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節目を迎えた第一三共を株価がフォローする訳
製薬大手の第一三共、正確には同社の100%子会社である第一三共ヘルスケアの「ロキソニンSプレミアム(鎮痛剤)」は当方の常備薬。いわゆる薬剤師が常駐している医薬品店でしか購入できない「第1類医薬品」。同社のOTC医薬品に対する評価は高い。
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そんな第一三共がいま医療用医薬品部門で、節目を迎えている。前3月期、期初計画「2.6%の減収、12.4%の営業増益」を下方修正した。着地は「0.5%増収、14.2%営業減益」。そして今期も「5.2%減収(9,100億円)、2.3%営業増益(780億円)」と「厳しさ」を背負って走りはじめ第1四半期も営業利益で前年同期比25.7%減という状況。メディアは「中期計画の危機」とはやしたてる。2021年3月期までの中計で「年間配当70円以上、総還元性向:(配当金+自社株買い資金)÷当期利益:100%以上」を目標として掲げているが、会社側も「上半期内に見直し」を公にしている状況。
同社は16年度に医療用医薬品で武田薬品を抜き、待望の1位を手にしている。それが何故。これまでの牽引役だった「オルメサルタン(降圧剤)」が前期特許切れ(収入低下)になることのマイナス要因は分かっていたはず。最大の要因は米社と共同で取り組んでいた麻薬性鎮痛剤(CL-108)の開発中止とされる。米国での医療用鎮痛剤の乱用が社会的問題となったことが影響した(減損約278億円計上)。が、業界アナリストの見方は厳しい。
「自社開発の鎮痛剤/ミロガバリンも一部の臨床試験に失敗した。中計でも『制癌剤分野への注力』を大々的に謳っているが、順調に進んでも早くて発売は20年度。中計への貢献度は期待薄」。ちなみに件の抗がん剤とは第2臨床試験入りした「DS-8201」。ADC(抗体薬物複合体)を活用したものだ。
ただし伸長著しい製品があることも事実。「エドキサバン(抗凝固剤=血液をさらさらにする)」など代表格。前期も106.6%の売り上げ増:770億8900万円と、オルメサルタンの2分の1近い状態に達している。「加えて環境が悪化している、米国市場の疼痛事業やワクチン事業の見直しが行われることは必至。悪材料の整理が一気呵成に進む期待が高い」と兜町筋は強い株価の味方をする。直近では最も重症の「デュシェンヌ型」筋ジストロフィーの対応薬で、「第一三共が取り組んでいた医薬品が治験で安全性が確認された」といったニュースも飛び出した。本稿作成中の株価は、担当アナリストが同社の株価動向を予測するIFIS目標平均株価を上回っている。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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