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土星探査機カッシーニ(2017年運用終了)の観測データから、土星の北極域の成層圏に六角形の渦の存在が明らかになった。この渦は土星上空から成層圏まで、およそ数百キロメートルにも及ぶ可能性がある。
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土星の北極付近には六角形模様の雲が持続的に存在している(写真1)。1980年代に行われたボイジャー計画の際に発見されたもので、一定の周期で回転するものの、他の雲のように経度が移動しない。今回新たに発見された渦はこれら六角形の雲の形と完全に一致しており、研究者らを驚かせている。
2004年に探査機カッシーニが土星に到着した時、土星の北半球は冬であった。気温はマイナス158度と赤外線分光計「CIRS」の耐冷温度を下回っていたため、探査は長期間の待機を余儀なくされた。土星では約30年が地球での1年にあたり、さらに冬である期間が長い。北半球が観測可能な季節を迎えたのはそれから5年後の2009年。温度の上昇を待ち、2014年から赤外線による成層圏の観測が開始された。そして2018年の今日、分析されたのは1979年のパイオニア11号、1980年代のボイジャーから繋がる30年越しのロマンだ。北極成層圏の渦が見やすくなるにつれて、これまでの予想よりもはるかに高い高度で同じ六角形が見られることに気付いたのだ。
「今回の発見は土星の二極に根本的な非対称性があることを意味しているのかもしれません」と話すのはレスター大学のレイ・フレッチャー博士だ。土星の南極にはこのような六角形は見られない。これはハッブル宇宙望遠鏡の観測からも明らかになっている。また南極にも渦は存在するが、今回発見された北極成層圏の渦は南極のそれと比べても未熟で温度が低く、両極は異なるダイナミクスが働いていることを示しているという。カッシーニが最後に観測をした時点で、北極の渦がまだ発達段階にありその後も発達を続けている、という可能性もあるが、カッシーニ無き今それを確認するすべはまだない。
フレッチャー博士らは六角形の構造についても研究を続けている。何故下層の雲と一致する形で、また数百キロメートルにも及ぶ高さで成層圏に存在するのか、それらを解明するにはまだまだ情報が不足している。この六角形の塔を見つけた時すでにカッシーニはそのミッションを終えていたが、次に繋がる大いなる知見をもたらしてくれたことに大いに感謝したい。次代の土星探査機が多くの成果をもたらしてくれるよう、見守っていてほしいものだ。(記事:秦・記事一覧を見る)
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