見直されたJAXAの次期太陽観測衛星プロジェクト、NASAに採択される

2021年1月8日 17:26

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太陽大気の構造 (c) 国立天文台/JAXA、NASA

太陽大気の構造 (c) 国立天文台/JAXA、NASA[写真拡大]

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の次期太陽観測衛星「Solar-C_EUVST」が、米航空宇宙局(NASA)のHeliophysics(太陽物理学)ミッションに採択された。

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■1度は採択されなかった次期太陽観測衛星プロジェクト

 太陽観測衛星の打ち上げは、これまでも日本で実施されている。太陽観測衛星「ひので」(SOLAR-B)は2006年に打ち上げられ、太陽磁場や太陽コロナ、太陽フレアなど、多様で起きる活動や加熱現象の謎の解明を目指した。

 ひのでの観測により、太陽の表面上空にある温度1万度の採層には微小なジェットや波動現象が頻発していることが判明した。これを受けて、高分解能の画像と分光観測を実現する次期太陽観測衛星SOLAR-Cプロジェクトが、2013年に発足している。欧州宇宙機関(ESA)にSOLAR-Cミッション提案書が提出されたが採択されなかったため、JAXAはプロジェクトの見直しに迫られ、小型衛星Solar-C_EUVSTの提案を行った。

■NASAが採択した2つのミッション

 Solar-C_EUVSTを採択したNASAのHyliophysicsミッションは、太陽や周辺の宇宙環境への影響を調査することが目的だ。太陽から吹きつける太陽風は、地球の極域で観測されるオーロラの原因であるだけでなく、地球上の通信機器にも障害をもたらす。Hyliophysicsミッションは太陽風などのメカニズムの理解を目指し、地球上の機器の障害を予測するために役立てるという。

 Hyliophysicsミッションで採択された2つのミッションのうち、1つがSolar-C_EUVSTだ。太陽コロナの加熱を説明する枠組みとして、磁場が微小な爆発現象を発生させるという「名のフレア説」と、太陽表面のエネルギーが磁場を伝わる波によって上空へと伝わるとする「波動加熱説」がある。Solar-C_EUVSTはナノフレアや波動加熱の現場を捉えることで、太陽コロナの加熱の謎に迫る。

 採択されたもう1つのミッションは、米ジョンズ・ホプキンス大学が主導する「EZIEミッション」だ。同ミッションでは、地球の磁気圏とオーロラとをつなげる地球大気中の電気の流れを調査する。

 両ミッションとも、2020年代中盤に実施される予定だ。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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