ADR再生組のアルデプロが3期ぶりに黒転する理由は「原点回帰」

2020年9月10日 16:36

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 創業は1988年。2008年には東証マザーズ市場に上場。それなりに着実に階段を昇ってきた。だが上場早々に、リーマンショックで「経営破綻の危機」を余儀なくされた。

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 しかし振り返ると、運が備わっていたのかもしれない。07年に事業再生ADRが法制化されていた。裁判所を全く介することなく、債権者と相対で会社再生を図る道である。現社長で、司法書士事務所から監査役に転じたばかりだった椎塚裕一氏は「ADRでなんとか乗り切った」と薄氷の頃を振り返る。

 アルデプロ。東証2部上場の「不動産再活事業」を展開する企業である。東京都心の5区(千代田・中央・新宿・港・渋谷)を主戦場に老朽化したビルやマンションを取得。バリューアップを施しデベロッパーに売却する事業が主体。不動産業界では決して珍しくない、ビジネスモデルである。

 ただアルデプロには強みがある。「権利調整」を伴う物件を得手とするノウハウを有しているという点だ。買い取る側のデベロッパーにとっては、「便利な存在」である。椎塚氏は、強みを具体的にこんな風に語っている。

 「権利調整で多いのは、法定自動更新(契約時に更新に関し定めが確認されていない場合、自動更新となる)でテナントが30-40年と長期にわたり入居しているケース。築古の物件が殆どで、管理状態も悪い。顧問弁護士を仲介役に法的解決を図るが、一方で私どもが入居者の条件に極力見合う転居先マンションやビルを探して提供する。分譲案件の場合、相続人の間で揉めるケースが少なくない。大方の場合、分配(金)という形で決着するが当社で金額を提示し買い取ることになる」。「権利調整に強み」と言っても、決して容易ではない。それが仕切れるからこそ、デベロッパーの信任も厚いと言うことなのだろうが・・・

 そんなアルデプロが18年7月期・19年7月期、連続して赤字という窮地を余儀なくされた。遠因はADR再生。直接の引き金は不動産市況の好調。「再生の過程でスタッフを大幅に絞り込んだ。結果、効率を重視するばかりに大型案件を目指す方向に向かった。1物件100億円以上のものを幾つか保有し権利関係をきれいにしてデベロッパーに卸していた。だが大型案件の場合売却できず期ずれが起こると、売り上げがごそっと落ち込んでしまう」と背景を語った上で、椎塚氏はこう語っている。「原点回帰しか選択肢はなかった。在庫回転率が年間3-4回の中規模物件への特化策に賭けた」。

 今7月期は、期中に上方修正を実現した。営業・経常・最終の各段階で黒字転換(9月の決算発表を待たなくては、断言はできないが・・・)。

 企業経営にも「困った時の原点回帰」は必要なのかもしれない。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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