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乱気流に巻き込まれた国産ジェット旅客機MRJ、どうやってこの窮地を脱出するのか?(後編)
MRJ(写真: 三菱航空機)[写真拡大]
今年、航空機業界には大きな合従連衡が起きている。大型機を供給して市場を2分してきたエアバス(欧州)が、ボンバルディアの小型飛行機「Cシリーズ」事業を買収し、同じくボーイング(アメリカ)もエンブラエルの小型機事業「Eジェット」を買収することで合意に至った。100~150席のCシリーズはエアバスA220と名称を変更した。80~150席のEジェットはボーイング主導の共同出資会社に移管される。MRJの「MRJ90」は88席、「MRJ70」は76席とどちらも、ライバルと目されていた事業だ。
【前編は】乱気流に巻き込まれた国産ジェット旅客機MRJ、どうやってこの窮地を脱出するのか?(前編)
今まで150席以下の小型機は、ボンバルディアとエンブラエルの2社で世界シェアの80%を占めていた。その時点でも手強い強敵だった。それが両社の競合部分がともにエアバスとボーイングに飲み込まれ、今後は2大巨人を相手にする立場に追い込まれた。おまけに、三菱航空機はボーイングと「カスタマーサポート契約」締結関係にある。MRJが就航した暁には世界の空港で現地サービスを遂行する上で、ボーイングの協力が欠かせない。もちろんボーイングがエンブラエルに肩入れして、契約関係を蔑ろにすることはないだろうが、何とも微妙な立場に置かれてしまった印象は否めない。
遅れていた開発を加速し、20年の東京オリンピックで日本の空に羽ばたくことを大前提に三菱航空機が取った奥の手は、豊富な経験を持つ外国人エキスパートの大量採用である。ところが航空機産業は、広がりも奥行きもない村のようなものだ。エキスパートを雇用するということは、競合先から招くより外に手はない。氏素性を辿れば、ボンバルディア出身者やエンブラエル出身者がうようよいるのは当然なのである。
ボンバルディアの提訴は「機密情報の不正流用」という曖昧な表現であるため今後の裁判の行方は見通せないが、確実なことは今三菱航空機が進めているMRJの型式証明の取得に少なからず影響を与えるであろうことだ。20年に納入するためには、19年末までに型式証明を取得する必要がある。訴訟がなくてもタイトな日程だったのだ。次々降りかかる厄災は三菱重工を鍛えるのか、さらに苦しめるのか。視界不良の領域がさらに拡大してきた。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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