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【映画で学ぶ英語】ドラマ『ロキ』:英語の訛りが人に与える印象
6月9日からディズニープラスで配信が始まったドラマ『ロキ』は、「アベンジャーズ」シリーズで知られるマーベル・スタジオが製作するTVシリーズ。映画『マイティ・ソー』や『アベンジャーズ』などに登場する「いたずら/悪巧みの神」ロキを主人公に据えた異色のドラマである。
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このシリーズの案内役とも言えるマスコット、ミス・ミニッツのアメリカ南部訛りの英語が世界のファンの人気を集めている。
そこで今回は、このミス・ミニッツの英語を例に、英語の訛りが人にどのような印象を与えるか考えてみたい。
■ドラマ『ロキ』とは
ドラマ『ロキ』は、2019年に公開された映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』の一場面の続きから始まる。この映画でロキはヒーローチーム・アベンジャーズに捕まっていたのだが瞬間移動で逃げてしまった。
しかし、ゴビ砂漠までテレポートしたものの、今度はTVAという謎の組織にロキは捕まってしまう。TVAによって抹殺されるのを免れるため、ロキはTVAに戦いを挑む変異体を捕まえるのに協力することになった。ドラマ『ロキ』は、この変異体を追って時空を駆け巡るロキの物語である。
ミス・ミニッツはTVAのマスコットで、端末のディスプレイやホログラムで登場し、TVAの役目などについて説明するキャラクターだ。
■今回の表現
【sorta】(sort ofの略) 大体、多少、いくらか、まあまあ
Loki: Are you a recording or are you alive?
ロキ:君は録画なの、それとも生きているの?
Miss Minutes: Uh, sorta both.
ミス・ミニッツ:まあ、その両方かな。
■表現解説
sortaはsort ofの略で、ある程度まではあてはまるという意味で断定を避けて返事を曖昧にしたいときに使われる口語である。上の例のように、イエスやノーに代わるうやむやな返事に使える便利な表現だ。
同じ意味でkind of/kindaという表現もあるので一緒に覚えておくと良いだろう。どちらも話し言葉なので、あらたまった文章などでは使われない。
■ミス・ミニッツの南部訛り
さて、ミス・ミニッツが世界の視聴者から人気を集めている理由の1つは、何と彼女の英語がアメリカ南部訛りであることなのだ。
アメリカ南部訛りの特徴にa、e、iといった母音を伸ばして2重母音のように発音するdrawlと呼ばれる現象がある。ミス・ミニッツの話し方はまさにこれに該当するのである。
■南部訛りは親しみやすい印象を与える
アメリカでは現在、中部地方北部、ニュー・イングランド西部やミシシッピ川以西の西部で話される英語が、一般米語と感じられる傾向がある。これら地域の英語の訛りは、歴史的には海岸地域をのぞくアメリカ北東部の英語を源泉にしている。
アメリカでは多くの人がこの北部や西部の英語を中性的で知的なものと感じ、訛りであるとはみなさない。日本語では東京周辺の訛りを標準語と捉えるのと似ているだろう。
これに対して、アメリカ南部の訛りは肯定的にも否定的にも、一定の社会的イメージを聞き手に与える傾向がある。南部訛りのdrawlは親しみやすい印象を与える反面、あまり知的ではなく、ひどい場合には怠け者といった印象を呼び起こすようだ。
ミス・ミニッツが多くの視聴者に愛されるのは、南部訛りがのんびりした親しみやすさを連想させるからであろう。
■外見よりも訛りが重要
ここで日本の英語学習者にとって重要なのは、英語の訛り(アクセント)が人に与える印象である。
2011年に科学雑誌『Scientific American』のブログで発表された論考では、人を分類するとき人種的外見よりも言葉の訛りのほうが重要であるとされている。
2012年の別の研究では、シカゴに住んで北部の英語を話す子どもたちは、北部の英語の話者に肯定的な特性を結びつける傾向があるとされている。この研究によれば、南部訛りに対する社会的認知は両親が子どもに教え込むものであって、生物学的根拠はないそうである。
ミス・ミニッツはアナログ時計の丸い文字盤に手足の生えたようなキャラクターであるが、南部訛りのゆえに外見と関係なく親しみやすい印象を与えている。
逆に考えると、北部や西部の一般米語に近い発音で話すかぎり、話者は人種や外見に関係なく良い教育を受けた人間であるとみなされる可能性が高くなると言えよう。
日本の英語教育ではイギリス英語より米語に触れる機会が多い。このため相手に好印象を与えたければ日本人はまず一般米語を目指すのが近道である。
■英語の訛りにも注意して勉強しよう
だが、英語を母語とする教師であっても育った地域によって訛りがあることは避けられない。外国語として英語を学ぶ日本人は、教師だけに頼らずさまざまなメディアを使って英語の訛りを聞き分ける訓練をする必要がある。
生身の教師の来歴などを詮索するのは気が引けるが、映画やドラマならばインターネットなどでキャラクターの背景を調べることは容易である。標準的な英語と訛りのある英語を区別するのに、映画が適した教材である理由はこういった点にもあると言えるだろう。(記事:ベルリン・リポート・記事一覧を見る)
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