関連記事
宇宙の未解決問題を正確かつ高速に解くAI NASAがIBMやGoogleと連携
我々の生活を裏から支えるAI技術。計算量の多い問題でも正確かつスピーディに解けるのが特徴だ。宇宙開発や天文学等の分野では望遠鏡によって収集された大量のデータが存在するため、AIが活躍できる格好の機会が与えられている。IBMやGoogleといったAI関連企業と連携し宇宙科学の問題を解くのが、米航空宇宙局(NASA)である。
【こちらも】NASA、グーグルの人工知能でケプラー90恒星にある8番目の未知の惑星発見
■年々進化するAI技術
人工知能(AI)のなかでも近年注目を浴びるのが、機械学習だ。カナダ・トロント大学のジェフリー・ヒントン教授が先駆的な研究を行ったディープラーニングもまた、機械学習の一種である。データを学習することで、高速かつ正確にパターンの認識や未来の動向が予測される。
とくに画像認識分野での機械学習の発展は目覚ましい。写真での顔認識や、動画に映る人が次にどんな動作に移るかの予測も、機械学習が行える。
宇宙開発や天文学においても、ハッブル宇宙望遠鏡等により多くのデータが収集されている。長い分析時間を縮めるために、機械学習が必要とされる。
■4日で小惑星が地球に衝突するかを判定可能
NASAはいくつかの問題をAIに解かせようとしている。そのひとつが、太陽系外惑星で生命が生存可能かどうかだ。太陽系惑星の場合、惑星探査機などで大気の組成の調査が可能だ。ところが地球から遠く離れた太陽系外惑星の場合、望遠鏡によるデータが調査の拠り所となる。大気中の分子が原因で発生する光のスペクトルを機械学習で分析することで、惑星大気の組成が分析可能になる。
機械学習で有望な手法として「ベイジアンニューラルネットワーク」が、英オックスフォード大学や米セントラルフロリダ大学の研究者らによって研究されている。2008年に発見された太陽系外惑星「WASP-12b」の大気の組成を分析するために、ハッブル宇宙望遠鏡で収集したデータをもとに機械学習が用いられた。ランダムフォレスト法と呼ばれる従来手法よりも正確に大気が分析された。
ベイジアンニューラルネットワークは、予測がどの程度確からしいのかを算出できる点で、強みをもつという。データ量が不十分な場合も多々存在するためだ。
このほかにも、小惑星の形や大きさ、回転速度の推定にも機械学習が用いられる。地球への衝突の脅威をもつ小惑星を検出することは重要な問題だ。熟練した科学者が1カ月から3カ月かけて確認できることが、機械学習なら4日で推定可能だという。
では宇宙科学の仕事はAIにとって完全に代替されるのか。今のところその心配はなさそうだという。
「AIなどの手法は我々から困難な作業の多くを解放してくれるが、完全にとって代わることはないだろう。我々によるチェックがなお必要だ」と、NASAゴダード宇宙センターのジャーダ・アーニー氏は答えている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)
スポンサードリンク