地銀の合従連衡の今後を展望する

2019年7月24日 12:52

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 日本経済新聞・電子版の「強者連合の衝撃、合従連衡を引き起こすか」(上・中・下)を興味深く読んだ。「何故か」は横浜銀行と千葉銀行という関東圏のライバル銀行、言葉を選ばずに言えば「犬猿の仲」だった銀行の提携について伝える記事だからである。

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 周知の通り日銀は地銀の状況を「2028年度には約6割の地銀が(このままでは)最終赤字を余儀なくされる」としている。そうした中での強い地銀同士の提携である。関東圏の銀行の一層の再編を促すことが、容易に想像できる。

 既に足利銀行(栃木県)と常陽銀行(茨城県)は統合し「めぶきフィナンシャルグループ」に、横浜銀行と東日本銀行(東京都)は持ち株会社「コンコルディアフィナンシャルグループ」を設立している。武蔵野銀行(埼玉県)と千葉銀行は資本・業務提携を結んでいる。そしてさらに、千葉銀行と横浜銀行が業務提携するというのだ。

 残る関東圏の銀行中で最大の総資産を有する群馬銀行の動向が焦点となろう。総資産規模では小粒だが、東和銀行(群馬県)や栃木銀行・筑波銀行(茨城県)・千葉興業銀行・京葉銀行(千葉県)を巻き込んだ再編が進められると考えるのが常套であろう。

 それにしても「敬遠の仲」同士の提携の効果は具体的に、どんな点に求められるのか。千葉銀行は06年に信託業務に参入している。「相続関連の収益を直近の3年間で3倍近くに伸ばしている」という。横浜銀行は資産形成の提案力に評価が高い。それを示すように6月には投資信託の販売が評価され、R&I(格付投資情報センター)から「A+」の格付を得ている。

 その相乗効果だけでも注目に値するが、銀行業界のアナリストは「提携の目的は法人部門ではM&Aや事業継承、ビジネスマッチング、シンジケートローンの組成、顧客の海外進出支援。個人部門では相続関連業務やマーケティング力強化が掲げられている」と指摘する。

 最近、こんな話が伝えられた。今年4月に同じ大阪市を拠点とする関西みらい銀行と近畿大阪銀行が合併し、持ち株会社:関西みらいフィナンシャルグループが設立された。そして早々にこんな施策に出た。詳細は省くが「年1回の経営指導・助言を前提に融資先企業の収益動向(売上高、営業利益率等)に応じ、貸出金利の見直し(引き下げ)を行う」というのである。

 果たして、提携した横浜銀行・千葉銀行からはどんな具体的な提携施策が飛び出してくるのだろうか。合併・統合・(資本)業務提携は今後も加速しよう。地銀の生き残り・勝ち残り策と同時に、利用者の便宜性向上もお忘れなきようにお願いしておきたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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