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増える高齢者と空きベッド 需要と供給のミスマッチ
待機高齢者が増加する一方、全国550施設のうちベッドに空きがあると回答した施設は143施設、全体の26%にも上った。介護業者や自治体は早急にこのミスマッチを解消するための効果的な対策を講じるべきだろう。[写真拡大]
国内の高齢者の増加に伴って、介護施設の数も増えている。特に全国に約9,500ヶ所ある特別養護老人ホームは人気が高く、入居資格が「要介護3」以上と見直された後でさえ施設に入れなかった待機高齢者は約36.6万人と膨大な数に上る。こう見ると需要に対して供給が追い付いていないように思えるのだが、実はそうでない実態が明らかとなった。
特別養護老人ホームは利用料が安く人気が高いため需要があまりに大きいと考えられがちだが、そうとは言い切れない。もちろん高齢化による需要の高まりは言うまでもないが、みずほ情報総合研究所が2016年11月に行った調査では全国550施設のうちベッドに空きがあると回答した施設は143施設、全体の26%にも上った。特に開所後間もない施設に関しては、ベッドに空きがあると回答した施設の割合が多くなり、新規の顧客獲得がままならない状況が浮き彫りになった。特別養護老人ホームに入りたいと願いながらそれがかなわない待機高齢者がいる一方で、空きベッドを抱えながら高齢者が入所しない特別養護老人ホームという、需要と供給のミスマッチが起こっているのだ。
ではなぜベッドはあるのに高齢者を入所させられないのだろうか。もっとも大きな課題は人材不足だ。多くの介護施設では介護職員の不足が深刻化している。介護職員の待遇改善を求める声は以前から強いが、遅々として進んでいないのが現状だ。介護職員の離職率は相変わらず高く、多くの施設では入所者を増やしたいものの現状の職員数を考慮するとベッドを空けておくほかないことになる。さらに都市部ではグループホーム、ケアハウス、サービス付き高齢者向け住宅など選択肢が広がっていることも特別養護老人ホームの空きベッドが増える要因だ。地方では多くの高齢者が特別養護老人ホームに入るために待機している一方で、都市部では別の介護施設の利用が増えているというミスマッチも起きている。
この現状が続いていけば、高齢化は進んでいるのに特別養護老人ホームが倒産するという信じられない現象が起こる恐れもある。介護業者や自治体は早急にこのミスマッチを解消するための効果的な対策を講じるべきだろう。(編集担当:久保田雄城)
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