NYの視点:米ISM非農業部門雇用者数が予想上回り景気への不安が後退、FRB動かずドルの上昇は限定的か

2019年3月6日 07:35

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記事提供元:フィスコ


*07:35JST NYの視点:米ISM非農業部門雇用者数が予想上回り景気への不安が後退、FRB動かずドルの上昇は限定的か
米供給管理協会(ISM)が発表した米国の2月ISM非製造業景況指数は59.7と、1月56.7から予想以上に改善し、11月来の高水準となった。米国経済の7割を消費が占めるため、結果は米国経済が本年中にも景気後退に陥るとの懸念を緩和した。12月の小売売上高が予想外の減少に落ち込み下落幅も9年ぶり最大となったため、景気減速懸念が強まっていた。

米国政府機関閉鎖が解除されたほか、米中貿易協議にも進展が見られたことが指標を押し上げたと見られる。活動の拡大と縮小の境目となる50を109カ月連続で上回った。重要な項目である新規受注は65.2と、1月57.7、6カ月平均61.9をそれぞれ上回った。輸出は1月50.5から回復も、6カ月平均57.4を依然下回ったまま。輸入は50を割り込み貿易には依然混乱が見られる。世論調査の対象企業は関税への不透明性、雇用不足に懸念を表明したものの、全般的なビジネス状況には楽観的な見方を維持した。

一方で、8日に米労働省が発表する2月雇用統計を控えて、注目のサービス業の雇用は55.2。60カ月連続で50を上回る拡大を示した。しかし、1月57.8、6カ月平均57.7をそれぞれ下回り、雇用ペースはピークを付けた可能性が考えられる。同時に、企業は資格を満たした従業員を見つけるのが「非常に困難」とコメント。労働市場が非常に強く、賃金が今後さらに上昇する可能性も示唆された。

2月雇用統計では、失業率が3.8%まで低下し、非農業部門雇用者数も前月比+18.1万人と、1月の+30.4万人から伸びが縮小すると予想されている。ただ、賃金は前年比で+3.3%と1月の+3.2%から伸びが拡大すると期待されている。

■米国の2月ISM非製造業景況指数
総合ビジネス景況指数:59.7(1月56.7、6カ月平均59.3)
景況指数:64.7(1月59.7、6カ月平均62.8)
仕入れ価格:54.4(1月59.4、6カ月平均60.1)
新規受注:65.2(1月57.7、6カ月平均61.9)
受注残:55.5(1月52.5、6カ月平均54.3)
入荷水準:53.5(1月51.5、6カ月平均54.6)
在庫増減:51.0(1月49.0、6カ月平均53.3)
雇用:55.2(1月57.8、6カ月平均57.7)
輸出:55.0(1月50.5、6カ月平均57.4)
輸入:48.5(1月52.0、6カ月平均52.4)

米商務省が発表した12月新築住宅販売件数も前月比+3.7%の62.1万戸と、予想60.0万戸を上回り、5月以降半年ぶりの高水準となった。新築住宅販売が住宅市場に占める割合は小さいものの、契約時点での統計となるため、住宅市場の先行指標として度々注目されるが、今後の住宅市場が改善する可能性も期待される。ただ、11月分が大幅に下方修正されており、10−12月期国内総生産(GDP)への影響は少ないと見られる。

現状で、米連邦公開市場委員会(FOMC)が今年前半に利上げに踏み切る可能性は非常に少なく、ドルの上昇も限定的となった。《CS》

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