ガラスを軽さ10分の1にしながら硬度3倍にできる薄膜材料を開発 中部大

2019年9月12日 18:40

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開発する窓材の断面構造の想像図(写真:中部大学の発表資料より)

開発する窓材の断面構造の想像図(写真:中部大学の発表資料より)[写真拡大]

 中部大学は10日、ガラスを10分の1程度まで軽くできる新しい薄膜材料を開発したと発表した。ガラス基板に成膜することで、硬さは約3倍に向上するという。

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■軽量化で省エネにも効果

 自動車の窓にはほとんど無機ガラスが使用されている。一般的な自動車の場合、窓の重量は車体の約5%にも及ぶ。窓の重さを10分の1程度に抑えることができれば、車両の軽量化に大きく寄与できるため、省エネルギー対策としても期待できるという。

 その一方で、ガラスの硬度も重要な要因のひとつだ。ガラス表面の硬さを向上させるために、表面に硬い酸化セリウム(CeO2)を成膜する研究が続けられている。だが酸化セリウムは脆いために、変形によってクラックが多発する問題を抱えている。

■フレキシブル性に富む成膜材料

 中部大学の研究グループは、フッ素樹脂の需要のうち約60%を占めるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を、酸化セリウムに5%から15%混合し、薄膜素材「CeO2-PTFE」と成膜技術の開発に成功した。PTFEを混合することで、紫外線を80%以上遮蔽し、ガラスの3倍の硬さに保てる。またCeO2-PTFE膜はフレキシブル性(柔軟性)に富むため、曲げによるクラック発生を大幅に改善できるという。

 研究グループの実験によると、水滴の接触角は90度以上で、成膜後の撥水性が高いことが判明した。また可視光の透過率が80%以上、有害な紫外線の遮蔽率は80%以上など、自動車の窓に求められる仕様よりも高い結果が得られた。

 CeO2-PTFEをプラスチックシートに成膜する実験も行われた。ボリカーボネート(PC)に成膜したところ、約10倍の硬度になることが判明した。プラスチック基板に表面硬化フィルム等を用いることで、無機ガラスと同等の表面の硬さが達成できると予想される。

 研究グループによると、開発した成膜は自動車だけでなくビルの窓にも応用可能だ。今後、実用化に向けた研究を行う予定で、プラスチックや建材、自動車メーカーと協力し、軽量で安価な窓材の量産に向けた技術を開発するという。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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