JT、「かぎたばこ」を新発売 受動喫煙への対策か

2018年9月4日 17:16

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使用方法(写真:JTの発表資料より)

使用方法(写真:JTの発表資料より)[写真拡大]

 JTは3日、火を使わず灰も煙も出ない「ゼロスタイル・スヌース・バニラ」「ゼロスタイル・スヌース・クールミント」を10月上旬より、全国の一部販売店にて新発売すると発表した。

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 昨今の禁煙風潮。受動喫煙の被害が叫ばれる一方、2年後に控えた東京オリンピック開催に向け、受動喫煙を防止する健康増進法が2020年4月1日から施行される。夏季オリンピックでの受動喫煙対策は2008年の北京オリンピックから強化された。学校、病院、飲食店、ホテルなどは室内禁煙で、喫煙ルームの設置も不可。その対策は、ロンドン、リオデジャネイロオリンピックへと引き継がれた。愛煙家であった私が言うのはおこまがしいのだが、東京オリンピックでは、条件付きで禁煙緩和がなされるようだ。

 1985年の専売制の廃止に伴いJTが発足。2017年度のJTの売上は、2兆1,397億円。煙草事業以外に加工食品業、医薬事業に進出するも、87.1%が本業の煙草の売上だ。加えて、欧米大手煙草メーカーの買収により、57.8%の売上を海外で稼ぐ。日本最大の煙草販売会社JTはグローバルに事業を展開するも、筆頭株主は日本政府である。東京オリンピックに向けた及び腰な受動喫煙対策は、政府による利益相反だと揶揄する人もいる。

 健康増進法での受動喫煙対策は、紙巻き煙草のみならず、最近多く普及した加熱式煙草も対象だ。他方、日本政府は健康増進の御旗の下、煙草を値上げし税収増を目論む。50年前の煙草の値段はピース10本が50円、現在は230円。約5倍に跳ね上がる一方、煙草のパッケージに煙草の害が記されるようになった。健康志向と値上げ。愛煙家も節煙や禁煙に向かっているのか、喫煙人口は減少傾向だという。

 今回の発表は、受動喫煙の可能性が薄い「かぎたばこ」のリニューアル販売だ。

●JT「かぎたばこ」の特長

 本来のかぎたばこは、火を着けずに、直接その香りを楽しむ煙草だ。最も古い形態の煙草で、マヤ文明が起源との説もある。煙草を鼻から吸い込み、鼻の粘膜からニコチンを摂取。火を使わないため、鉱山や工場など火気厳禁な場所で愛用されていたようだ。

 2013年8月JTは、かぎたばこ「ゼロスタイル・スヌース」を発表。唇の裏に挟むだけで、火を使わず、灰も煙も出ないという。麻薬などの摂取方法の一つである鼻からの吸引は、誤解や印象の悪さからの工夫であろう。

 新発売する2フレーバーは、程よい甘さが広がるバニラ風味のレギュラーと冷涼な爽快感が広がるメンソールだ。たばこ葉を包んだポーションと呼ばれる袋を口に含み、唇の裏に挟んで使用する。値段は20個入り/6.8グラムで、500円を予定。

 受動喫煙の可能性はほとんどないと思われ、東京オリンピックでの健康増進法への対策であろうか。ただし、愛煙家が直ぐに「かぎたばこ」へと移行するかは疑問だ。度重なる値上げにも関わらず喫煙を止めない愛煙家の嗜好には、味や香り以外にも、雰囲気への拘りもあるのであろう。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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