関連記事
ロータリーエンジン車待望論
第59回ルマン24時間耐久レース優勝車 マツダ787B(画像: マツダ許諾済み)[写真拡大]
●ロータリーの燃費問題
1970年の大気浄化法改正法は、通称マスキー法(Muskie Act)と呼ばれ、当時の米国ビッグ3はもとより、欧州メーカーも軒並み達成不能を表明、世界的に達成不能と云われた米国の排気ガス規制である。
【こちらも】ロータリーエンジン不評要因の分析
この「マスキー法」を、日本の「マツダREAPS」と「ホンダCVCC」だけがクリアした。
当時のマツダは、「マスキー法」を突破するには、多少燃費に目をつぶっても、規制をクリアすることを優先した。その結果、直後に起こった石油危機で、燃費面での悪評を受けることとなった。
その後、マツダは燃費性能向上に尽力し、大幅な改善実績を残した。
ロータリーエンジン開発から、燃費40%改善へのプロセスは、NHKの“プロジェクトX 第028回 「ロータリー47士の闘い」 ~夢のエンジン 廃墟からの誕生~”に詳しい。
●燃費も大きなルマンの勝因
1991年に、マツダが日本車で初めて、ルマン24時間レースで総合優勝をしたことは、世界的にも驚異の目で見られた(写真は、第59回ルマン24時間耐久レース優勝車 マツダ787B)。
この様子は、“プロジェクトX 第029回 「ルマンを制覇せよ」 ~ロータリーエンジン 奇跡の逆転劇~”で、詳しく描かれている。
ルマンで優勝するということは、レーシングカーとして、燃費性能を含む総合性能が非常に優れていたことの証だ。エンジン性能やサスペンション性能、ブレーキ性能等々、すべてが相まっての「総合性能」だが、燃費性能の良さは、これらのすべてに関係して来る。
燃費が良くて、燃料タンク容量が小さく出来るということは、車両重量に影響する。
ガソンの比重は0.72~0.76だが、グラム単位で軽量化に苦労する車体重量が、たとえ10リッター積み込むガソリン容量を少なく出来るだけで、7.2~7.6㎏の軽量化に相当する。
車両重量が軽ければ、ブレーキの負担も軽減され、サスペンションに対する負荷も有利に働く。
また、燃費が良ければ給油ピットイン回数が少なくなるし、ピットストップ時間の面でも、1回の給油時間は、給油量が少なければ当然それだけ短くて済む。
サバンナRX-3がスカイラインGT-Rの連勝記録を49勝でストップさせたレースカテゴリーでは、サバンナのレース用ロータリーエンジンに、それ以上燃料を食わせようとしても食わない限度の「最悪燃費」は、ライバルの燃費より良かったのだ。
唯、市販車で燃料噴射が普及する以前の、当時のキャブレター仕様のロータリー車は、「2ステージ4バレル」のでっかいキャブレターを装備していた。
このキャブレターのアイドリング流量は2000ccクラスのレシプロエンジンよりも大きかった。
アイドリングで停車していたら、当然2000㏄クラスの車よりも食う量は多いから、市街地走行や渋滞時の燃費が悪く、これが一般的に「ロータリーは燃費が悪い」とされる評価に繋がっていた。
●ロータリーエンジンの今後に期待
RX-8が2012年6月22日に生産終了して以降、現在ロータリーエンジン車は販売されていない。
しかし将来的には、水素インフラが整備されれば、「燃料電池車」と共に、「水素燃料エンジン車」が環境対策の旗手としてなり、水素燃料車のエンジンに最適なロータリーエンジン車に輝かしい未来が待っているかもしれない。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る)
スポンサードリンク