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相場展望9月9日 米国『景気後退とインフレ、金利上昇』⇒株安懸念 日本『新首相ご祝儀相場、一服か』⇒株安の備えを
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)9/6、レーバーデーの祝日のため休場
2)9/7、NYダウ▲269ドル安、35,100ドル(NHK)
・感染力が強い変異ウイルスのデルタ株感染が米国で広がっていることを受けて、景気回復が鈍ることへの懸念が高まり、景気敏感株を中心に売り注文が出た。
・一方、IT関連銘柄の多いナスダック総合指数は上昇して4営業日連続で最高値を更新した。
・市場関係者は、「大手投資銀行が米国の経済成長の見通しを引下げたこともありデルタ株の感染拡大が経済に及ぼす悪影響を懸念する投資家が多かった」述べた。
3)9/8、NYダウ▲68ドル安、35,031ドル(日経新聞より抜粋)
・前日までの2営業日で▲300ドル余り下げたため、朝方は買いが先行した。
・買い一巡後は新型コロナの感染拡大による、景気回復の鈍化を警戒した売りが次第に優勢となった。
・9/3発表の8月雇用統計で雇用者の伸びが市場予想を下回ったのをきっかけに経済成長率見通しを下方修正する金融機関が増え、9/8の投資家心理の重荷になった。
・米連邦準備制度理事会(FRB)は9/8発表の米地区連銀経済報告(ベージュブック)で、新型コロナの感染拡大で夏場に景気回復がやや鈍化したとの認識を示した。
・米労働省発表の7月求人件数が5カ月連続で過去最高を更新した。求人増加は続いており、雇用回復は続くとの見方が支えとなり、NYダウの下げ幅は限られた。
・8月の雇用統計を受けても、年内のテーパリング開始予想を維持する金融機関が多く、相場への影響は限られた。
●2.米国株『景気後退とインフレ、金利上昇』で、米株安の見通し
1)米経済成長率の低下見通し
(1)米経済成長の鈍化要因
・バイデン政権の景気刺激策による歳出はピークに達した。失業給付の週300ドル上乗せは9/6で終了した。 ⇒ 米GDPの7割を占める消費支出にはマイナスに働く。
・デルタ型変異株による感染再拡大が経済正常化に支障をもたらしている。
・インフレ率の急伸。
・金利の上昇。
・企業業績の伸び率の低下。
・半導体供給不足で自動車・家電・IT機器などが販売減。
・サプライチェーンの混乱が、経済成長に足枷。
・ハリケーンが米国の東海岸に大きな被害をもたらした。
(2)経済成長率見通しの引下げ
・Gサックスは2021年の米経済成長率を+6.0⇒+5.7%に引下げた。
・7~9月期実質GDP成長率見通しを、下方修正した。
オックスフォード・エコノミスト : +6.5%⇒2.7%に下方修正。
モルガン・スタンレー : +6.5%⇒2.9%に下方修正。
2)インフレ率が急伸する可能性があり、個人消費や企業にとって負の影響。
・米消費者物価指数は6・7月年率で5.4%上昇した。
・住宅価格の高騰が、家賃改定時の値上げを招く。しかも、家賃は値上げされやすく、値下げは困難という下方硬直性がある。
・原油価格の高騰で、ガソリン価格が上昇。
・よって、大きな景気後退がない限り、FRBの言う「インフレは一過性」では済まない。
3)金利上昇
・バイデン政権の超大型投資案は、米国債の大量発行をもたらし、金利上昇を招く。
・インフレは金利上昇をもたらす。インフレ率の上昇が、金利上昇にも波及する。
・金利上昇は、利ザヤ拡大期待の銀行を除き、企業にとってマイナス要因となる。
4)株式市場の短期的リスク
・バイデン政権による企業と富裕層向けの増税の可能性。
・金利の急激な上昇は、株式利回り比較で株式の優位性低下。
・テーパリングで株式市場への資金流入額の減少。
・FRBによる市場へのさらなる資金供給増加の可能性はない。むしろ、テーパリングで資金供給量が減少傾向となる。
・9月は一般的に米株価にとって弱い季節。
●3.米7月JOLT求人件数が1093.4万人と、予想1004.9万人を上回り過去最高(フィスコより抜粋)
1)求人労働異動調査(JOLT)の6月1007.3万人をも上回った。
2)8月雇用統計での雇用者数は、冴えない結果となったものの、雇用需要は引き続き増加傾向にあることが、明らかになった。
3)強い結果を受けて、労働市場に対する懸念が緩和し、ドル買いが強まった。
●4.イエレン米財務長官は、議会に債務上限の引上げを要請した(フィスコ)
1)10月には米政府は債務上限に達し、債務上限が引上げられないと、政府事務所等の閉鎖問題などに直面することになる。
●5.3.5兆ドル規模の歳出法案に、連邦政府債務上限引上げを盛り込まず(ロイター)
1)ペロシ下院議長(民主党)は9/8、28.5兆ドルの債務上限の引上げに関する条項を盛り込まない方針を示した。
2)共和党の議会指導部は、債務引上げに賛成しない方針を示している。
●6.世界経済の回復はここで頭打ちか?デルタ変異株は活動再開にブレーキ(ブルームバーグより抜粋)
1)デルタ変異株の感染拡大による経済回復の遅れが顕著になってきた。
・米8月雇用者数は急減速した。空港でのチェックインやホテル、レストランの予約など需要鈍化を示す兆候があらゆるところに見られる。
・ドイツの企業景況感は悪化。
・中国ではサービス業が軟化。
・アジア全体でもデルタ変異株感染拡大が製造業や供給・輸送全般に問題が生じ、複雑に絡み合う供給不足が世界で顕在化するに至った。
・世界の製造活動を示す指数は予想を下回っている。
2)これで、米中央銀行(FRB)による、資産購入ペースの減速や政策金利引上げが遠のく可能性がある。
3)世界の供給の混乱は、(1)個人消費の足枷となり得るし、(2)財の価格を押し上げる恐れがある。
●7.天然ガスが高騰、世界経済の回復阻害の恐れで、転嫁値上げの可能性も(ブルームバーグより抜粋)
1)INGのエコノミスト、ブルゼスキ氏は「製造業者らがこのコストを転嫁する公算は極めて大きい」と指摘。
2)したがって、インフレは「思ったほど一時的ではない」可能性があると説明した。
●8.台湾セミコンダクタ―(TSMC)は半導体価格20%値上げを発表(The Motley Fool Japan)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)9/6、上海総合+40高、3,621
・政府による経済対策の期待感で買われ、約3カ月ぶりの高値水準を回復した。
・足元の景気指標が総じて弱い中、市場では「当局は金融・財政政策を強める」との見方が広がった。
・業種別では、ゼネコン・建材・建機などインフラ建設関連株の上げが目立ち、証券・医薬品・消費関連・ハイテク・公益・資源株が買われた。
2)9/7、上海総合+54高、3,676
・8月貿易統計で輸出・輸入の伸びがそろって上振れた。特に、輸出は+15.7%拡大し、7月+8.1%を大幅に上回った。
・中国の劉鶴副首相は9/6、「民営経済の発展を支援する」と述べ、政府の経済対策への期待感も持続し、株式市場は上げ幅を広げた。
・業種別では、銀行・証券の上げが目立ち、レアアース・非鉄・鉄鋼などが買われた。
3)9/8、上海総合▲1安、3,675
・前日は7カ月ぶりの高値水準を回復したため、売り圧力が意識された。
・Gサックスは2021年の米経済成長率を+6.0⇒+5.7%に引下げた。そのため、米景気鈍化の悪影響が中国に及ぶと警戒された。
・業種別では、消費関連の自動車・医薬品・ハイテク・銀行・保険が下げた。反面、素材・エネルギー・海運・証券が買われた。
●2.中国・8月財新製造業PMIは49.2と景況判断の50を割り込み、不況入りか(東洋経済より抜粋)
1)中国は7月下旬から8月にかけて発生した新型コロナの局所的流行や、記録的豪雨による洪水が、中国製造業の景況感に冷や水を浴びせている。
2)9/1発表の8月財新中国製造業購買担当者景況感(PMI)49.2と、7月50.3から▲1.1低下し、好不況の判断の目安の50を割り込んだ。50を割り込んだのは、2020年5月以降で初めて。
●3.中国に広がる「文化大革命の再来」懸念、習国家主席の3期目と関連か(時事通信より抜粋)
1)中国の官製メディア(共産党機関紙・人民日報、国営新華社、中央テレビなど)に、8/29に「誰もが感じられる深い変革が進んでいる」と題する文章をインターネット上に一斉に掲載し、建国の父・毛沢東が発動した文化大革命のような激しい政治運動が始まるのではないかという観測が出ている。
2)習近平国家主席が慣例(国家主席は2期、10年)を破り、2022年の共産党大会で3期目入りが確実視される中、習氏を毛沢東と並ぶ指導者に位置付けようとする動きと関連している可能性がある。
3)ネット論説を発表した李光満氏の文書から抜粋。
・習政権による経済や芸能界への統制強化を、「経済、金融、文化、政治で深い変革が起きている。深い変革と言ってもいい」と称賛。「この深い変革は党の初心・社会主義の本質への回帰だ」と強調した。
・さらに「今回の変革で、中国の市場は資本家が一晩で大金持ちになれる天国ではなくなる。われわれは一切の文化の乱れを整理する必要がある」と主張した。
4)この論文に対し、多くの知識人が「改革開放の否定と、文化大革命の再来を連想させる」と受け止めた。
5)この論文が注目されたのは、「毛路線への回帰」が全くの絵空事ではないように見えるためだ。
・最近、学校で習氏の指導思想を必修化したり、未成年のオンラインゲームの利用時間を週3時間に制限するなど、思想や国民生活を厳しく統制する動きが拡大している。
・党の文書や博物館の展示で、習氏を毛沢東と同様に別格の指導者として扱う傾向も強まっている。
●4.中国に強まる国家統制、よぎる「文化大革命」の記憶(日経新聞より抜粋)
1)中国の習近平指導部が、社会や思想への統制を強めている。
(1)企業経営者への批判
(2)芸能や教育など若者の思想形成に影響力を持つ業界への介入
が相次ぎ、中国は、にわかに「文化大革命」の様相も帯びる。
2)こうした動きは、経済成長やイノベーションを阻害しかねない。米国に迫る経済大国となった中国が内向きに転じれば世界経済も無傷ではいられない。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の指数
1)9/6、日経平均+531円高、29,659円(日経新聞)
・朝方から買い優勢で、日経平均は6日間続伸、4/19以来の約5カ月ぶりの高値となった。
・次期首相が打ち出す政策に期待が高まり、不透明感が後退し、幅広い銘柄に買いが入った。
・ファストリや東京エレク、ダイキンなど値嵩さ大型株の上昇が相場を押し上げた。
・9/10に先物・オプションンの特別清算指数(SQ)の算出に絡み、先物を買う動きが強まった。
・デルタ型変異株感染拡大に歯止めがかかったことも、投資家心理を支えた。
2)9/7、日経平均+256円高、29,916円(NHK)
・短期筋の売り方による買戻しが優勢で、一時+380円超高し5カ月ぶりに3万円に乗せる場面があった。
・もっとも、今日まで相場が急伸したことで、利益確定売りも出やすかった。
3)9/8、日経平均+265円高、30,181円(日経新聞)
・日経平均は大台の30,000円を回復し、3/18日以来の8カ月ぶりの高値水準となる
・新しい首相が打ち出す経済対策への期待と、国内の新型コロナ感染者数が減少傾向にあることも買い材料視された。
●2.日本株は、『新首相のご祝儀相場』も、ちょっと一服か、下落に備えを
1)日経平均の大幅上昇した要因。
(1)新首相誕生のご祝儀(政局の不透明感薄れる、大型景気対策への期待の高まり)
(2)ワクチン接種進展と、デルタ変異株感染拡大の収束傾向による経済正常化の期待
(3)日本株の割安に目を付けた売り方の買戻し。(2~3月の急騰局面での信用増加分の期日明けで、売り圧迫の解消)
2)日経平均は8/30~9/8まで、+2,540円高・+9.2%増。8/30から8連騰で、過去2020年11月上旬の8連騰以来。
⇒ 急速な上昇で短期的な過熱感が意識されやすくなってきた。
3)恐怖指標は、日経平均とは逆相関なのに、一緒に上昇し警戒信号音が高まる。
8/31 9/01 9/02 9/03 9/06 9/07 9/08
日経平均(円) +300 +361 + 92 +584 +531 +256 +265
恐怖(VIX)指数 16.90 17.16 18.22 19.29 20.40 20.91 21.20
4)騰落レシオ(25日)は、天井圏入りとされる120を超え、相場下落の可能性を示唆
8/27 9/08
ストキャスティクス 46 89
騰落レシオ(25日) 103.99 125.17
5)日経平均は8連騰で+2,540円上昇したが、企業業績の裏付け乏しく、人気だけで上昇。
8/27 9/08
日経平均(円) 27,641 30,181 : +2,540円高・+9.2%
EPS(1株利益、円) 2,141 2,163 : + 22円高・+1.0%上昇
・買うから上がる、上がるから買う、という状況が出現した。
・これは、日経平均の上昇2,540円のうち89%・2,264円は業績の裏付けを伴わない人気高によるものと言える。
6)外国人先物買残枚数は僅かしか増加していない。
8/27 9/07
外国人先物買残枚数 161,010 170,014 ⇒ +9,004枚増・+5.6%増
7)総括 : 日経平均の下落リスクに対する『備え』の必要を示唆していると思われる
・日経平均が調整(下落)を避けるには、(1)外国人買い増し (2)カネ余り効果で支える必要がある。
・先物手口(枚数)の中で特記される証券会社の動き
8/27 9/07
Gソックスの買残枚数解消 +14,297 + 341 先安を見て利益確定売り?
Cスイスの損切の買戻し ▲24,822 ▲11,362 さらなる先高感で損切?
野村の売り枚数の増加 ▲77,361 ▲90,924 先安を見た売り?
●3.内閣府、実質GDP4~6月期年率+1.9%増に上方修正(共同通信)
●4.緊急事態宣言は東京・大阪など19都道府県に対し9/30まで延長 (TBS)
1)蔓延防止等重点地区の適用は宮城・岡山。
2)重点措置に現在適用されている、富山・山梨・高知・愛媛・長崎は解除される。
●5.農林水産省、輸入小麦の卸価格を10月から19%引上げ、13年ぶりの上げ幅(読売新聞)
1)中国での需要増加や、主要産地の米国・カナダの天候不順による生産量の減少を背景に小麦の国際価格が上昇しているため。
2)農水省の試算では、食パン1斤(400g)当たり2.3円、家庭用薄力粉(1kg)14.1円それぞれ高くなる。
●6.企業動向
1)トヨタ 電池開発・生産に2030年迄に1兆5,000億円を投資(NHK)
2)三菱商事 アマゾンと太陽光発電網を国内450カ所新設(共同通信)
アマゾンは電力会社を通さずに長期で安定調達できる
3)三菱商事 英シェルと提携、カナダで天然ガスから発電用アンモニア製造(読売新聞)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・4502 武田薬品 コロナワクチン取扱い。業績好調。
・4452 花王 トイレタリー首位。業績堅調。
・2326 デジタルアーツ ネットセキュリティ専業。業績好調。
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