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地に落ちたスバルの組織運用(1) 不正を続ける無頓着 深刻なリコール「直せるのか?」
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11月14日、スバルは国土交通省から勧告を受けることとなった。これは、一連の品質不正が続いたことで制度化された模様で、スバルが不名誉な「適合第1号」とのことだ。
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スバルは2018年9月28日、完成車検査でデータを改ざんしていたなどの問題の最終報告を国土交通省に提出したとしていた。その日、スバル中村知美社長は「大変心配をかけ本当に反省している」と陳謝し、2017年末には正常に戻ったとの認識でいたが、2018年10月、再び不正が発覚した。これほど問題視されるようになってから、不正が止まらなかった組織運用はいかがなものか。「ガバナンスの問題」との認識では済まされない、スバルの企業としての組織が疑われている。
■深刻なリコール「直せるのか?」
このデータ改ざんなどの問題を受けてのリコール(回収・無償修理)は4回にわたり、53万台に上った。しかし、完成検査データ改ざんで、どこをどのように回収すると言うのか? リコールと整備作業との整合性を検証しなくて良いのか? さらに2018年11月1日、エンジンの「バルブスプリングが折れる恐れ」があるため、大規模な(約69万台といわれる)リコールを国土交通省に届け出た。このバルブスプリングは、エンジンの吸・排気バルブを抑える(閉める)役割のスプリングで、エンジンの回転(最高6000回転程度まで)に合わせて激しく動く役回りだ。そのスプリングに想定以上の負荷がかかり、材料の中の微小異物の影響で破損する可能性があると言うのだ。
これに似た不具合はないわけではなく、交換することで対処が可能だ。しかし、スバル自慢の「ボクサー(水平対向)エンジン」のため、シリンダーヘッドの中にあるこのバルブスプリングを交換するには、エンジンをいったん降ろさなければならない問題がある。つまり、エンジンルームでの作業間隔が取れないので、エンジンをボディーからいったん離して、エンジンヘッドカバーを外す作業から始める必要がある。そのため、世界の全てのディーラーで対応可能かどうか危ぶまれている。
エンジン載せ替えを行うことは、現代ではチューナー以外ではなかなか行われない作業になってしまっている。そのため、定期点検作業以外あまり行った経験のないディーラー整備士には、問題を起こさずに行えるのか確信できない状況なのだ。作業時間もかなりかかるもので、慣れないため時間がかかると共に、不手際が心配される。
■結果的に強度不足であったリコール内容
“設計が不適切なため、バルブスプリングの設計条件よりも過大な荷重及び一般的な製造ばらつきによる当該スプリング材料中の微小異物によって、当該スプリングが折損することがある”としているので、『多分、「材料の中に通常含まれる微小異物の影響を過小評価して強度計算した」のであろう』。部品を作り直す際に強度を上げ、加工精度を上げ、材料生成過程で不純物混入を避けることの3つを同時に実行できればベストである。これでは必要な性能に対して「粗悪品」と言われても仕方がない。
バルブスプリングは柔らかいに越したことはないのであろうが、バルブサージングを起こさない範囲で設計されなければならない。そのため強度ぎりぎりを狙ったのであろう。「製造のばらつき」は、一般公差内であったと言える「材料中の微小異物」を過小評価したので、交換部品のばらつきを適正に評価出来なければ、再度問題が出る可能性もある。思い切って余裕を見ることが出来るのであろうか?
次は、「品質保証体制」を前提とした組織のあり方を考えてみよう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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