マツダ、ホンダ、日産、生き残れるのか? (12) トヨタの自信の裏付け「TNGA」の「平準化」

2020年5月29日 20:50

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 トヨタが世界の自動車メーカーに対して優位に立っているのは、「トヨタかんばん方式」と呼ばれる生産方式のおかげであった。その代わりと言っては何だが、先進性や操縦性については「60点主義」であったのだ。

【前回は】マツダ、ホンダ、日産、生き残れるのか? (11) トヨタが今期決算予測を出したことの意味

 それが近頃、世界に追いついていると感じさせる出来になってきた。カローラ、ヤリスなどは、「乗って見れば良さが分かる」と言えるレベルになってきている。これらの商品力をもつ車種を作り出す技術は、「商売のトヨタ」と現在でも言わしめる先進性がある。

 その成果の元は、世界の生産拠点をまたぐ「平準化」のシステムだ。これが、今回のパンデミックにより未曽有の減産に追い込まれた現在、頼みの綱であり、世界の自動車メーカーを先導する存在となっている。

 日産自動車は、前期(2020年3月期)決算で6712億円(構造改革費用と減損損失6030億円を含む)の赤字となった。今期(2021年3月期)決算は絶望的だが、それで済む内容ではないだろう。赤字体質はパンデミック前からで、それに2、3月の売上げ急減が襲い、ルノー・日産・三菱アライアンス3社とも赤字転落である。

 選択と集中の中期改革案は理論的に正しい方向性と見えるが、パンデミックの衝撃を受け止めるには手遅れだ。リストラと金融手当でしのぐしかないが、どこまでを余剰設備と見たら良いのかも判断できない現状では難しい。

 これはトヨタも同じであろう。しかし、トヨタは既に巣籠を始めているはずで、耐えられる期間により差が出るであろう。言い換えると、「日産は巣籠出来ない」状態と言える。

■トヨタの自信の裏付け「TNGA」の「平準化」

 トヨタの豊田章男社長は「アフターコロナで牽引役となる」と自信を示しているが、少々甘い気がする。もちろん、トヨタの自信の背景は「TNGA」である。減産時に、変動費はもちろん固定費も変動させて、赤字を防ぐ力だ。それがリーマンショックでの赤字転落で、従来の「トヨタかんばん方式を信じ切ってきて機能させていなかった」ことを学んだ結果、カイゼンして生み出されたものだ。

 もう1つ、「TNGA」の狙いで重要な機能は「平準化」だ。製造販売では、「売れるところで造る」ことがコスト低減には有効だ。また、稼働率が下がった生産拠点(ラインを中心にしたサプライチェーン)に、生産能力がいっぱいとなった生産拠点から生産を移動させることで各生産拠点の稼働率を「平準化」する。そうすると、稼働率が上がる。コストが下がると同時に、ムダな設備投資を抑えることが出来る。構造改革費用が発生しない生産構造だ。「初めからムダな投資をしない構造」とも言える。

 これは決算書では分かりにくいが、最終的には有利子負債の削減になって現れる。その逆をしてしまって倒産したのが、かつての日産だ。ホンダの実情は分からないが、利益率が悪いことは新規開発費などの抑制につながってしまう。ますます「技術を買ってこい」となる。

 現在、利益率を上げるには、世界の生産拠点を結んだ「スイング生産」が出来ることが必要だ。地場のサプライチェーンの品質レベルも含めての確立が前提だ。つまり、生産拠点すべての「品質レベル」を統一しておかねばならない。これには、設計段階からのサプライヤーの参加なども進めねばならない。

 この概念は、ネット機能を利用した「第4次産業革命」につながる基礎となる部分であり、今回のパンデミックによる思わぬ世界的減産で、その実力が試されることとなった。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

続きは: マツダ、ホンダ、日産、生き残れるのか? (13) 「減算資金・増産資金」極限は「信頼」で

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