ヤマハ、36年ぶりにアナログターンテーブル発売 レコードの勢い増すか

2018年9月27日 21:36

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ターンテーブル「GT-5000」(写真:ヤマハの発表資料より)

ターンテーブル「GT-5000」(写真:ヤマハの発表資料より)[写真拡大]

 ヤマハは26日、36年ぶりにベルトドライブ方式・マニュアル操作の高級アナログターンテーブル「GT-5000」を2019年4月より全国で発売すると発表した。

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 アナログ・レコードの勢いは本物か。日本レコード協会によれば、2017年度のアナログ・レコード生産枚数は100万枚を超え、総売り上げは20億円に手が届く勢いだ。この数値は、8年前の10倍だが、1976年の全盛期2億万枚には遠く及ばない。それでも、CD、DVD、ブルーレイとデジタルメディアの普及に加え、ネット配信が多くの支持を受ける中での、この躍進は凄い。

 アナログ・レコードとデジタルメディアの違いは、音の持つ振動(周波数領域)をどこまで忠実に録音するかにある。デジタルメディアは、人間が感知できる周波数の範囲を収録する一方、アナログ・レコードは全ての周波数を収録。その全周波数の音が、壁などで反射されると更に複雑な音となり伝わる。デジタルメディアでも、この複雑な音の再現のためにハイレゾと呼ばれる人が感知できない範囲の音も収録してきた。

 ところが、アナログ・レコードの良さを、温かく柔らかな質感の音源と推奨する人々がいる。人間が音を感じるのは、その音源に加えて、雰囲気もあろう。レコード針をアナログ・レコードに落とす時の緊張感は、深く記憶に残り、一見持ち運びに不便な大きさのアナログ・レコードのジャケット・アルバムは、若者たちのアートであった。

 この勢いを裏図けるように、ソニー・ミュージックエンタテインメントは1月、アナログ・レコード用のスタンパー製造設備を導入。29年ぶりにアナログ・レコードの一貫生産を開始し、大瀧詠一「夢で逢えたら」と、ビリー・ジョエル「ニューヨーク52番街」を3月に発売した。その背景には、米国のアナログ・レコードの売上が300億円規模まで伸びてきたこと、日本はその1/10程度だが、ジャケット・アルバムに愛着のある日本人には更に浸透すると目論む。

 今回の発表は、アナログ・レコードを再生するベルトドライブ方式の高級アナログターンテーブルだ。価格は60万円で、年間販売予定台数は350台だ。想定顧客は退職金を手にした富裕層であろうか。アナログ・レコードを聴くには、ターンテーブル以外に、アンプやスピーカーも必要だ。アンプC-5000は90万円、スピーカーNS-5000は150万円、計300万円を要する。

●アナログターンテーブル「GT-5000」の特長

 レコードを正確に確実に回転させることが、アナログ・レコードには求められる。大径円盤が回転することで発生する慣性モーメントを着実に受け止める巨大なキャビネットは、横幅546×奥行395×厚さ120ミリメートルの大きさで、14.3キログラムの重さだ。この剛性に加え、木質系素材特有の均質さと素早い音の減衰特性を活用。底面は防振・制振・除振に耐える特許機器の新型特製レッグを採用。

 正確な回転と共振分散は、クォーツ制御の24極2相ACシンクロナスモーターを採用。このベルトドライブ方式で、直径350ミリメートル・質量5.2キログラムのターンテーブルを駆動する。

 音の再生やアンプでの増幅など、全ての音声配線には、新世代の銅導体「PC-Triple C」を投入。全帯域にわたる情報量の豊かさと低域の力感の実現に拘った。

 音源のヤマハならではの伝統と経験が生み出した「GT-5000」。ベルトドライブ方式とした意図は、どこにあるのであろうか。この位高額な音響装置となると、個人の趣味を超える。音楽鑑賞以外の用途としては、DJプレイ用途が考えられるが、DJ用の主流はダイレクトドライブといわれる。市場の反響を見守りたい。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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