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星が生成される場所はごくわずかしか存在しない 国立天文台が明らかに
FUGINプロジェクトで得られたガス雲の分布。低密度ガス雲(左)に比べて、高密度ガス雲(右)はごく一部でのみ検出されていない。(c) 国立天文台[写真拡大]
国立天文台は7月24日、天の川銀河では、星の生産現場となる高密度ガス雲が、低密度ガス雲の量に対してごく少量しか存在しないとした研究成果を発表した。
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■分子雲と星の誕生
星は、宇宙空間で生まれるが、真空の宇宙空間からどのようにして星が誕生するのだろうか?
何もないように見える宇宙空間だが、まったくの無の世界ではない。地球上の大気などとは比べ物にならないが、そこには水素を主成分としたガス(気体)が広がっている。
星間ガスは分子の状態にある方が安定的だが、ガスが希薄な状態では星からの光で原子に分解してしまう。原子の密度が、1立方センチメートルあたり1000個程度になると、星の光がガスの内部まで届かないため、ガスが分子として存在できる。これが「分子雲」である。これくらいの密度の分子雲を「低密度ガス」という。
星間ガスは、自らの重力によって収縮し、1立方センチメートルあたり1万個や10万個と密度が高くなり、「高密度ガス」を形成していく。そしてこの高密度ガスの中心部で原始星が生まれ、ついには核融合反応が始まり恒星の誕生となる。
■今回の研究
過去の分子雲の観測結果によると、分子雲のガスの総量に対して、そこから誕生する星の数が少なすぎることが分かってきた。単純なモデルのシミュレーションによると、その1000倍は生まれているはずなのである。この要因としては2つの可能性がある。
1.低密度ガスから高密度ガスが形成される割合が低い。
2.高密度ガスから星が生まれる確率が低い。
この要因を明らかにするには、分子雲の中にある高密度ガスの割合を計測することが必要だが、それには困難が伴う。なぜなら低密度ガスと高密度ガスの広がりには大きな隔たりがあるからだ。
低密度ガスは銀河の中にあまねく広がっているが、一方の高密度ガスはその100分の1から1000分の1の大きさしか持たない。この観測には低密度ガス全体を網羅する広い視野と、高密度ガスを特定する高分解能を両立させる必要がある。
この課題を解決したのが、国立天文台野辺山45m電波望遠鏡に新設されたFOREST受信器、そしてそれを用いた天の川の大規模分子雲サーベイプロジェクト「FUGIN」である。
今回の研究の結果、低密度ガス雲に比べ高密度ガス雲は、質量比3%と非常に少ない割合でしか存在しないことを初めて明らかにした。このことは低密度ガスから高密度ガスが形成される割合が低く、その結果分子雲からつくられる星の数が少ないということを意味している。
この結果は、日本の天文学論文誌「Publications of the Astronomical Society of Japan」に掲載された。(記事:創造情報研究所・記事一覧を見る)
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