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過去4番目の下げ幅を記録したアメリカダウ平均株価の展望
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6月11日、ニューヨーク株式市場のダウ平均株価は、過去4番目の下げ幅となる前日比1,861ドル安を記録して25,128ドルとなったが、その要因となったのは新型コロナウイルスの第2波への懸念と、FRB(米連邦準備理事会)の悲観的な経済見通しといえよう。
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コロナショックで暴落した株価のV字回復は、今年11月に再選を目指すトランプ大統領として絶対に譲ることができない最重要課題ではあるが、それは、トランプ大統領就任からの株高が政権の後ろ盾となっているという理由に他ならない。国際社会におけるトランプ大統領の傍若無人な立ち振る舞いに関しても、その株高によって許容されてきた部分が少なからずあるのだろう。
実際に、2017年1月のトランプ大統領就任時は19,827ドルだったダウ平均株価は、そこから約10,000ドルも押し上げられ、2020年2月には29,551ドルにまで達したのは紛れも無い事実である。しかし、今回のコロナショックでその上げ幅は完全に吹き飛ばされ、2020年3月23日には18,591ドルと、この3年半のトランプ大統領の功績を無かったことと同じにする事態となったのだ。
このままでは再選が危ういとみたトランプ大統領は、FRBに半ば圧力をかける形で、ゼロ金利への利下げはもとより、量的緩和の再開や、ご法度ともいえるCP(コマーシャルペーパー)の直接買い取りまで行わせ、実態経済とはおおよそかけ離れた株価のV字回復を演出してきた。この上昇は企業業績やファンダメンタルに基づいたものではないことは明らかである。
しかしながら、カンフル剤を無理やり注入された張りぼてともいえる株価は、トランプ大統領が求める経済活動の早期再開も起因と考えられているコロナウイルスの感染拡大の中で、本格的な景気回復には時間がかかるとの見方を示したFOMC(米連邦公開市場委員会)の声明要旨によって、再び現実に引き戻されることになる。そしてその結果、脆くも2,000ドル近くもの株価が崩れ去ったというわけだ。
経済再開を優先したテキサス州やアリゾナ州では新規感染者が右肩上がりとなる一方で、感染防止を優先したニューヨーク州やニュージャージー州は対照的に減少傾向であるという事実がある以上、経済活動の正常化と感染拡大の綱引きは今後も当面の間、続くことになるであろう。そして、株価についても、アメリカのコロナウイルス感染拡大の状況に、ますます正比例していくことになるといえるだろう。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る)
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