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小林製薬の「あったらいいな」商法が見せつける力!
小林製薬は、「グループ従業員の健康増進を目的として、2019年4月から35歳以上の従業員とその家族(被扶養者)の定期健康診断において、人間ドック(日帰り)の費用を全部会社で負担することを決定」したと発表した。
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3月末時点で35歳を迎えた従業員とその家族が対象で、19年度の対象者は3090名だという。さすがは21期連続増益、かつ過去最高益更新企業と感心した。と同時に頭に浮かんだのは同社のブランドスローガンである「あったらいいなをカタチにする」だった。まさか会社の福利厚生施策まで「あったらいいな」が生きているわけではないだろうな、と思った次第だ。
発表に接する数日前、こんな事実を知った。同社の人気商品の一つに「熱さまシート(前頭部の額などに張る冷却ジェルシート)」がある。発熱時や暑さで寝苦しい夜などに重宝な代物である。発売は1994年というから、四半世紀目を迎えるヒット商品だ。
そんな商品の生産能力を(愛媛県新居浜工場と中国案薇省工場で)倍増するというのだ。「温暖化が進む中で夏場の気温が上昇しているため、今後も需要が高まると捉えている。18年の世界販売は約4億枚となり、需要に追い付かなくなった」と小林製薬側では説明している。投資総額100億円。
同社を知るアナリストは「例えば中国の需要も大きい。だが流通コストなどを加えると中国での販売価格は日本の2倍。一時のブームは収まったというが、中国人を中心に訪日観光客が熱さまシートは依然爆買いが続いている。それほど世界的な人気商品ということだ」とする。
この熱さまシートも、前記のブランドスローガンから世に送り出されたもの。小林製薬では毎期の売上高の1割を新商品で、という目標を掲げている。前12月期でも「総売上高の8%強が、新商品」で実現している。
ブランドスローガンを支えているのが「全社員提案制度」。「こんな商品があったらいいのではないだろうか」という提案が、年間約5万件に上るという。吟味され「ゴーサイン」が出たものは、提案者を中心に商品化が図られる。先のアナリストは「社員の提案の背中を強く押しているのは、(販売初年度の)売上高の所定率が提案者に還元されるゆえ、と認識している」とした。
ちなみに同社の代表的商品として、水洗トイレ用洗浄・消臭・芳香剤「ブルーレットおくだけ」シリーズがある。第1弾の発売は1969年。のちに4代目社長となる小林一雅氏(現、会長)がアメリカ視察の折に「トイレ洗浄剤」を目にしたのが、商品開発の入り口とされている。
つくづく思う。経営者・従業員が商品開発に「前向き」になる体制が整っている企業は「強い」と。
強い企業は、株主にも優しい。今年に入り「自社株買い」を明らかにした。また17年12月期の初値で買い本稿作成時点まで保有していると、当初の投下資金は「1対2分割」効果で「86%余」増えている。強さの背景が整備されている企業の中長期投資は、株式での資産づくりに有効といえる。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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