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【ブロックチェーン・STO関連銘柄特集】新たな金融サービスの広がりに期待
ブロックチェーンの技術を活用した新たな金融サービスの広がりに注目したい。フェイスブック主導の暗号資産リブラ構想が発行延期に追い込まれるなど不透明感もあるが、一方ではSTOと呼ばれる新たな資金調達手段を実用化する動きも見られる。[写真拡大]
■株式市場における主要テーマとして注目
ブロックチェーンの技術を活用した新たな金融サービスの広がりに注目したい。フェイスブック主導の暗号資産リブラ構想が発行延期に追い込まれるなど不透明感もあるが、一方ではSTOと呼ばれる新たな資金調達手段を実用化する動きも見られる。ブロックチェーンというのは、高い透明性や信頼性に加えて、低コストでの金融サービスが可能という特徴があり、金融業界に革命を起こすと期待された技術である。ブロックチェーンを基盤技術とするデジタル通貨・証券など、中長期的に新たな金融サービスの広がりが期待される。(日本インタビュ新聞社 シニアアナリスト・水田 雅展)
■ブロックチェーンとは・・・
ブロックチェーン(Blockchain=分散型台帳)というのは、データベース(取引台帳情報)を共通化・共有化する分散型コンピュータネットワークのことである。
取引データ(履歴)をトランザクションと呼び、一定時間ごとに複数のトランザクションをまとめてブロックと呼ばれる塊を生成する。そして順次新しく生成したブロックを鎖(チェーン)状に連結して保存していく。このようにデータベースのブロックをチェーン状に保存していく技術がブロックチェーンである。
各トランザクションはハッシュ関数(不規則な文字列であるハッシュ値を生成する関数)によって暗号化される。ハッシュ値には不可逆性があるため、暗号化された各トランザクションを取引履歴としては確認できるが、各トランザクションの元データの内容を読み取ることや書き換えることはできない。また各ブロックデータには直前のブロックデータのハッシュ値との整合性が取られているため、理論上は一度記録すると各ブロックデータを遡及的に変更することができない。
つまり取引履歴は誰でも確認できるが、取引データを改ざんして不正を働くことが難しく、高い透明性や信頼性が特徴とされている。
またパブリック型チェーンの場合は銀行のような管理機関が存在せず、さらに特定のサーバを介さずに、相互接続したP2P(Peer to Peer)ネットワーク参加者によって分散型で管理されるため、システム障害の影響を受けにくく、さらに金融機関を介さないため、低コストで各種金融サービスを提供できることも特徴とされている。管理者が存在するプライベート型チェーンの場合も、決済サービス運用や金融システム管理などへの活用が期待されている。
このような特徴を持つブロックチェーンを基盤技術として、実物法定通貨(各国の中央銀行が発行する紙幣・硬貨)からデジタル通貨(仮想通貨、暗号通貨、暗号資産とも呼ばれる)への移行、新たな金融サービス(デジタル通貨・証券による預金・送金・決済・証券化・資金調達・資産運用など)の実現など、中長期的に金融業界に革命を起こすと期待されている。
■ビットコイン相場に対する投資家の注目度は低下
ブロックチェーン技術を活用して、いち早く誕生したのがビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの暗号資産である。暗号資産は、紙幣や硬貨のように各国の中央銀行が発行する実物の法定通貨ではなく、コンピュータネットワーク上で記録される取引データの集合体である。ブロックチェーンによって分散管理・存在証明され、コンピュータネットワーク上で経済価値交換という形で取引される。
暗号資産は、それを使って直接購入できる店舗・物品・サービスの増加が普及に向けての課題とされるが、現状は投資対象として、あるいは実物法定通貨の価値変動リスク回避の手段として利用されている。世界で1000超の種類の暗号資産が発行され、暗号資産価格情報サイトのCoinMaeketCapによると、19年12月時点で世界約300のネット上の交換所で取引が行われ、その時価総額(米ドル換算ベース)は約2000億米ドルとなっている。
代表的な暗号資産であるビットコインは、08年に「サトシ・ナカモト」の名で公開されたブロックチェーンの論文を基にして、09年に最初の暗号資産として運用を開始し、最も多い取引量を誇っている。ビットコインの相場は17年に急騰した。その一因としてICO(イニシャル・コイン・オファリング)の流行によって投機資金が流入したことが挙げられている。
ICOは企業が独自に暗号資産を発行して投資家に販売する資金調達方法である。ICOで発行される暗号資産は発行者・管理者が存在し、ユーティリティ・トークン(しるし、証拠品などの意味から派生して電子記録、デジタル権利証などの意味)と呼ばれる。
株式を発行して資金調達するIPO(イニシャル・パブリック・オファリング)に比べて、ICOではユーティリティ・トークンを発行する際に証券会社を介する必要がなく、上場審査もないため、ベンチャー企業などが簡単に資金調達できる方法として注目された。
しかし実体のない詐欺的なICOが多発したため投資家が不信感を強めた。そして主要各国の金融当局による規制が強化されて流行が終焉した。ICOの流行終焉に伴い、ビットコイン相場は17年12月~18年1月の高値圏から急落してバブル崩壊したと言われている。
さらに世界中で発生した交換所における暗号資産流出や、主要各国の金融当局による規制強化なども影響して、暗号資産に対する投資家の注目度は低下している。ビットコイン相場は19年にやや回復したものの、その後に価格操作疑惑が発覚したこともあり、投資家の注目度に大きな変化はない。
■フェイスブックのリブラ構想は発行延期
フェイスブックは19年6月にデジタル通貨Libra(リブラ)構想を発表し、20年前半の発行を計画していた。しかし巨大なプラットフォーマーのデジタル通貨参入によって、国家経済の根幹である通貨の秩序が揺さぶられかねないと、主要各国の金融当局から警戒された。
フェイスブックにおいて個人情報流出が相次いでいたことも影響して、19年7月のG7(主要7カ国)財務相・中央銀行総裁会議では「資金洗浄、プライバシー、消費者保護の観点からリブラ構想には深刻な懸念がある」「最高水準の規制を満たす必要がある」との懸念が表明された。
そしてペイパル、イーベイ、ビザなどが相次いで加盟見送りを表明し、19年10月にはフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOが米下院金融委員会で、個人情報漏えいなどに対する金融当局の懸念を解消するまで発行を延期すると証言した。
フェイスブックは国境を越えた個人間の送金や買物の決済など、低コストで利便性の高いサービスの提供を目指したが、国の法定通貨に代わるデジタル通貨は容認できないという金融当局の警戒感が強く、発行が延期に追い込まれた。
【新たな動きとしてSTOに注目】
■STO関連ビジネスを模索する動きが急速に活発化
こうした状況下で新たな動きとして注目されているのが、STO(セキュリティ・トークン・オファリング)である。
STOはブロックチェーンを活用し、株式や不動産などの実物資産をデジタル証券化する形でセキュリティ・トークンを発行し、投資家に販売することで資金調達を行う。
流行が終焉したICOに似ているが、ICOの場合は実物資産の裏付けを持たないユーティリティ・トークンを発行するため、資金調達に向けたスキーム上の自由度は高いが、ユーティリティ・トークンの理論値の計算が難しく、結果的に詐欺的なICOも多発した。そして投資家が不信感を強め、金融当局による規制が強化された。
これに対してSTOの場合は、株式や不動産など実物資産の裏付けを持たせ、法令上の有価証券(金融商品)の機能が付与されたデジタル証券をセキュリティ・トークンとして発行する。この点がICOと大きく異なる。
不動産などを小口証券化して販売する手法を、ブロックチェーン技術を活用してデジタル証券に置き換えた形である。実物資産の価格をベースとしてセキュリティ・トークンの理論価格を計算しやすく、法令上の有価証券として発行するためICOに比べて投資家に安心感を与えやすいため、機関投資家を中心に幅広い投資マネーを呼び込めると期待されている。
海外ではSecuritize社など多くの企業が、STO関連ビジネスの法的対応や標準化に向けた動きを活発化させている。
日本では19年5月に資金決済法と金融商品取引法が改正され、法令上の呼称が仮想通貨から暗号資産に変更された。交換業者やICOに対する規制が強化されたが、一方では金融商品取引法上の定義見直しによって、暗号資産が電子記録移転権利として金融商品(第1項有価証券)に追加された。
このため同法が施行される20年春以降には、セキュリティ・トークンを利用した資金調達の本格化が期待されている。そしてメガバンクや証券などの金融業界を中心に、セキュリティ・トークンを用いた不動産の小口証券化や社債の小口販売、株式型セキュリティ・トークンによる資金調達など、STO関連ビジネスを模索する動きが急速に活発化している。
19年10月にはSBI証券(SBIホールディングス)<8473>など証券6社が、STOの自主規制策定などを行う日本STO協会を設立した。19年11月には三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)<8306>が、セキュリティ・トークン取引システム構築に向けて21社が参加するコンソーシアムを発足させた。
マーチャント・バンカーズ<3121>は企業や不動産への投資事業を展開し、STO支援などブロックチェーン関連の新ビジネスを本格化させるための準備を進めている。
■STO普及とともにステーブルコイン発行増加の可能性
暗号資産の中には、為替ペッグ制(自国通貨と米ドルなど特定通貨との為替レートを一定に保つ制度)のように、米ドルや円などの法定通貨によって価値を裏付けるなどの方法で、価格の安定性を持たせるステーブルコインがある。担保対象によって法定通貨担保型、暗号資産担保型、無担保型に区分される。
ビットコインなど多くの暗号資産では、通貨として利用するにあたって価格の不安定さ(ボラティリティの大きさ)が課題と指摘されているが、ステーブルコインは価格を安定させることで預金・送金・決済等に利用しやすくなり、投資家の資産価値を守ることにもつながる。
ステーブルコインのうち、暗号資産担保型と無担保型については安全性を疑問視する見方もあるが、法定通貨担保型については法定通貨の安定価値と暗号資産の自由度を兼ね備えていると言われている。そして実物資産の裏付けを持たせるSTOの普及とともに、セキュリティ・トークンとしてのステーブルコイン発行増加の可能性が指摘されている。
世界にはTether(テザー)など多くのステーブルコインが存在している。発行延期となったが、フェイスブックのリブラ構想も法定通貨や国債を裏付け資産とする計画のため、ステーブルコインの一種とされている。また日本ではGMOインターネット<9449>が、日本円に担保された円ペッグ通貨として、独自の法定通貨担保型ステーブルコインの発行準備を進めている。
■世界各国がブロックチェーン研究に取り組み
ブロックチェーンは金融革命を引き起こすとも言われる技術であり、金融以外の分野でもイノベーションをもたらすと期待されている。
このため世界各国の中央銀行や国際機関も、フェイスブックのような巨大なプラットフォーマー参入によって、国家経済の根幹である通貨の秩序が揺さぶられかねないと警戒しながらも、一方では法定通貨としてのデジタル通貨・証券発行に向けて、ブロックチェーン研究に取り組む姿勢を強めている。
世界銀行(国際復興開発銀行)は18年8月、世界で初めてブロックチェーンを活用したブロックチェーン世銀債bond-iを発行して1.1億豪ドルを調達した。さらに19年8月には2度目のブロックチェーン世銀債を発行して0.5億豪ドルを追加調達した。ブロックチェーンによって流通市場での売買取引を可能にする機能も追加した。
中国は17年に投資家保護の名目で暗号資産取引やICOを全面禁止したが、ブロックチェーンについては国力を高めるために必要な次世代技術と位置付けて、ブロックチェーン技術の応用やデジタル人民元の発行に向けて研究に取り組んでいる。19年10月には習近平主席が、中国共産党中央政治局が開いたブロックチェーン関連の研究会に出席し、国家戦略としてブロックチェーンを経済・社会に導入するため、ブロックチェーンに対する投資を加速する考えを示した。
■FinTechの流れは止まらない
FinTech(フィンテック)というのは、Finance(金融)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語である。ブロックチェーンを活用したFinTechの流れは止まらない。
中長期的にブロックチェーンを活用した新たな金融サービスが期待され、金融以外の分野にもイノベーションの広がりが期待される。したがって、単にビットコインなど暗号資産の相場動向だけでなく、株式市場における主要テーマとしてブロックチェーン関連全体を注目したい。
■主なブロックチェーン・STO関連銘柄一覧
・マーチャント・バンカーズ<3121>(東2) ・インタートレード<3747>(東2) ・アイビーシー<3920>(東1) ・野村総合研究所<4307>(東1) ・デジタルガレージ<4819>(東1) ・三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)<8306>(東1) ・SBIホールディングス<8473>(東1) ・大和証券グループ本社<8601>(東1) ・野村ホールディングス<8604>(東1) ・GMOインターネット<9449>(東1) (情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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