自転車チェーン店あさひのEC戦略

2018年11月6日 16:39

印刷

 あさひは今中間期末時点で、自転車専門店を466店舗(FC含む)、全国で展開している。「自転車人気」が高まる中、好付加価値のスポーツサイクルや電動付自転車の好調から着実な収益の推移を見せている。が、意外と知られていないのが、同社のネット通販。今中間期決算短信にも「ネットで注文、店頭で受け取りの通販も好調で」と記されている。

【こちらも】「終活」に便利な鎌倉新書のEC事業

あさひは、2007年9月にヤフーショッピングモールへ、そして09年3月に楽天市場に出店する形でネット通販を開始した。そして10年代に入り、強化を公にした。強化策は以下に集約される。

(1) 自社通販サイト(ネットワーキング店)のリニューアルと同時に、スマホ専用サイトの立ち上げ。
(2) 通販サイトで取り扱う自転車台数を5000台に拡充。
(3) PB商品拡大(現在6割弱)とEC対策として、約10億円を投じ東日本物流センターの増床。
(4) バックアップ体制としてイメージキャラクターの登用、ネット広告も視野に入れた宣伝活動の強化。

 ネット通販で注文した商品は、近くの店頭受け取り(1週間から10日内)が原則。受け取りに来店した顧客に対してはスタッフがあらためて使用上の詳細な注意点が説明されるのと合わせ、防犯登録・保険手続きなどのアフターサービスがなされる。EC路線の強化に関して下田佳史社長はこう話している。

「全国チェーンの当社だからできるサービス。今後も02Oのニーズは高まっていくと捉えている。これからも顧客目線のサービスを提供し続け、全体の底上げを図っていく」。言い換えれば「オムニチャネル戦略」の宣言ともいえる。

 では、あさひのECは順調に推移しているのか。収益動向は順調。17年2月期の「5.6%増収、4.7%営業増益」に続き前期も「5.0%の増収、1.2%の営業増益」。そして今期は「9.8%の増収、2.2%の営業増益、最高純益更新」計画でスタートした。

 ちなみに前期の総売上高は536億2000万円。対してEC売上高は前の期に比べ約44%増の37億円。総売上高比率約7%。実はあさひは至21年2月期の中計で「店頭売上高600億円、EC売上高30億円」を目標値として掲げていたが、前期実績で目標を上回った。同社に明るいアナリストはその背景を、「ECサイトでは店舗販売にはない専門性の高い自転車パーツやアクセサリーが扱われている。自転車の時代が指摘される中で、武器になっている」と説明する。

 今期は「オムニチャネル戦略の推進」が公に掲げられた。ECの一層の拡充が期待される。(記事:千葉明・記事一覧を見る

関連記事