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異例のスタートだったLIXILのガバナンス問題、会社提案退けられる異例の形で終結
LIXILグループの株主総会が25日開催され、株主提案の8名全員が選任されたのに対して、会社提案からは6名の選任に止まり、株主提案による取締役が過半数を占めることが確定した(当初、株主提案の取締役候補に挙げられたのち、会社提案候補にも重複していた鬼丸かおる氏と鈴木輝夫氏は株主提案候補として算入している)。
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この結果を受けて開催された取締役会で、株主提案を率いた瀬戸欣哉氏が最高経営責任者(CEO)へ復帰し、異例ずくめのガバナンス騒動にケリを付けた。
18年10月、当時CEOだった瀬戸氏が「指名委員会の総意だから」として退任を迫る潮田洋一郎氏に、押し切られる形でCEOを退いたのが発端だった。瀬戸氏に詰め腹を切らせた潮田氏が後任のCEOについたことに、「ガバナンス(企業統治)上の問題がある」として英機関投資家らが声を上げた。
機関投資家は適切なガバナンスの実現を目指して、主な議題を「潮田氏らの解任」とする臨時株主総会の開催を求め、会社側も5月に開催すること発表していた。
その後、会社側から臨時株主総会に関する具体的な情報が公表されないことに業を煮やした機関投資家側が、東京地方裁判所に自ら臨時株主総会の招集と、運営の許可を求める申し立てをする「おまけ」までついた。追い詰められた潮田氏は、5月18日の記者会見で、19年3月期決算が大幅な赤字となり、その責任は前CEOの瀬戸氏にあるが、瀬戸氏を任命した自分の任命責任を取るとして、同月20日に取締役を辞任し定時株主総会後にはCEOも退任すると発表した。
潮田氏が臨時株主総会を忌避し、定時株主総会を決戦の場に選択したように見えた。自らの解任をテーマにする臨時株主総会よりも、自らが表面に出ない定時株主総会の方が有利と読んだ”奇策”と受け止められた。
潮田氏自身の保有株式は3%程度と見られ実質的な発言力は大きくないが、創業家の威光を活用する手腕はあるようで、いつの間にかオーナー然とした振る舞いが身に付いていた。定時株主総会で会社が提案した取締役を操り、「院政を敷くつもりなのではないか?」との警戒感を見せる向きもあった。
CEOを辞めさせた人物がCEOにつき、株主側から追及されると、自分が辞めさせた前CEOに責任を負わせ、会社提案が敗れ去る一連の流れは、日本の大企業では前代未聞の異例な出来事だったが、一夜明けたのちは前例になった。
アクティビスト(物言う株主)の身勝手な要求ではなく、会社の統治システムを正常化するために株主総会が機能した例は、日本ではほとんどなかっただろう。株主が持ち分に応じて適切に意思表示を行い、会社の提案を覆した今回の事例は今後のスタンダード(基準)として、株主総会の意味合いを一変させた。今後は、ガバナンスを飾り物にしないで、実際に機能させようと経営者に意識付けるキッカケの株主総会だったと言える。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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