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楽天の「通信キャリアへのランクアップ」は成就するか? (3-2) 「仮想化クラウドネットワーク」は機能するか?
楽天が、全国に4Gネットワークを張り巡らせるために計画している25年までの設備投資最大6000億円に対して、携帯というビジネスモデルの常識では「過少だ」と指摘する声が多い。一事業者が負担する金額としては巨額と言えるが、通信キャリアという事業に的を絞って考えると、例えばドコモにとっては1年分という程度の金額だというのである。
【前回は】楽天の「通信キャリアへのランクアップ」は成就するか? (3-1) 通信料金が格安スマホと同等になる?
楽天は、通信の常識を覆す「完全に仮想化したクラウドネットワーク」を構築している。これまで使われてきたハードとしての通信機器を、全く使わないネットワークである。このチャレンジが成功すると、既存の通信機メーカーの存在理由がなくなるとも言われている。
これまでは、通信速度を向上させたり、容量を増大させようとする場合には、巨額な設備投資を行ってハードウエアを更新することが常識だった。楽天の計画は、ソフトウエアの更新でシステムのランクアップを可能にすることだ。
現在、世界の通信会社は5Gへの移行に向けて、膨大な設備投資を行っている。生き残りへ欠かせない投資であるというのが常識だが、負担は重い。楽天は4Gよりも100倍速く、1000倍の大容量になる5Gのサービスを、4Gから5Gのソフトに更新するだけで移行できるとしている。
通信キャリアにとって、通信機器メーカーにオーダーメイドで発注している専用の通信機器が不要になるということは、夢のような話だ。楽天のチャレンジが成功すると、世界中の通信が一夜にして仮想化へ向かい、ソフトウエアに対応できない通信機器メーカーは一気に衰退する可能性があるとさえ言われている。
楽天はこのネットワークの構築・運用システムをパッケージにして、世界中に販売するプランを温めているようだ。自社用に開発したシステムが商品になる、というビジネスストーリーが進行中だ。
同時に基地局の確保もポイントとなる。ビルの屋上などに設置されて、スマホと電波のやり取りをする基地局の設置数が多ければ多いほど、回線の接続に支障がなくなり、通信速度が向上する。
今まで継続的に基地局への投資を続けてきたキャリア3社と、今回基地局への投資を始める楽天との間には計り知れないハンディがある。基地局の設置は1基ごとに個別の交渉や工事が付きまとい、一朝一夕には実現しない。
大都市圏の東京23区と大阪市、名古屋市に関しては自前の基地局を設置し、地方に関しては「ローミング」という手法によって当面KDDIの基地局に相乗りすることで事態を乗り切る計画だが、自前の基地局設置には悪戦苦闘しているようだ。
総務省が17年11月に携帯キャリアに新たな周波数帯の割り当て方針を打ち出した際の基準が、人口カバー率を「8年後に80%」か「5年後に50%」することだ。面積の基準であれば厳しい条件も、人口カバー率を確保するため人口集中地区は、自社での投資を進めるという傾斜投資で達成しようとしている。(3-3)に続く。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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