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日産復活は財務分析では語れない クルマは新車開発と販売戦略だけの世界ではない
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次の日経ビジネスの記事を読んでみてほしい。「財務で分析 「外科手術なき」日産復活シナリオ」。財務分析によって、現在の日産の進むべき道を探っている記事だ。しかし、「製造業」を語れていない。クルマのビジネスモデルを捉えておらず、「投資感覚」を追及しているに過ぎない。『クルマは新車と販売戦略だけの世界ではない』と言いたい。
拡大路線では「生産設備拡大」、減産局面になれば「生産設備売却」となった時、「拡大に走りすぎた」と反省すれば済む問題ではない。新車投入と販売戦略が実績をあげる場面と、外れる場面がある。さらに、COVID-19の感染拡大が起きたように、予想出来ない問題が売上を上げたり落としたりすることもある。それが商売だ。
自動車産業は設備産業でもある。そのため固定費が膨大で、減産局面では重荷となる要素も大きい。しかし、物流やサービス業と比較して、「かわし方」もたくさん考えられる。カルロス・ゴーン元会長が20年前に行った「日産リバイバルプラン」のように、含み益を現金化して「特別利益」を計上し、V字回復をアピールする方策もある。
しかし、そうした財務テクニックだけでは根本的解決にはならない。財務体質を決めるのは、現実の「金の動き」だ。売上の割に設備投資が多ければ「拡大路線」であり、その後の売上がついてこなければ失敗と言われ、かといって先行投資しなければ拡販もできない。これが「資金繰り」の場面となる。これらを少しでも楽にする方策は「なんであるのか?」
その意味では、カルロス・ゴーン元会長が拡販路線を進めていたこと自体は誤りとは言えないが、売上増に結び付かなかった時、現在のような設備過剰状態になる。その設備そのものの中身は検証しないのか?結果として販売戦略の見直しが必要ではある。
だがそもそも売上高10%減で、「赤字になる体質」と「黒字を保てる体質」とは「何が違うのか?」を考える必要がある。インダストリー4.0においては主題と言える。
20年前、日産は同じように財務的に追い詰められていた。現状よりも、はるかに緊迫していたと言える。その体質の弱さとはどうして出てくるのであろうか?逆に、いつも、相対的にトヨタの減産に強い体質が見えるのだが、資金効率の差が生まれるのはどうした技術であるのだろうか?
商品であるクルマの魅力について常に話がいくが、日産の「クルマに魅力が足りない」、或いは「新車投入が少ないから」で語りつくせる内容であるのだろうか?「目に見えるので気が付く」のが販売と開発なのであろう。
トヨタは現在の減産の時期でも、小型車5月販売実績トップの魅力ある商品(ヤリスなど)を出し続けているのだが、それが現在、トヨタが設備売却、リストラに走らなくても済む理由の全てなのであろうか?財務数字でその理由を語れる専門家を私は知らない。
ならば、トヨタが全力で推し進めている「TNGA」とは一体何なのか?それに注目出来ない、経済・自動車など各分野のジャーナリストが大半だ。「もの造り」の本質を見ることが必要だ。それがクルマのビジネスモデルだからだ。
財務は結局のところ「結果論」に過ぎないのであり、「アーキテクチャー」ではないのだ。財務数字をいじるのは「小手先」のテクニックに過ぎないことを基礎に据えるべきだ。以下の記事を読んでほしい。
財経新聞 https://www.zaikei.co.jp/article/20200519/566839.html
マツダ、ホンダ、日産、生き残れるのか? (1)~(18) 【前置き】誤解するので読まないでほしい~
財経新聞 https://www.zaikei.co.jp/article/20200601/568926.html
『クルマは造り方を売っている (1)~(2)』日産、赤字転落を受けて改革成功の見込みは?~
財経新聞 https://www.zaikei.co.jp/article/20200604/569439.html
『クルマは造り方を売っているII』(1)~(5) BMW先行か? AIで「マスカスタマイゼーション」(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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