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相場展望8月30日 パウエル議長講演を、(1)株式市場は都合良い解釈で好反応、(2)債券・為替市場は緊張感漂う反応
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)8/26、NYダウ▲192ドル安、35,213ドル(日経新聞)
・朝方は高く始まったが、買い一巡後は高値警戒による利益確定売りが優勢となる。アフガニスタンの地政学リスクの高まりも投資家心理の悪化につながった。
・ジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長の講演を前に、持ち高調整の売りも出た。セントルイス連銀総裁の発言で、テーパリングの前倒し懸念がやや高まった。
・航空機のボーイング、建機のキャタピラーなど景気敏感株などが下げた。コロナ感染拡大を受け、スポーツ用品のナイキ、小売のウォルマートなど消費関連株も下落した。
【前回は】相場展望8月26日 米株式市場は巨大予算案を囃すが、『影』も注視 日本株は25日MAで頭を打ち上値切下げに注意
2)8/27、NYダウ+242ドル高、35,455ドル(読売新聞)
・米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長による8/27に講演を受け、金融緩和縮小が早期に始まるとの警戒感が薄れ、景気の回復傾向が続くとの見方から買い注文が優勢となった。
●2.パウエル講演に、株式市場は都合の良い解釈をし好感の反応、債券・為替市場は緊張感漂う
1)これまでの経過
・FRBは雇用回復を目指して、景気回復のペースを維持するために、景気過熱リスクを承知で、(1)ゼロ金利政策や(2)米国債・住宅ローン担保証券(MBS)の購入を実行し、空前の金融緩和策を続けてきた。
・2021年4~6月期の米国の実質国内総生産(GDP)は、コロナ前の2019年10~12月期を超えた。
・7月開催の金融政策を決定する米連邦公開市場委員会(FOMC)では、メンバーの大半が2021年内に量的緩和の段階的縮小(テーパリング)で購入資産を減らし、これまでの金融政策を引き締め方向に舵を切ることが適切との判断を示す発言をした。
・米国株価は8月に史上最高値を維持しており、インフレにもかかわらず、長期金利が落ち着いている。
2)パウエル議長講演の要旨
・『年内』の量的緩和縮小が適当とし、その条件である(1)物価は満たし(2)雇用は着実に前進していると説明した。
・デルタ株は目先のリスクだが、雇用最大化に向けて見通しは今後も良好。
・量的縮小 : 年内開始が適当。
・利上げ : ゼロ金利の解除には、慎重姿勢で、2023年の利上げを見込む。
3)議長講演後の市場の反応はまちまち
・株式市場 : 議長講演内容は想定内で、利上げを急がないと買い安心感が広がる。
8/27 NYダウ+242ドル高
・債券市場 : 反面、金利はいずれ上昇と10年国債金利は上がり、債券価格は下落
8/19 1.243%⇒8/27 1.310
・為替市場 : 米経済鈍化を読み、ドル高傾向⇒ドル安に転換。
8/16 110.05円⇒8/30 109.84
4)米株式市場は好感し上昇したが、(1)緩和の段階的縮小と(2)今後の金利引上げ時期が一歩近づいたことは事実である。
・当面は、FRBからの市場への過剰マネー供給量は減少するものの、過剰マネー自体が減るわけではない。
・パウエル議長の慎重姿勢は、2013年のバーナンキ元FRB議長のサプライズ発言の失敗から学習した成果を示したと評価できる。
5)今後の米株式市場
・9月FOMCで、(1)量的緩和の段階的縮小を決定し、(2)実施時期は10月が濃厚。
縮小額は1回当たり150~200億ドルとし、現在月額1,200億ドル(約13兆円)を来年春ごろにゼロにする可能性が高まった。
・講演で、(1)2021年内の金融緩和縮小への踏み出し (2)2023年の金利引上げの方向性 は、より明確になった。
・米株式市場の織り込みはこれからである。今年秋~2022年3月は、緊張感を持って株式相場の動向を注意深く見守りたい。
●3.パウエルFRB議長8/27講演、(1)年内の量的緩和縮小の示唆(2)利上げ急がない(フィスコ)
1)パウエル講演を受け、NYダウは+242ドル高。年内のQE縮小の可能性を示唆も、利上げは急がない姿勢を示したことが好感された。
●4.パウエルFRB議長の講演内容は市場想定の範囲内で、NYダウ上昇と金利低下(フィスコ)
1)債券購入の段階的縮小の前提条件である、インフレ目標は一段と顕著な進展を遂げるとの基準を満たしたと指摘した。
2)ただ、デルタ変異株の感染もさらに拡大した、とも指摘。
3)市場関係者の想定に沿った内容だったことから8/27は、長期金利の上昇に対する警戒感は低下し、金先物は強い動きを見せ上昇、NY原油先物も反発、為替市場はドル安に振れた。
●5.FRB議長の講演を受け、金融緩和の長期化観測が強まる(日経新聞)
1)パウエル議長は、ジャクソンホール会議で、テーパリング(量的緩和の縮小)の年内開始が適切との見解を示した。
2)しかし、「FRBは利上げの条件である、雇用の最大化という難題が長引くと見て、長期の金融緩和をほのめかした」(バンク・オブ・アメリカ)との見方が広がった。
●6.米FRB、雇用情勢は『明らかに進展』、量的緩和縮小の判断も(共同通信より抜粋)
1)パウエル議長は8/27講演で、新型コロナで大打撃を受けた雇用情勢は『明らかに進展』したとの見解を示した。
2)9/3に発表される8月米雇用統計が好調であれば、早ければ9月下旬に開催のFOMCで量的金融緩和策の縮小を決める可能性もある。
3)米国が大規模な金融緩和を転換すれば、国際的な資金の流れが変わり、日本や世界経済にも影響が及びそうだ。
4)FRBは政策目標で、(1)物価の安定と(2)雇用の最大化を掲げる。パウエル氏は講演で、物価については量的緩和縮小に向けた条件を既に満たしているとの見解を示した。
●7.米の量的緩和は、『長く持たず、縮小を』、元インド中央銀行総裁(朝日新聞より抜粋)
1)現状の認識
(1)米国は力強い回復の途上にあり、
・株価は、史上最高値圏にあり、
・長期金利も低い(国債価格は高い)
状態で抑えられている。
(2)FRBの金融緩和で、国債の金利が抑えられているため、株式などを買ってより高い利回りを追求する動きが出ている。
2)今後の予測
(1)株も債券も値上がりするこの好循環は、どちらの価格も下がる悪循環に変わり得る。リスクは蓄積しており、FRBは長すぎることなく『量的緩和の縮小』に踏み切るべきだ。
(2)米議会・政権は巨額の経済対策でさらに景気の刺激を重ねる姿勢をとっている。この規模の財政出動が続けば、FRBが無限に緩和策をとり続けるかのような姿勢をとることは難しくなる。FRBがいずれ利上げに踏み切れば、政府に積み上がった債務に対する利払いの負担が大きくのしかかることになる。
●8.米7月物価指数+4.2%上昇、30年6カ月ぶりの高水準(共同通信より抜粋)
1)米商務省8/27発表、7月個人所得・消費統計によると、個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比+4.2%上がり、上昇率は1991年1月の+4.5%以来、30年6カ月ぶりの大きさとなった。
2)要因は、新型コロナのワクチン接種拡大に伴う経済再開により、需要が増えたため。
3)PCE物価指数は、米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策を判断する際に重視しており、大規模な金融緩和策の縮小ペースが速まる可能性がある。
●9.米7月コアPCE価格指数は前年比+3.6%と、予想と6月数値とも一致(フィスコ)
●10.米最高裁は8/26、家賃滞納者への立ち退き猶予措置の中止を命令(ロイターより抜粋)
1)猶予措置は、新型コロナウイルス対策の一環として米疾病対策センター(CDC)が導入し、猶予措置は10/3まで継続する予定だった。
2)これに対し、家主・不動産団体が撤回を求めて提訴していた。
3)最高裁は、「連邦政府が猶予措置を継続するには、米議会で特別に承認する必要がある」との判断を示した。
4)大統領府は、最高裁の判断に失望したと表明した。ホームレスを増やさないために、省庁・州などに対し「直ちに行動」するよう求めた。
●11.アップルはティム・クックCEO就任10周年記念ボーナスに825億円相当(テレビ朝日)
1)クック氏の経営指揮の下、米アップルは(1)売上高2倍以上に増加し、(2)株価リターンは1,100%超、(3)時価総額は2兆ドルを超えた。(ブルームバーグ)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)8/26、上海総合▲38安、3,501(亜州リサーチ)
・新規の材料に乏しく、売り圧力が意識される流れとなった。
・上海総合指数は前日まで急ピッチな上昇で、約1カ月ぶりの高値水準を回復していた。
・また、新型コロナの起源を巡り、対外関係が悪化するとの懸念もくすぶっている。
・もっとも、大きく売り込む動きは見られない。中国の景気テコ入れ策や、経済活動の正常化に対する期待感は持続している。
・業種別では、消費関連が安く、医薬品株が急落した。ハイテク、不動産、金融、運輸株なども売られた。反面、鉄鋼、エネルギー、素材株は物色された。
2)8/27、上海総合+20高、3,522
・中国人民銀行は8/26、農村開発を支援する方針を明らかにした。また、商務部はコロナ感染流行で苦境に陥った貿易・ホテル・小売に向けた追加支援策を8/26に打ち出した。
・業種別では、非鉄やレアアース、鉄鋼など素材関連の上げが目立ち、半導体も高い反面、証券株は安く、IT・ソフトウェア、食品飲料、銀行の一角が売られた。
●2.中国で巨大シェールオイル、石油、天然ガスを発見(テレ朝より抜粋)
1)黒竜江省の油田で12億トン以上のシェールオイルを発見
新疆ウイグル自治区で10億トンの石油・天然ガスを発見
2)中国は2019年の1年間で、世界最大の約6億6,000万トンの石油を消費しており、エネルギーの自給自足が課題となっている。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)8/26、日経平均+17円高、27,742円(株探)
・朝方は買い優勢で始まったが、その後は上値の重い展開で、日経平均は小動きに終始
・27,000円後半では戻り売り圧力が強い。コロナ感染拡大が続いており、政局不安などもあり海外投資家の買いを手控えさせる要因となっている。
・また、ジャクソンホール会合でパウエルFRB議長の講演が予定されており、内容を見極めたいとの思惑も上値を重くした。
・業種別では、半導体関連や鉄鋼など景気敏感株の一角が買われ全体を支えた。 東証1部の売買代金は2兆円台をかろうじてキープしたものの、約1カ月ぶりの低水準だった。
2)8/27、日経平均▲101円安、27,641円(日経新聞)
・ジャクソンホール会合を前に、FRB高官から資産購入のテーパリング(段階的縮小)についてタカ派的発言がでたことや、アフガニスタン爆発事件を受け地政学リスクが浮上したことが警戒された。
・外需の影響を受けやすい精密機器や自動車関連、商社の下落が目立った。
●2.日本株は閑散相場が続く
1)日経平均関連の推移
8/20 8/26 8/27
日経平均 ▲267円安 ▲17円安 ▲101円安
27,013円 27,742円 27,641円
売買金額 2兆8,305億円 2兆0,060億円 2兆1,135億円
出来高 12億3,197万株 8億6,000万株 8億6,985万株
2)外国人先物手口は、買い上がった分の、売り戻し傾向にあり、力強さに欠ける
3)政局(自民党総裁選挙、衆院総選挙、菅政権支持率低下など)が株式相場に与える影響に留意したい。
●3.企業動向
1)INPEX 旧・国際石油開発帝石。ベネズエラの石油権益売却し撤退へ(時事通信)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・7085 カーブス シニア女性体操教室。業績好調。
・6778 アルチザネットワークス 5G関連。業績好調。
・3753 フライト 決済端末・決済アプリサービス。黒字転換。
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