初級レベルまで育成できます。そこから先のスキルを上げていく部分は、本人がどれほどいろいろなことを努力して取り組んでいくかにかかっており、一概にいえません。
坂本:そのようなパスを持ち、技能社員、エンジニアになるということがよくわかり、非常によかったです。
質疑応答:現場での定年世代以上の活躍について
坂本:この質問はおもしろいと思ったのですが、「定年退職や早期退職した60歳前後の方や、それよりもう少し年齢が上の方で技能を持っている方もいますが、そのような方も御社で働くことがあるのでしょうか?」ということについて教えていただけたらと思います。
清水:わかりやすくお話ししますと、新規事業の部分でありましたが、ニコン日総プライムという、ニコンと当社が合弁で作っている会社があります。ここは60歳でニコンを定年退職した方々のすべての受け皿となり、ニコンやそれ以外のグループにおいて活躍していただくスキームを作っています。
我々は経験のない若い方々と経験豊かな年配の方々を組み合わせ、サービスとして提供することもあります。特に一番助かっているのは、経験豊かな方々がトレーナーや先生として我々の次代を担っていくメンバーを育成していただく、あるいは育成されたメンバーが現場でよりそのスキルを上げていくため、現場の指導者になっていただくケースが非常にたくさんあります。これからも一番増えるのはその領域だと思います。ちなみに、当社で最年長の営業は86歳の男性です。
飯村:86歳の営業マン、かっこいいですね。
清水:今年87歳になりました。元気に全国を飛び回り、営業活動を行っています。ですので、やる気と健康があれば活躍の場はたくさんあるのではないかと思います。
質疑応答:株主優待について
坂本:株主優待について、先ほどのお話から、おそらくウィルズのプレミアム優待倶楽部だろうと思います。私も楽しみです。ウィルズはオリジナルの優待も入れることができるため、企業ごとに全部ポイント還元することも、いろいろなものを買うこともできますので、御社独特のものがあると思います。将来、アカウント企業の中からBtoBにおいてこのような優待を行う楽しみもあるかと思いますが、そのあたりもお考えですか?
清水:そこは柔軟に対応したらよいと思います。まだ優待した経験がありませんので、活用しながら株主の方々のご意見やご要望を聞き、制度変更に活かしていくことが特に大切ではないかと考えています。
清水氏からのご挨拶
飯村:「社長には、人材派遣について強くて熱い気持ちがありますね」というコメントもいただいています。最後に何か一言、ご覧のみなさまへメッセージをお願いします。
清水:日本は少子高齢化といわれて久しいです。コロナ禍により過渡期が少し伸びたとも考えられるかと思いますが、少子高齢化は止まっていません。今後、ますます日本において産業を発展していこうとすると、今働いている方々の生産性をもっともっと上げていかなければいけません。我々はそのような方々が活躍できるスキルアップ、また、産業をまたいで活躍できるようなキャリアチェンジやジョブチェンジが必要な時代になるのではないかと考えています。
そこに人材サービスの社会的な役割として真正面から向かい合いつつ、何か日本に対し生産性がもう一段上がるようなことを実現できるよう、やり遂げていきたいと考えています。ぜひご協力いただければと思います。
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