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宇宙の大規模構造のパターンをAIで正確・高速に予測 京大などが開発
研究グループが開発したAIツール「ダークエミュレータ」の概要 (c) 京都大学基礎物理学研究所、国立天文台[写真拡大]
宇宙上の物質分布は一様ではなく、銀河が網状に散らばった構造をしている。宇宙の大規模構造について深く理解することは、宇宙の進化に大きく関与するダークマターやダークエネルギーの謎を解くうえで重要である。国立天文台は5日、宇宙の大規模構造の観測量を正確かつ高速に計算できる人工知能(AI)ツールの開発に成功したと、発表した。
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■網状に分布した宇宙の大規模構造
宇宙は主に、「バリオン」と呼ばれる普通の物質や、可視光線で見えないダークマター、ダークエネルギーから構成されている。
初期の宇宙では、バリオンやダークマター等の物質は均一に分布していた。だがわずかに存在した密度のゆらぎが重力により増幅され、銀河がほとんど存在しない「ボイド」や銀河が密集した「フィラメント」など多様な構造が宇宙を織りなしている。
大規模構造を観測し分析することで、宇宙の進化に大きな影響を及ぼすダークマターやダークエネルギーの謎を解くことが期待されている。世界中で宇宙の大規模観測が計画あるいは実施されるなか、取得されたデータを分析し有用な知見を導くためには、物理理論にもとづいて宇宙の構造進化について正確に予言することが必要だという。
だがだが数十万から100万にも及ぶ宇宙論モデルの精巧な計算が必要で、膨大なシミュレーションを実行するのは困難だった。
■AIが計算量を劇的に減らす
京都大学、東京大学、弘前大学、国立天文台、名古屋大学の研究者から構成されるグループは、問題解決のためにAIの一種である機械学習に注目した。研究グループが開発した機械学習装置「ダークエミュレータ」は、シミュレーションを新たに実施することなく、新しい宇宙モデルに対して予想される観測結果の理論予言を可能にした。
ダークエミュレータを活用すれば、「弱重力レンズ効果」と呼ばれる重力場により生じる銀河の像の歪みや銀河の空間分布に関する実際の観測結果を、誤差2%から3%程度の精度で予言可能になるという。
今後は、すばる望遠鏡の観測で取得した宇宙の大規模構造のデータ分析や、AIを用いた宇宙ビッグデータ分析にダークエミュレータが貢献するだろうと、研究グループは期待を寄せている。
研究の詳細は、米天文物理学誌Astrophysical Journalに2019年10月8日に掲載された。(記事:角野未智・記事一覧を見る)
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