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エナリスの上場廃止が持つ意義
3月13日、東証マザーズ市場から1社がその姿を消した。エナリス。2003年の設立。「電力自由化の申し子」と称され13年10月9日、鳴り物入りで上場した。その期待の大きさは公開公募価格280円に対し初値717円に、容易に見て取れる。
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同社は発電事業者とユーザーを仲介する電力の卸取引が主業だったが、単なる卸取引業者ではなかった。茨城県にあった休眠中のディーゼル発電所をバイオ燃料向けに改造して保有するなど、発電所を持つ卸業者でもあった。
何事にも「たら、れば」はつきものだが、エナリスは上場1年余り後の14年末に後戻りが出来ない事由に遭遇した。実在しない子会社による不適切会計問題の発覚である。創業者(池田元英社長)一族は、総退陣を余儀なくされた。こうした経緯がなかったら、KDDIが16年8月に資本参加をしえたかどうかも定かではない。
KDDIは16年4月の「電力総合自由化」に合わせ、「auでんき」をスタートさせた。電力事業への参入である。が、電力事業を「本物」にするためには「独立した発電所の所有」、「発電事業者とユーザーを結びつける枠組み」が不可欠だった。auでんきはスタート時から後者(=電力の需給管理)をエナリスに委託、またいくつかの地域でJパワーから電力の供給を受けていた。
そんな中で記したエナリスの不正会計問題は発覚した。そして昨年8月、KDDIとJパワーによるエナリス株の公開買い付けが宣言され、12月19日、公開買い付けの完了が発表された。この時点でKDDIの持ち株比率はかねて取得していた分と合わせ50・5%に、Jパワーが40・9%となった。両社の持ち株比率が3分の2を超えたことでスクィーズアウト(少数株主から強制的に株式を買い取る)が実施され、最終的に両社の持ち株比率は59%・41%。エナリスはKDDIの完全子会社となり、株式市場から姿を消したのである。
だがこの一事は、欧米に比べ小規模にとどまっている日本の電力卸市場の拡大にエポックメイキングな出来事となる可能性を孕んでいる。
電力卸市場の拡大には発電事業者による電力の市場供給が大前提になる。Jパワーは発電卸業者と同時に全国に90カ所以上の発電所を有する発電業者でもあり、発電コスト(価格競争力)では定評がある。KDDIは関西電力ともタッグを組んでいるが、Jパワーとの協業は関西電力からの買電コストにも優位に働こう。退場・エナリスを介して、日本の「電力完全自由化」に弾みがついたことだけは間違いないといえよう。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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