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地球の水、起源は普通の隕石の可能性も 星間有機物から生成再現 北大など
地球に水が誕生する3つの過程(写真:北海道大学の発表資料より)[写真拡大]
宇宙航空研究開発機構(JAXA)によるはやぶさ2が、小惑星リュウグウからサンプルを持ち帰る目的のひとつとして、地球上の生物の起源を探ることがある。水もまた生命の源であるが、リュウグウのように炭素質の天体が起源だと考えられている。北海道大学などの研究グループは12日、星間分子雲内の有機物から水が生成されることを実証したと発表した。従来説の炭素質隕石ではなく、普通隕石からでも地球上の水誕生を説明できるという。
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■地球が水をもつ謎
地球に水をもたらした物質として、彗星の氷や炭素質隕石がこれまで考えられてきた。だがチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の探索により、重水素を含む水の割合が地球上の海よりも大きいことが判明し、彗星が水をもたらしていないことが判明した。炭素質隕石もまた、地球に水を多くもたらしすぎてしまうため、地球の水の起源は謎とされてきた。
■宇宙空間に多く存在する星間分子雲
「星間雲」と呼ばれる恒星間に存在するガスや微粒子の集まりの中でも、密度が高く水素分子を含むものが星間分子雲だ。銀河系には、太陽の質量の約10万倍もの星間分子雲が存在し、星の総質量の約1%を占めるという。
北海道大学、桐蔭横浜大学、岡山大学、九州大学、海洋研究開発機構、東京大学などの研究者から構成されるグループは、太陽系内で水が液体から固体に変化する「雪線」より内側において、星間有機物が普通隕石でどう変化するかを実験で調べた。
星間有機物は、星間分子雲に紫外線を照射することで誕生すると考えられるため、実験室で再現し加熱過程を顕微鏡で観察した。その結果、水が350度、石油が400度で生成することが確認された。生成された石油は地球上で産出するものと似ているという。
炭素質隕石がなくとも、地球の水の起源が説明できる可能性があると、研究グループは考察している。また小惑星や氷の衛星内部に石油が大量に存在することが示唆されるという。
■2020年末に帰還するはやぶさ2の試料
リュウグウを出発したはやぶさ2は、2020年末に採取したサンプルを帰還させる予定だ。研究グループは今後、その試料中の有機物を分析することで、地球型惑星内の水や有機物の起源が判明するだろうと期待している。
研究の詳細は、国際オンライン雑誌Scientific Reportsにて8日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)
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