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バイオマスの有効利用へ 微生物使い有用化学物質を高効率で生産 神戸大など
神戸大学、理化学研究所、科学技術振興機構は15日、バイオマスから微生物を使いナイロンの原料に簡単に転換できるムコン酸等の有用な化学物質を、高効率で生産する技術(以下、PMPE技術)を開発したと発表した。研究グループでは、バイオリファイナリーを前進させ、脱炭素社会の実現に大きく貢献できるのではないかと期待している。
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■バイオリファイナリーとは?
現在、地球温暖化が大きな問題となり、脱炭素社会の実現が急務になっている。
この観点から、石油、石炭等の化石資源をバイオマスで代替し、燃料や化学製品をつくる研究が世界中で進んでいる。これがバイオリファイナリーだ。その代表的なものとしては、バイオ燃料やバイオプラスチックがある。
このようなバイオリファイナリーの背景には、カーボンニュートラルの考え方がある。バイオマスは成長する過程で大気中の二酸化炭素を吸収している。そのためバイオマスを利用することによって二酸化炭素が排出されても、大気中の二酸化炭素の総量としてはプラスマイナスゼロというわけだ。
しかし、石油や石炭といった化石資源をバイオマスで代替するには、いくつか高いハードルがある。その一つが、微生物を使った場合の有用な化学物質の生産効率の悪さだ。
微生物は自分の中に取り込んだ糖を、自分自身の生存や成長、増殖のために使ってしまう。かと言って、これを抑えてしまうと微生物は弱ってしまい、やはり有用な化学物質の生産効率は悪くなってしまう。
■PMPE(Parallel Metabolic Pathway Engineering)技術を開発
そこで研究グループは、大腸菌の遺伝子を改変して、糖が代謝される経路を別々に二つに別けた。一つの経路ではグルコースを使ってムコン酸が生産され、もう一つの経路ではキシロースを使って大腸菌自身が生存、成長、増殖するためのエネルギー等が生産される。
このようにグルコースとキシロースの代謝の経路を別々にすることによって、グルコースはムコン酸の生産のためだけに使われるようになり、ムコン酸の生産効率が劇的に向上した。研究グループによれば、ムコン酸の生産量は、最大で、コントロール株群の8倍、既存の技術を用いた株群の6倍にもなるという。
またこの技術は、ムコン酸以外にも、医薬品等の原料となるフェニルアラニン、食品添加物等に使われる1,2-プロパンジオールにも応用可能なことが確認されており、他にも医薬品や化学製品の原材料となる、さまざまな有用な化学物質に応用が可能だという。
研究グルーブでは今後、さまざまな有用な化学物質の原料について、石油や石炭等の化石資源をバイオマスに代替することが可能となり、特に食料と競合しない木や草等の未利用バイオマスへの代替も視野に入れ、脱炭素社会の実現に大きく貢献できるのではないかと期待している。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)
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