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ソニーとアップルはモビリティにどう関わるのか? ”クルマも売る会社”にランクアップするのはどっち?
公道走行テストを行うVISION-S試作車両(画像: ソニーの発表資料より)[写真拡大]
ソニーは昨年の「CES 2020」で、「VISION-S」という自動車のコンセプトモデルを発表して自動車関連業界を騒然とさせた。「VISION-S」とは,意訳すると「ソニーがイメージする(自動車の)未来像」ということだから、今までウォークマンなどの斬新な電化製品を世に送り出してきたソニーが、「自動車を販売するのか」という意味に受け取った人達の心に波を立てた。
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CES会場で取材を受けたソニーの担当者は、「あくまでデモ用での開発なので市販の予定はない」と答えたそうだから、公式には市販される予定はないことになっている。その後、発言内容が「(市販については)何とも言えない」と変わっているので、可能性の幅を確保しておく方向へ軌道修正したのかも知れない。
現実的に考えれば、自動車産業は事業分野の1つとして見るにはスケールが大き過ぎる。内燃機関の技術の結晶のようなエンジンは、何でも真似をする中国でさえ追走を逡巡するほどの高みに到達しているし、数万点と言われる部品のサプライシステムを構築することも、容易ではない。
内燃機関の縛りから解放され、部品点数も半減するため新規参入への障壁が低くなると言われたEVも、いざとなれば容易に進出できる分野でないことが明らかになって来た。
反面、テスラのように限られた車種のEVしか持たない新興の自動車メーカーでありながら、マーケットの期待を集めて時価総額で世界のトヨタを抜き去ることが出来るほど、EVへの期待は高まっている。そんな折の20年12月末には、スマホ大手のアップルが近い将来アップルカーを発売するという観測記事が話題を集めた。
アップルが以前から「プロジェクトタイタン」という名の基に、自動運転技術の蓄積を図ってきたことは再三報じられて来た。今回交錯する報道を吟味してみると、ソニーの「VISION-S」のような具体的なシルエットがあるというよりは、到達した自動運転技術と画期的なバッテリーにポイントがありそうだ。
完成が近いと報じられている「モノセル電池」とは、従来バッテリーパック内に欠かせなかったポーチやモジュールを不要にして、拡大したスペースに詰め込む電池材料を嵩上げすることで、より長い航続距離を実現するためのEVのキモだ。アップル側からコメントされたことのないアップルカー(仮)問題は、EVの最大のネックである航続距離問題の解決と、自動運転技術という新分野のフロンティアとなる目途が付いた時点に公表される筈だ。
ソニーの「VISION-S」は、オーストリアのナンバーを付けた公道の走行テストを(ヨーロッパのどこかで)実施中だ。ソニーのドローンとVISION-Sが並走する動画も公開されている。
ソニーの代表執行役社長兼CEOの吉田憲一郎氏は、「次のメガトレンドはモビリティだと信じている」と公言している。問題はモビリティの何を担うかだろう。存在感あり過ぎのVISION-Sを公表しているソニーが黒子に徹し切れるのか、世の中の期待に応えて”クルマも売るソニー”にランクアップするのか、決断を目の当たりにする日はそんなに遠くはないだろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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